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言葉のあや



 常識的に考えて、2人でドラゴンは倒せない。いやワイバーン程度なら俺一人でもどうにでもなる。けれど流石に竜相手で少々厳しいのも事実。アリアは才能は高いが経験不足、せめてエンチャンター位はパーティに欲しい。


 という訳で、ここ数日の訓練で流石に疲れ果てた彼女を宿において。冒険者ギルドに来た訳だが――



「という訳で、グレック。契約更新の話がなかったのでパーティからぬけて来た」


「お前なぁ…… 本当にお前なぁ!」



 ギルド員に声をかけるまでもなく、知った顔が近寄って来た。三角帽にローブ、きらりと光る片眼鏡。フォースエレメンタル、奇跡の御手。即ち黒衣の魔女である。



「俺がパーティを追い出される時、契約だから仕方がないって言ってたよなぁ!」


「うん、あくまでもあのパーティのリーダはアッシュ。我々は雇用契約上では彼に雇われている事になっていた」


「いやまぁ、そうだけどよ。そういえばお前はそういう奴だったわ」



 つまりこの魔女は喋る割に言葉足らずなのだ。それも意図的に! 冷静に考えればこいつは俺が追い出される時、それに対して賛成も反対もしていない。むしろそこでアッシュに見切りをつけ、契約更新をしなかったのだろう。


 まぁ更新時期を考えれば、俺とこいつは大体同じ時期になるから合点はいく。



「なぁ、ちゃんとアッシュに契約の更新を打ち切ると言ったのか?」



 後々面倒なトラブルになるのは困る。俺と同じく、みっちり契約書を突き合わせ。形の上だけでも円満な離脱になるようにするべきなのだ。



「大丈夫、ちゃんとサインを書いた書類を用意したし。しっかり口で契約更新を行わない限りパーティから離脱すると口にした上で、別れの挨拶を告げて来た」


「本当だな? その言葉に嘘は無いな?」


「黒猫と、精霊と、聖句に誓って」



 まぁ、この魔女がそう言うならまぁ嘘はない。ウィッチとして、エレメンタルユーザーとして、そしてプリーストとして。この3つのどれかに誓った状態で嘘をつくのはリスクが非常に高い。


 魔術とは精神と契約の世界で、それが口約束だとしても破れば相応のペナルティがあるからだ。最も嘘をつかずに、本当のことを口にしないのはコイツの得意技ではあるのだが。俺に迷惑をかける気なら、コイツは素直に叩き付けるタイプである。



「で、これからどうするんだ? まぁお前なら、どこに行っても引く手は多いだろう」


「どうするもこうするも。グレック、貴方のパーティに入りたい」


「はぁ!? 何でそうなる? いやそもそも俺はリーダーじゃないし!」



 そう、俺はあくまでもアリアから雇われただけで。リーダーなんてものはやっていない。アッシュの時からそのスタンスは変わらない。



「そもそも、お前を雇える金がねぇぞ?」


「大丈夫、欲しいのはお金じゃない」


「じゃあなんだ?」



 ふっと彼女の顔に笑みが浮かぶ、それでもモノクルは床に落ちない。わざわざ魔力を使ってこんなものを使う辺り、随分と趣味人で酔狂な女だが、俺はこいつのそんなところを嫌ってはいない。



「噂の婚約破棄令嬢と、ドラゴンを狩るんでしょ? その宝玉が欲しいの」



 どうせ2~3か月で狩っちゃうんでしょ? と魔女はニコニコと笑みを崩さぬままで俺を見つめる。はぁとため息をついて、脳内でメリットとデメリットを比べた結果――


 俺はアリアに彼女を紹介して決めて貰うことにした。無論洗いざらいコイツの良いところと、悪いところを話した上で雇うかどうかは彼女次第で。あくまでも俺は雇われのパーティメンバーなのだから、そこの部分を勘違いしちゃいけないのだ。

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