決着
いきなり上から降って来た3人を、アリア達は意外なほどあっさり。文句の一つもなく受け入れた。俺とアッシュとの言い合いを聞いていたのかいないのか。どちらにせよ奴が思ったよりも大人しいのが理由だろう。
実際無理に切り込んで場を乱すこともなく。アッシュ、レイナ、チャコの3人で連携し、ドラゴン相手に危なげなく攻撃を重ねている。
「アリア! そいつらは敵でもないが、味方でもない! トドメは譲るなよ!」
「成程、分かった!」
全く、アッシュは名乗るまでもないと思っているのか。それとも俺相手に挨拶が住んだから良いと思っているのか。まぁ半ば手伝う形になっているとはいえ、実際にはマナー違反の横殴りである。
そんな場所で名乗るのもどうかと面倒なことを考えているのだろうか?
「私達にとっては?」
「竜を倒すって意味じゃ味方だ、精々使い潰してやれ!」
「グレックは元パーティメンバーに対して辛辣だニャ~」
コーディ伯爵へ放った返事に、盗賊のチャコが苦笑しながらひらりと前足での一撃を避ける。彼女の武器は短弓で、竜相手に通用するものではないが、ひらひらと舞い、鬱陶しく目鼻を狙い攻撃を引きつけている。
あいつは物だけでなく、技を盗むのが上手い。気が付いたら俺のやり方を自分なりにアレンジして取り込んでいる。そういう意味では教え甲斐は無いタイプだ。
「まぁあの第三王子の思い通りにする気はないが、依頼通りにはさせて貰わねばな。ドラゴンの首は私達が貰う!」
エルフの剣士、レイナはエンチャントによって己の双剣に氷を纏わせ。そこそこの速度で振り回す。単純な速度で言えばそれこそアリアすら超えているのは、エルフとしての種族特性あっての事だ。
こちらは致命傷にはならないが、傷口を切りつけ凍らせることで徐々に体力を奪っていく。そういう意味で彼女の存在は決して小さくない。
「そうだ、グレック! 俺はお前に勝ちたいんだ! それも俺の下で情けなかったグレックじゃなくて。竜殺し、辺境の英雄、王国1の剣士と呼ばれたお前にだ!」
装備、技量、体格のバランスでこの場において一番優れているのは間違いなくアッシュであろう。フルプレートを着こなした上で、あそこまで動けるのは天が与えた才能だ。
その上で、単純な剣技も、そして力も、俺よりもずっと強い。
それこそもっと素直なら、もしくはより狡猾だったなら。俺なんて軽々と超えていけただろうにと笑う。
「ああ、アッシュ。勝てるぜ、てめぇは俺に」
俺は弓を引く、ただし番える矢は3本。大道芸に近い真似だが、伊達や酔狂で20年以上、ずっと、ずっと、ずっと。弓を使って来た訳ではない。
呼吸は自然のまま、体のリズムをドラゴンと合わせ三矢を同時に撃ち放つ。無銘の魔剣を削った矢じりとはいえ、引く力を3本に分ければ鱗に傷をつけることすら難しい。
そうならば、鱗が無い場所を狙えば良いのだ。全身にアリア達が刻んだ傷、動いた瞬間に生まれる鱗と鱗の隙間、そして瞳である。
無論ドラゴンとて知性があるモンスターである。此方が致命的な攻撃を持つと知っているのなら相応に警戒してくる。結果瞳への直撃は避けた。
けれどそこまで、横腹に切りつけられた傷と、肩に生まれた鱗の隙間に矢じりが突き立ちその動きが止まる。
「だがなぁ、俺達には勝てねぇ! いけっ、アリア!」
「無論!」
ほぼ同じ場所にいた、アリアとアッシュ。ドラゴンが見せた致命的な隙に対して、一歩踏み込めたアリア、そして動けなかったアッシュ。その差が何であったかは語るまでもないだろう。
その踏み込みに合わせて、魔女が強化の魔法をかける。金髪ショートの戦乙女が両手剣を握りしめ、全力の突きを放つ。型もなにもない、ただ己の体重と速度と筋力を掛け合わせるだけのシンプルな一撃。
だが、俺を信頼して放たれた一撃は、対応の出来なくなったドラゴンの胸にある逆鱗を、その下にある動脈ごと貫いた。
一瞬、戦場から音が消える。
誰もが己の吐息だけを聞き、次の瞬間。アリアの全身を血飛沫が汚し、どう! とドラゴンは横倒しになって、西の辺境を滅ぼしかけたドラゴンは倒れ――
そうして俺達は、冒険をやり切った。




