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出会い

とりあえず毎日1000文字位で更新し続けるのを目標にした習作



「貴公がが噂の冒険者グレックで相違ないか?」



 その少女は苛烈であった、間違いなく美少女の類。ただし、白いシャツと赤いジャケットとズボンを纏い。平民ではあり得ない金糸の髪をバッサリとショートに纏めた装いに。


 細腕に見合わぬ両手剣を腰に下げた姿は、おとぎ話に謳われる戦乙女の如くと表現してもまだ足りず。といった所か。



「おう、ただの冒険者に。噂の婚約破棄令嬢が何の用だ?」



 恐らく、いや間違いない。この出で立ちなら確実に。アリア=フォン=バーナード。ここ1カ月ほど、王都の吟遊詩人がこぞって歌う婚約破棄令嬢その人であろう。


 いや身なりをマネた騙りの可能性もゼロではないが。それにしては仕立てが良い。俺がたまに行く場末の女優や、冒険者が着込むそれとは生地の質が違う。


 下手をすれば最近まで同じパーティだった、女剣士のそれよりも値段が高いだろう。見ただけで複数の魔法強化が仕込まれているのが目に見える。


 こっそりと周りから様子をうかがう連中も、それには気づいているようで普段なら飛んで来るヤジの類も今はない。こちらに意識を向けつつも、関係ない素振りを装っている。


 まぁ向かいのテーブルに座る、自称情報屋の坊主なんかは腸詰めをフォークに刺したまま微動だにしていないし。隣の席に座る引退冒険者の爺さんもあからさまに聞き耳を立てている。


 皆この婚約破棄令嬢と、俺とのやり取りに興味津々なのだろう。



「妾の事を知っているなら話が早い。けれどこちらも暇ではないのだ。何の脳も無いただの冒険者に話しかける真似はせぬよ」


「そいつは褒めてるのか? それとも皮肉の類か?」



 つい最近パーティを追放された人間に告げるには、件の御令嬢から放たれたそれはややスパイスが効き過ぎている。それこそ今の俺にはマイルドな、チーズを入れた粥みたいな言葉の方がずっと嬉しい。



「皮肉といえば皮肉かの? ただしその対象は伝説の冒険者グレック=アーガインを追放した元のパーティに向けてはいるが」


「そりゃ、昔の話だ」



 実際にその頃と比べれば俺はだいぶなまくらだ。剣速は下がり、体力は目減りし、目も随分悪くなっている。そう考えれば確かにこれから上がり調子のあのパーティから見れば不要な人間なのだろう。


 3年前、仲間の引退が重なり。ぽつんと置いてきぼりになっていた俺を拾ってくれた。そんな彼らに多少の感謝はあったが、辞めさせられる時の口調から考えれば。単純に俺のネームバリューとコネだけが欲しかったのかもしれない。

 


「だとしても冒険者として15年、最前線で戦い抜いた貴公が欲しい」



 すっと御令嬢が芝居じみた動作で右手を差し出す。どこまでも真っ直ぐな瞳で、頭一つ背が低い。下手すれば俺の子供でもおかしくない小娘が。こうも堂々と言い放つのを見れば。成程これが貴種というものかと合点がいく。


 気が付けば俺は椅子から立ち上がり、その手を握っていた。



「ああ良いだろう。お前とパーティを組んでやる。その上で聞く、名前は?」



 少女はキョトンとした直後、ニヤリと牙を向く。可愛らしい八重歯は彼女の不敵な笑みを宝石の如く飾り、より鮮やかに金と赤を引き立てた。


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