第二話 初めてのパーティ
「この人達がパーティメンバー?」
「そうよ」
ユリナから紹介され、人が苦手な俺はどう対応すれば良いのかで悩んでいた。
男が3人で女が・・・・・・1人!?てか、ユリナしか居ないじゃん。ツッコミたいとこだけどこのメンバーで戦うって事か?
俺は別世界から来ただけだしレベルはまだ低いだろう。他の奴等は何となくだけど強さを感じる。
俺は息を呑み込み、ユリナの方を見る。ユリナは頷いた。信用しても大丈夫って事だろうか。
一人は剣士っぽい格好をしていて身長が俺よりも高い。俺は男にしては169しかないがこいつは180もありそうだ。
二人目は槍を持っている。背は俺と変わらないみたいだけど、キリッとした眉は逞しく見える。
三人目は特に武器と言った物は持ってないけど、緑のローブを羽織っており首元にはペンタクルのペンダントを首から提げている。キラッと輝くそれは誰もが見惚れるぐらいだ。
「ユリが言ってた新しいパーティメンバーとはこの少年かい?」
「そうよ。まだこの世界に来たばかりだから、ヴィッセルも他の二人も仲良くしてあげてね」
「はい!勿論です!」
「あぁ。問題ない」
「・・・・・・」
「えっと・・・・・・宜しく?」
一人の男は何も言わずに自分の持ってる剣を腰から抜き取り、そのまま剣を俺に差し出して来た。
「君、剣は扱えるかい?」
剣を差し出したままそう問い掛けたのは先程からガン見して来るヴィッセルだ。何故彼がガン見をして来るのかは分からないが、彼を見る限り歓迎はしてくれていないだろう。
「いや、実際に見たのは初めてだし・・・・・・」
「なら君にその剣が扱えるか試してやろう」
その瞬間、剣を投げたから俺がそれをキャッチする。てか、受け取り方が悪ければ絶対に怪我をするじゃないか。
そんな事はお構いなしにヴィッセルはもう一つの剣を腰から抜き取った。
「いきなりかよ!?ま、まぁ良いけどよ」
「陸人君、大丈夫?彼は・・・・・・」
「何とかなるだろ!」
ユリナが最後何か言い掛けた気がしたけどバトルは既に始まっていてそんな言葉は書き消されてしまった。
《クレイヴ・ソリッシュ!》
ヴィッセルが叫ぶと目が赤くなり、同時に剣が金色に輝き出した。何が起きてるのか分からず混乱していると輝きは更に増し、ヴィッセルの見た目が一瞬にして変わっていく。
取り合えず俺は渡された剣を構えたが遅かったのか.....いや、彼の動きが速すぎたのだろう。見えない攻撃に俺は地面に膝を付けてしまっていた。
「がはっ!げほっ・・・・・・」
な、何だ・・・・・・。一瞬ヴィッセルの動きが見えなかった。余所見などせずに彼しか見てなかった筈だ。
痛みの原因を確認すると腹に傷痕が出来ていて相当なダメージを俺は喰らっていたようだ。腹を支えながらどうにか立つが目の前にはヴィッセルが立っていて短剣を突き付けられていた。
「今の一撃で立てるとは大したもんだね」
「へっ・・・・・・。こんぐらいで・・・・・・俺は・・・・・・倒れ・・・・・・ないよ・・・・・・」
「陸人君!」
少し離れたとこから見ていたユリナが心配して急いで掛けよって来た。慌てて俺の腹に両手を当て、何かの呪文?を唱えている。
『大地に満ちたる命の躍動、風の精霊よ、汝の傷を癒しなさい。ヒール!』
呪文と共に黄緑の精霊が現れ、俺の体全体に暖かい風が当たる。痛みも少しずつ和らぎ、さっきまでの傷痕も消え逆に力が漲るようだ。
「これは・・・・・・」
「回復魔法よ。精霊の力を借りたの」
「精霊の力?」
「ユリナさんは精霊使いなんですよ!」
ずいっと顔を近付けて来たのは小柄な男性で・・・・・・まだ名前を聞いてなかった。
何か憎めない奴だなぁ。
そんな事を思っているともう一人の男性が近付いて来た。
「大丈夫か?いきなりでびっくりしたかも知れんが、悪い奴ではないんだよ」
「えっと・・・・・・。まだ名前を聞いてないんだが・・・・・・」
「めんご、めんご(笑)俺は槍使いのパリス・ヒルトンだ。気軽にパリスと呼んでも良いぞ!」
パリスと言う男はがっはっはっと声を荒げながら笑った。俺は人差し指で両耳を押さえもう一人の男性を見る。
「僕は魔術師のルイス・ローゼン。宜しくお願いします、陸人さん!」
礼儀良く俺にお辞儀をするとニコッと微笑んだ。その笑顔が俺にはかなりきつい。こう言う奴が悪い野郎に騙されたりするんだろうなぁと俺は思った。
しかし何故女がユリナだけなんだろう。普通1人ぐらいは同姓の子を入れるもんじゃないのか?気になるけど聞くのは止めとこう。
「なんだ、もう仲良くなったのかい?」
先程戦った相手、ヴィッセルが此方に近付き剣を腰に直す。そう言えばこいつに負けたんだっけ。てかあんな技を受け止められる訳がない。
目が赤くなったのも気になるが、あの技は何だったのか・・・・・・。
「ねぇ、陸人さんって悪い人には見えないし僕達のパーティに入れてあげたら良くないですか?」
おいおい、初対面なのに簡単に信じちゃうのかよ。俺みたいな奴ほど怪しいじゃねーか。
「ルイス殿の言う通りだな。俺も歓迎するぞ!」
えぇー・・・・・・。何故か歓迎されたんですけど。
「私は最初からパーティに入れるつもりで陸人君を誘ったんだけどな・・・・・・。電話でも言った筈だけど」
「ユリがこの少年をパーティに入れたがるなんて珍しい・・・・・・。何かあるのか?」
「・・・・・・。ううん、何でもないよ」
ユリナが少し黙ったままこっちを見つめたが直ぐに逸らし目を瞑ったまま、首を横に振った。
この世界にもカラスは居るのかと俺は空を見上げる。現実世界に居た頃はこんな体験なかっただろう。これからはこの世界が俺に取って本当の世界になるのだろうか。
だからと言って現実世界に戻りたいとは思わない。
今頃、俺が居なくなって親も先生もクラスの奴等も喜んでるに違いない。
あの女だって・・・・・・。この世界に居ればいつか嫌な事なんて直ぐに忘れられるよな。
だってこれからは・・・・・・。
「あ、もうこんな時間!」
「本当だね」
あ、もう皆帰らなくちゃいけないのか・・・・・・って俺住むとこないじゃん!!
今日は野宿か?この世界の金とか持ってねーし。
あぁぁぁぁぁと今にも叫びそうなぐらい悩んでいると誰かが俺の肩をぽんぽんと軽く叩く。後ろに振り向くとユリナが近くに居たから少し驚く。
「ユリナ?どうしたんだ?」
俺はユリナに尋ねた。
「あのね・・・・・・その・・・・・・」
何か言いたそうだけどモジモジしていてなかなか話さないでいる。何をそんなに恥ずかしがってるんだろうか。
少し待ってたら漸く口を開いた。
「私の家に来ない・・・・・・?」
『『『『!!!!!』』』』
俺達全員が同時に驚いた。女の子から家に誘うって事は好きな人じゃない限り絶対にあり得ない事だ。そもそもユリナに取って俺はただの仲間?かは知らないが、特別な感情などない筈だ。現実世界なら尚更おかしい事なのだが、この世界だから神も許してくれるのだろうか。
「あの~・・・・・・。ユリナさん?正常ですか?」
いきなり寝惚けた事を言って来るから俺はユリナに対し敬語になる。
「私は正常よ!だって陸人君、住むとこがないんでしょ?」
「それはそうなんだけど・・・・・・。いきなり女の子の家にお邪魔するとか悪くないか・・・・・・?」
「そ、そうだぞ!男が女の子の家に上がるなど・・・・・・。(俺だってまだなのに)」
最後の方がぼそぼそで聞き取れないがまぁいいか。
「い、良いから来なさい!」
「は、はいっ!」
何か良く分からないがこの世界で本当に幸せな人生を送れるのだろうか。新しいパーティに新しい出会い。俺は新しい世界で現実世界とは逆の人生を送らなくてはいけない。だからこの世界で頑張るしかないんだ。
皆が羨ましそうにしてる中、俺はユリナと一緒にユリナの家へ向かう・・・・・・。