プロローグ
あぁ、死んで楽になりたい。もう人生なんか捨てて自由になりたい.....。
展望台の上で俺はゆっくりと流れ行く雲を眺めていた。
雲は自由気ままで羨ましいものだ。悩みなんかこれぽっちもないだろう。
もしも神が居るのならば新しい人生を俺にください.....。
"貴方は何故死にたいのかしら?"
「あんた誰だよ。」
"私は神様よ"
「神様?神様ってあの神様?」
"そうよ。で、貴方は何故死にたいのかしら?"
神様の姿は光で見えず声だけが俺の耳に届いた。続けて俺は答えた。
「嫌いなんだ。自分も家族も周りの人もあの女も!」
"だから死にたいと?"
「神様なら俺の願いを叶えてくれよ...。死んで新しい人生を送りたい」
"死にたいね...。残念だけど貴方はまだ死ねないわ"
「どうしてだよ...」
"そうね、一言で言うならば相応しくないからかしら"
意味が分からない。死ぬのに相応しいとか相応しくないとかあるのか?
神様は姿は見えないが近くに居るのは確かだ。
「じゃあ俺はどうすれば良いんだよ・・・・・・」
"新しい人生を貴方にあげましょう。但し、死ねないし、何かを犠牲にしても良いならね。
「分かった。良いよ。今の人生が終われるのなら」
神様はクスッと笑い、続けて俺に話す。
"なら最後に一つ忠告"
「何だよ」
"現実と目を向ける事も大事よ"
「え?何だよそれ」
"そろそろ行かないとね。また会いましょ!理由はその時がくれば教えましょう"
「その時?あ、おい、待てよ!」
そして俺、東條 陸人はそこで気を失ったのだった。