罪人を突いてできた、人餅はいかが・・
地獄界を彷徨うK、かれが、次に辿り着いた処刑場は、罪人をキネで、餅のようについて撲殺するところであった。一度死んだ人間が地獄に行くのであるから、そこでの処刑という言い方は、どうなのか、拷問場と言い換えたほうがいいのか、人間界では死ぬ時に、処刑という形で死んでいないわけだから、改めて地獄でその罪の重さゆえ、苦しみを与える形で処刑される、という言い方もできるのではないか・・・?
あまり深く考えずに、いきたいと思います、悪しからず・・・
では、三島由紀夫の転生を自負する倉本保志の新作小説ここに投稿です。
地獄百景 第2話 人餅
大飢饉により、多くの人が飢えで苦しむ中、米を買い占め、利益を独占し、ぜいたくの限りをつくしたもの、(米問屋の主人ら)は、もちと一緒に杵で突かれ、潰される 人餅の刑に処す
(出来あがった餅は、突き込まれた罪人の血で染まり、悲しいほどに鮮やかな、赤いモチとなる
(やばい・・・見つかった、どうしよう・・・)
・・・・・・・・・
Kは、微かに震えながら、身をかがめて息を殺していた。
「なんだおまえは・・・?」
そう言って鬼は、首ったまを掴まえると、片腕で、ぐいっと引っ張りあげ、ごつごつした岩のような顔をKの鼻先近くにもっていった。
恐る恐る目を開ける・・・
飛び出さんばかりの大きな目玉が、ギロリと、Kを、睨んでいる。
「ひゃあ、」
Kは、再び目をつぶって肩をすくめた。
・・・・・・・・・・
Kを掴まえた鬼は、ふと、自分の鼻を、Kに近づけてクンクンと、臭いを嗅ぎ出した。
「お前・・?」
「死人じゃねえな・・・?」
「・・・・・・・」
「そいつは、本当か ・・・?」
傍にいた鬼が、覗き込んで、頭から、つま先まで、じっとKを眺めると、信じられぬというように、もうひとりの鬼に訊き返した。
「ああ、確かにそうだ、こいつはまだ、死んじゃあいねえ・・・」
「たまに、来るんだ、要するに、死にそこないってやつよ。」
「・・・・・・・・」
「だけど、ここは、三途の川、越えねえと来れねえはずだぜ・・・?」
「・・・・・・・・」
「ふん、仏さまの気まぐれだろう・・どうせ」
「あ、そういや、娑婆で、えらい坊さんになったって話を聞いたことがあるぜ」
「確かそいつも、生きたまま地獄に来たんだとか・・・?」
「ふうん、そんな、風には見えねえけどな、・・・こいつは・・」
・・・・・・・・・
まあ、やくざ紛いの人生ですけど・・・)
Kは、鬼にまで、悪人面をけなされてすこし不貞腐れた。
・・・・・
鬼は、長い爪の生えた指を開くと、Kを地面にストンと落とした。
ドスン・・
大きく尻もちをついたKは、その格好のまま、後ろに、慌てて逃げようとしたが、恐ろしさの余り腰が抜けて動けなかった。
(ひいいっ・・・潰される・・・)
そう思った時だった。
鬼たちは、踵を返すと、何事もなかったかのように、また、なべの支度を、ごそごそと始めた。
「・・・・・・・」
「えっ・・?」
Kは、竦めた首を、ひょこりと、カメのように伸ばして言った。
「・・・・・・・・」
「あの・・・」
「おれは・・・どうしたら・・・・?」
「・・・・・・・・・」
「ふん、知るか、俺たちの知ったこっちゃねえ・・」
鬼は、ぶっきらぼうに、そう、吐き捨てた。
「どこへでも、好きに行くがいいさ・・せいぜい地獄を楽しむこった・・・」
・・・・・・・・・・
そう言って準備した地獄なべを、火から下して、バシャリと地面にぶちまけた。
すぐ近くまで来ていた地獄犬や、地獄猫は、なべの具材(先ほどの男)をがつがつと食べ始める
・・・・・・
「本当に哀れなやつだ、最後は犬や、猫のえさになるとは・・・」
Kは、先ほど処刑された男のことを思っていたが、自分がなべの具材にされずに済んだことに大きな安堵感を覚えていた・・・と同時に、やつら(鬼ども)の気が変わらぬうちにさっさとここから離れることにした。
・・・・・・・・・・
先ほど来た一本道を、また、どんどん先へと進んでいく。
・・・・・・
ふと、先ほど鬼が言ったことが、気にかかった。
(俺は・・・まだ、・・・死んでいない・・・?)
「一体どういうことだ・・・?」
・・・・・・
Kは、少し考えていたが、納得のいく答えが浮かびそうにないので、これ以上考えるのをやめ、ただ無心で歩くことにした。
身体すべてが足になったような感覚に、妙な懐かしさを覚えていた。
しばらく行くと、大きな威勢のいい声が、聞こえてきた。
・・・・・・・・・・・
「さあ・・・・」
「せいや・・・」
「さあっ・・・」
「せいやっ・・」
掛け合いの、心地よいリズム感、Kには、覚えがあった。
まだ小さい頃、年の瀬に家族総出で行ったあの、餅つきに違いない。
・・・・・・・・・
「・・どうやら、次の処刑場についたようだな・・・」
そう言って、Kは、声のする、小高い丘の方へと、足を運んだ。
なぜ自分から、処刑上に向かったのか、はっきりとは、判らなかった。
地獄にいる鬼たちは、恐らくは、自分に危害を加えない・・・
なんとなくではあるが、それがKに判ったからなのかも知れなかった。
・・・・・・・・・・
丘の上にある、岩の陰に隠れて、Kは、ここの様子を窺っていた。
「さあ・・・・」
「せいや・・・」
「さあ・・・」
「せいや・・・」
小気味よい調子で、掛け合いは続く。
しかし、よくよく見てみると、そのたびごとに、ぴしゃり、ぴしゃり 赤黒い
血しぶきが、辺りに飛び散っている。
杵で打ちつける鬼の体は、やはり血で染まっていた。
(あ、なんだ、さっきの鬼とは、また違うんだ・・・)
顔が、馬と、牛・・・
もしかしたら、生前人間様にこき使われて苦しめられた家畜の変化
か、何かじゃないのか・・・?
・・・・・・・・
Kは、気づくと まるで、その光景を楽しむかのように、罪人が、処刑されて
いるその様を眺めていた。
・・・・・・・
(やっぱ、おれは、まともじゃあない・・・)
(こんな、酷い仕打ちを平気で見ているんだから・・・)
Kは、自分が、この、鬼たちと同類なのではないかと感じ、少し身震いをした。
また逆に、この鬼たちも、実は、その成りからは想像もできないような、
どこか優しさを、持ち合わせているのではないのかと、感じたりもした。
・・・・・・・・・・
ここ 地獄の鬼とは、一体 いかなる者たちか・・?
彼らにも、生前は存在したのか・・・?
彼らにも、死後はあるのか・・・?
どれくらい、この地獄で、このような扱きを続けているのか・・・?
・・・・・・・・・・・
Kの気持ちは、やがて赤い血で染まった、餅となる 罪人たちから、ここ、地獄に
存在する、この鬼たちに向けられていた。
第2話 おわり
鬼たちが、人間のように良心をもっていると仮定した作品なり、漫画なりを、私 倉本は多く読んだことがありますが、そこに出てくる鬼は身なりなど、キャラとしての鬼を扮装しているだけであって地獄草子に書かれているような罪人を拷問する役割を演じる鬼たちではありません、倉本は地獄にいる鬼たち地獄草子に登場するような(本当の・・・?)鬼たちに、人間のような ある面では、優しさをなどを、を持っているキャラとして描いていきたいと思っています。




