0.プロローグ『忘却の睡夢の悪魔』
物語のなかでの文章表現、風景表現、情感表現等に現代文、現代用語に合っていないような表現があります。それはこの小説ではそうしていますので宜しくお願いします。
今宵の暗空。
今日の風の吹く昏音がする。
その日の事。哀願と感じた。
そんなように思ってしまう私の心もどこか物悲しい。
月星の女神。
……いつもそこに月星……。
多分……いつも見上げたそこにある。
だって……そんな気がするから。
何かにある事に気がつけば…いつからかその部屋の天井にある天窓からも射し込んでいる。朦朧と消えかけた意識に見えている何か…。
空からも遠い中天に浮いている月星。
然していつしか微睡んでいた。
でも、さっきそれという事にも気がつけば、そこはいつに見た事も無い微睡の睡夢のなか。部屋の寝台にいて睡眠るようにいる様子に至る迄の事も、そこに刻は移ろうようでもある。
そんな日の事も…。解らない何かの熱にでも浮かされたような夜の日の睡眠りにいても。私はどこかその月星の明るさも感じていた宵にもあった事に思う。
……始まりは多分…その日からだった……。
暗闇のなかにいた。
仄かに暗い天に明るく見える月星。
何かにと思慮する私の名前も…月。それという事を何故思いながらもいる。
微睡の訪れ。それからは日々に見るようにある風景の睡夢を見る。そんな微睡のうちに溶け落ちていく迄の事にも月星を見続けた。
寂漠とした光明にすら感じた月星明かり。
過ぎてゆく時間。
それにも思えば…どこかゆっくりとしていた。然して…ひっそりとした静寂の宵の夜空にも欠けては満ちてゆく月星。気がつけば…それはどこか暗い陰を持ち、彩色も緋いようにも…何色かに気色ばんだような上弦の月星の色をいつもしていたりする。
……そんなようにもある暗闇のなかで……。
月という名前の私。
暗い天に浮かぶ月星も見ていては、そんな事にと何かに思慮する。私の名前も…月というその事に何故か思ったりもしていた。
然して微睡に溶け落ちる迄の刻。その時間にいた。
気がつくのに何か思えば…それに浮屠したように…月星明かり。夜という刻に。女神の微笑む暗空の宵。すると…いつかの記憶もその時の事を辿る。何かに思う自分がいる。そんな夜の刻にいた気がした。
遠く…。暗空よりも遠い仄暗い中天の天空に眺望ていた。月星にいる。ゆらゆらとした月星明かりに包まれた女神。
……私の想い……。
いつもそれにある私に優美しく。月星の女神は微笑んでいると…思った。
それはどれくらいにある時間が過ぎていったのか。その幾つかの年月にある時間にも…。暗空に浮かぶ雲。その月星夜のなか。
でも…その日。
何かが違っていた。
いつに見た事もない。暗灰の色に染まった月星夜のなか。今にも雨の降りだして来るような空に低い雨曇りの宵…。そんなようにもある暗空を…今日という今に迄にも見た事がないような気がするのは何故だろうか…? 浮屠した刻。そうあるようだった。
何かそれに見るような事にある思いも、微睡に溶けている事に繰る。恰もそんな幻想的な夜の暗空に訪れた宵の日々にあるような事だけは変わる事もなくいた。
……然して気がつけば…いつも見えるのは満ち欠けの始まる上弦の月星……。
それが睡眠りに続く微睡の宵のうちに何度か続いていた事にも思うようだった。
私は…。月という名前の私は…。
それはいつの頃からか、微睡に見た睡夢のなかにでもいる感覚であるのが現実だと…そんなように思うようにもなっていた。
月星の光明…。そのゆらゆらと揺れているようにも想う。それからの銀波にあるようだという月星の毒気。
本当だろうか…。
……今になって思い返してみれば……。
そこにいると信じていた月星の女神。
ただ、そこに想う私の願いは…。
ねぇ…聞いていたの…? 教えて…。
そんな想いは…いつしか睡眠りを誘う。
……それは…何かからの偶然にあった……。
明日になると…又、輝き明るく昇るのか。それすら判らない。太陽が海の向うに永久に眠るように沈暗んだ後に地上を照らしていた月星。何とも不思議な静けさがある夜の帳の降りた宵にも思う。
気がつけば微睡んだ睡眠りのなか。
月星の女神の弾奏でる竪琴。玲瓏のその弦音がどこか遠くから聞こえて来る気がする。
そんな昏音にいつしか時々に魘される睡夢も見る。…そんな何かにある事にも…。多分…何か分からない熱に浮かされた思いにでもあるようにいた。
でも、それも睡眠りのなか。いつも気がつけば…それは現実の暮らしのなかでいるようにある時間。
いつかに思う。蒸し暑い風も時々に吹き抜けていくようにもあった事も、その肌で感じていたりする。
……そんな…ある日の夜……。
風が囁く。
微睡に魘されてゆく睡夢。
見ていたそれにあるのは旧いお伽噺話のよう…。
月星にいる筈の女神。
そんな事に何故か想うようにもいた。
……でも、そんな事は……。
……ある日の夜に……。
宵も満ちた刻。
微睡に溶け落ちていて聞こえる風の音がいつもよりも耳につく。何か…。暗空も突き抜けた一天に静かに囁く。それもいつもよりも近くあるように聞こえる。そう感じた事にもあって不思議と思うようだった。
どこかそれにある事にも…。浮屠して気がつけば…微睡…。その事に何か解らない期待を持って、睡眠りにある刻になる迄を…睡夢の訪れに想うようにもなっていた。
漠残としている想い。それも自分のどこかで想う思考の片隅である。
何か思った。
……いつか…それは訪れる事だろう……。
この惑星が消滅てしまう迄は、未来永劫に囚われし衛星…死星…月星。それも解き放たれどこかに静かに沈眠る日。どうしてなのか…それを自分に重ねて想う事をした。
多分…それは何というようでもない。
……でも…どんな事…何だろうか……。
それを思う。
然し…それという事にある思い迄をも打ち消すように…。風は囁く…。
夜も静かに安閑とした宵。
然して暗鬱としたいつもの微睡にいる。それからも続くようにもある睡眠りの睡夢のなか。その傍らで…私を呼ぶ…月の名前を呼ぶ声がした事にも…。それにいつしか気がついたようにもあるようだった。
微睡の声。
つい…それに聞惚れるような美しさがある声に…。でも、どこか…うわべだけを飾っただけの美辞の声のようにも思えた。
「……つ…き……」
微睡のうちから聞こえて来る…その声。
そんなようにもある事は、何故か時々の事に魘される。それも微睡から見る睡夢のなかに現れる架空の声の存在なのか。多分…微睡の睡夢のなかに巣くうようにいる悪魔だと…それに思ったのか…。
この惑星の周囲をいつまでも廻っている月星。そこにいる筈の月星の女神。揺らめく輝き…。然し、その後ろ側に棲んでいるという睡夢の悪魔…黄泉。
……睡夢の悪魔…黄泉……。
そんな名が…月星明かりのなかで睡眠る月に…確かにそう聞こえた気がした。
月星の女神だと…それに想っていた。
それも時々。魘された睡眠りにある。微睡のうちに見る睡夢の悪魔は睡眠る月の耳元に来ては、その微睡のなかで…月という名前の私の心の想いにある事をそっと囁く。
……黄泉……。
いつかの何かその日の夜も…。月星の女神は玲瓏に鳴音る竪琴を抱き微笑む。それも上弦の月星からの光の弦音もある宵のうちに…。
その日。部屋の寝台に休めた身体も横たえた。頭上はそれからの真上にある天窓の外に流れているようにも見える。
それは夜にもあっても、どこかすぐに雲散して消えてしまいそうな宵の頃に浮かぶ。暗闇に浮雲のあるその陰から、月星も見え隠れしていた刻の移り変わる暗空に…不安定な旋律に月星の女神の抱き竪琴も弾奏でられた。それも近くも遠くも聞こえる。月星からの玲瓏の弦音に混合した声。
……微睡のうち。それにある睡眠りに見る睡夢のなか……。月星の女神。それとは何かまるで異なるようにも聞こえた気がする。
それは怖気るようでも妖しい胡乱な様子に思うようにある。然して、どこか浮屠した刻…。月星の女神も虚空の暗空も徒と消えるような…。どこか心悲しくも美しい声で歌うように囁いていたようにもあった。そんな声のような気がした。
依然として…然して睡眠りのなか…。死星…月星にいると信じた女神。でも、そこにいたのは…魘された睡夢に見ている。そこで知らされた名。
……黄泉……。
それも睡眠りかけた。微睡んでいる睡夢のなかに存在しているだけのようにも思うようでもある。いつも暗空の月星の翳りから生まれていくような。そんな事も静かな魘された微睡にいる時に現れては…消え…。
……然して再び睡眠りに溶け落ちると現れて来ては又、消えている……。
でも、それはいつしか…何かそれという事に見る。微睡の熱に浮かされた月の陶酔のようにある睡夢の想いというその意味を…何故か黄泉は知ってもいた…。
月星の女神。睡夢に見る愛捲る想像にも相反する存在。それにある黄泉は睡睡のなかでいる月の心を意図も簡単に見透かしたようにいた。
多分…普段から一人で睡眠りつく月は…異性に愛される艶福。そんなような幸せな思いを…微睡のその刻に現れる睡夢の悪魔に想うと、それにいる月は何かを願うようにもいて、いつしかその睡夢にある刻の事を待ち焦がれては…それも微睡のなか…夢想も悦楽に思うようになっていたりする。
上弦のどこか緋い色をした月星の浮かぶ夜。そんなような思いにも月はなるようだったりした。
……黄泉は月の心に潜んでいるその想い……。
私…月という名前の存在に。微睡に巣くうようにもある。黄泉という睡夢の悪魔の語る微睡のなかに想う話の事にも睡眠る私…。
そこである虚構の想いに語りかけては…。黄泉はそんな月の想う微睡の睡夢を見させるようにいた。
上弦の月星のある夜。
その日も…微かに睡眠りついてもいた。そんないつかの日に思うようにある夜も…いつもの…しん…と静かにある宵のうちに聞こえていた。月星夜からも玲瓏の弦音もするような…暗鬱な宵の月星天から訪れた。
天窓を眺めながら寝台に横たわる月の微睡の睡夢のうちに…そっと風が吹いた時…。
それは月の睡夢のなかで…黄泉は月の睡眠る耳のうちでそれに囁くようにも…そっと美しい綾言葉の声の様子にいて語りかけて来た。
「……おやすみ…月。いいかい…キミのその心に聞いてごらん。これは決してキミの気に入るような事に言う。…そんなキミを想うからの阿諛からでは…。私がそれと想うからではないよ。だけどね。月。もし…キミの想いを叶えられるとしたら…。月…キミはどんな睡夢を見たい? 甘く…切なく。淫靡で…とても甘美な睡夢でもいい。…勿論、それがいつかに忘れているその幸せ。どこか夢見たような…快い時間。その日々。…どんな睡夢でもいい…。キミに…それはいつか…切なさを齎す事だとしても…ね。…キミは何を私に願い…睡夢を見るのか…」
微睡も浅くあった睡眠りに…。黄泉の語りかけるその言葉もどこか哀切に満ち、それもいつもに変わらずに美しく。然して…ぽつり…と…その言葉も…どこか切なくあった。
黄泉。
その声が聞こえる。
それにあるのは暗空よりも遠く…想う月星の翳りも上弦の月星にある。
何か…そんな刻。
睡眠る私…月。
微睡に溶け落ちた睡眠り。
睡夢。
そこでいつかにいた人たちを見る。
黄泉の声に…月は睡夢も見ると、その想いもいつかにと回帰して揺り起こしては…それに思う事をした。
寝台からの頭上。天窓から見る月星。私に微笑まなかった。月星の女神。そこにいる筈だった女神の抱く竪琴は、その光の弓弦からの音色は玲瓏。
それに想うようにいる私…。
月という名前の私。
尋常なのか…自分さえ…それは解らず。
いつからか歪なように…その心も変わってしまってもいた。
……そんな月でも……。
黄泉は語る。
月の微睡に見る。
想いにある事を…。
微睡のなかで想う。それはいつかに見たようにある。睡夢。
どこか…それに残した想いにある。その幻影だという事を…。
でも…それにある出来事にも月は思うと、何かそれはいつだったのかが…それという事を憶えてはいない。ただ、見た睡夢のなかに…いつかの夜…悪魔…黄泉…がいた。
……それは月の心の深淵の想いにある……。
微睡んだ睡眠りのうちにある。睡夢の悪魔の語る話。
それに聞こえた声…。
月は…睡眠りに残した想いも何か微睡のなかで…見る。その悪魔は…虚空の暗空を不意に吹き抜けていった夜風に揺らめく。幾重つにも連なってぼやけて見える幻燈のようにもあるようだと…その事に想った。
淡く儚く幻の睡夢であったのなら…それにあるようにと…いつかに月は思ったりもした。然していつの間にかそこに睡眠り溶け落ちてゆく微睡でもあっても…。
それも魅惑に堕ち。そうさせられたようにいる。蠱惑の魘される睡夢に微睡ながら…睡眠りにある事を想うようにもなっていた事に…。
でも、それは…ただ、そこにある。それという現実も何かに溶け落ちるような想いも脆弱く儚いと…何故かそんな気がしただけにいたりした。
……思い出そうとしても…浮かんでは浮屠して消える……。
果たしてそれはいつだったのか…。
そんな日々に…ある日の微睡にいた。
然していつかの夜に…月は黄泉という名の睡夢の悪魔に…朧気にある微睡の睡夢のなかで何かの事を約束した。
……それも暗闇の仄暗い暗空からの月星明かりのなかに照らされて……。
然して月はいつしかそれを願う。
今はもう暗空を撫でるだけの月星明かり。
そんな事に…夢見たようにしていたように思う。
でも、微睡にある月に語りかけていた黄泉も…月は…それに感じた。
そんな睡夢はその微睡のうちにしかないようだと…。それも月の微睡のなかに現れて来る睡夢の悪魔のする話しの事も…それに月は思うだけにある事にいた。
微睡の睡夢の睡眠り。
月の想い。
もう一人の月…。
外は空よりも遠い中天に浮いたようにもある月星も沈眠ずに…移りゆく刻の一点に由り、段々と曉の明空に隠れていくようにもあって、それは刻の振り子によって移り変わってゆく。
すると睡夢も見ては忘れられてゆく朝がその日にも訪れた。
そんな朝に月は目覚めようとする。
然していつかに見た。
その微睡のうちにある。溶けた月星明かりの朧気な微睡の睡夢を見忘れてもゆくように…。
そこで目覚めた月は…何かそれというように思う睡夢の事だけを…どこかの想いの片隅で憶えてもいた。