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復讐

「それが、私の身に起きたことよ」


 微々は太都の手の上で、淡々と己の身に起きた事を話した。


「だから、私は鬼が憎いの。鬼が嫌いなの。殺したいの。修羅場を潜れば強くなれる。何の歯も立たなかったあいつを殺す力が得られる」

「そうか、殺し合いなら歓迎だ。どうだ私と戦ってみるか?」

「雪羅」


 時雨が雪羅に大人しくしていろと促した。雪羅はつまらなそうに口を尖らした。時雨の言う事は大人しく聞くのが雪羅の良いところであろう。


「雪羅、時雨、三号って鬼に心当たりはない?」

「何だ、太都。首を突っ込む気か?」

「困っているようだから二人が何か知っていたらと思って」

「私は聞いたことないなぁ。村一つ壊滅させるような手練れなら噂の一つや二つありそうだけど……時雨は知っているか?」

「三号は知らない。けど……酒天童子が鬼の孤児を囲ってそんな名前を付けていると聞いたことがある」

「酒呑童子か……」


 その名前なら太都も聞いたことがある。日本では有名な鬼の名だ。

 ただここは異世界。恐らく同じ名前の別物なのだろう。

 雪羅と時雨は酒呑童子の名に顔を苦そうに歪めていた。どうやら同じ鬼族の間でも厄介な扱いをされているらしい。


「酒呑童子が絡むのであればなるべく関わらない方がいいだろう。あいつは話の通じる相手じゃないし拳の通じる相手でもない」

「強いの?」

「ああ。強いな」


 太都は思わず身震いした。雪羅にそこまで言わせるだなんて余程の事なのであろう。


「私でも倒せない?」輝夜が無邪気に首を傾げる。


「輝夜が強いのは認めるが、まだ未熟だ。戦い方と卑怯さをもっと身に付けたら勝てるかもしれない」


 輝夜は残念そうに手を握ったり開いたりしていた。

 そこで思い付いたかのように、籠の中の微々を見た。


「じゃあ微々じゃ勝てないね」

「それでも、私は行くしかないわ! その鬼の情報を教えて!」

「それなら、私達と来なよ」


 輝夜の提案にその場の皆は頭の上にハテナマークを浮かべた。


「私達強くなるために旅をしているの。だから微々も一緒に来て強くなってそれから挑めばいいと思う」

「それ、本気なの?」

「うん」

「ダーリンいいよね?」

「お、俺は歓迎するよ。でも……」


 先程雪羅は微々に殺されかけている。太都は二人に最終判断を委ねた。


「別に私は構わないよ。時雨もいいだろ」

「雪羅がいいなら私もいい」


 太都達一行で拒否する者はいないようだ。後は微々の気持ち次第だろう。


「鬼と一緒に旅だなんて」


 しかし、微々にはまだ抵抗があるようだ。そこで輝夜が彼女に甘い言葉を囁いた。


「私がもう少し魔法を使いこなせるようになったら、微々にかかってる魔法が解けるかもしれないよ」

「本当に!?」

「今はまだ無理だけどね」


 輝夜は悪戯にウィンクをした。

 微々の魔力は身体のサイズが小さくなったことにより大分弱くなっていた。元の大きさに戻れるのならば復讐に一歩近くなることだろう。


「……わかったわ。鬼を知る事はやつ討伐への一歩になる。貴方達と行動を共にするわ」

「うん、よろしく」


 皆が新しい仲間を歓迎したことにより、輝夜は微々を魔法の籠から取り出した。

 籠から出た微々を雪羅が摘んで顔の前まで持っていき、興味深そうに指でつついたりしていた。

 微々は「離せ」と、叫びながら手足をバタバタとさせている。


「人を小さくするなど面白い魔法があるものだ。聞いたことがない」

「私は玩具じゃないわ! はーなーしーてー」

「すまんすまん」


 雪羅が手を離すと、地面に降りた微々は報復と言わんばかりに雪羅の足を蹴った。


「はは、擽ったいからやめろ」


 自分の渾身の蹴りを擽ったがられ、微々は益々馬鹿にするなと憤慨していた。


「ねぇ、輝夜」


 微々と雪羅のコントを横目に、太都はこっそりと輝夜へ耳打ちした。


「本当に魔法が解けそうなの?」

「うん、何かの魔法が微々の身体を包んでる。多分あれを解けば元に戻ると思うよ。解くのに苦労すると思うけど」

「そっか」

「ダーリンどうしたの?」

「大した事じゃないんだ。ただ彼女の話に気になる点があって」

「気になる?」

「うん、俺の考え過ぎかもしれないけど」


 太都は雪羅に揶揄われている微々の方を見た。


 ※


「なんで私がこの男の肩に乗って移動しなきゃならないのよ」


 微々は太都の肩にしがみつきながら移動していた。

 よく知りもしない異性と密着するのが嫌らしく、その顔は屈辱に歪んでいた。


「仕方ないだろ、あんたが私や時雨は鬼だから触るのは嫌だと言うし、自分の魔法を解ける輝夜の肩になど申し訳なくて乗れないと言ったんだから」

「自分一人で歩けるわ」

「遅いからダメ」


 微々の身体は小さく、太都達に比べ歩幅も小さい。同じ速度での移動は困難を極めるのだ。

 雪羅に反論できず悔しそうに肩の上でジタバタともがく微々が落ちないように、太都は手を添えながら移動した。


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