第9章 魔界
部屋を出た極夜は縁に魔界の案内を始めた。
「まず魔界は3つの層に分かれてる。まずはここ居住区だ。」
縁は改めて周りを見た。天井はとても高く、大きな穴が2つ開いていて、そこを悪魔が出入りしている。部屋は広い土地の真ん中に小屋があるように建っていて、大きさは全部違った。通路は縦横まっすぐにのびている。そして、いたるところに悪魔がいて極夜と縁をジロジロと見ていた。
「こうして見るとやっぱり極夜の部屋は大きいね。」
極夜に話すなと言われていた縁は小さな声で言った。
「気にしたことないな。」
「ねぇ、部屋が大きくなった時に部屋同士がくっついたりしないの?」
「あ~、そんなのは見たことがない。魔界は大きさに際限がないから、魔羅様がうまくやってるんじゃないか。」
そんなの気にしてどうするんだと思ったが口に出すのはやめた。
「部屋は何個ぐらいあるの?」
「今悪魔は500くらいいるらしいから、500はあるか。」
「500!?すごいねぇ。端っこが見えないや。あれっ・・・・」
急に縁が立ち止った。
「なんだよ。」
「僕の部屋がどこだったか忘れちゃった・・・」
「部屋の場所を覚えてなくても自分の部屋はすぐわかる。自分の匂いというか感覚というか、目をつぶって探してみろ。」
縁は言われたとおりに目を閉じながら部屋を探した。すると不思議と自分の部屋の場所がわかった。
「すごいや。すぐにわかったよ!」
この瞬間どこからともなく悪魔たちが集まってきて、あっという間に極夜たちは囲まれてしまった。縁の声を聞きつけ集まってきたのである。
「おいおい、こいつ本当に悪魔か?」
「どうなってんだ。」
「人間じゃないのか?」
「でも魔羅様がお作りになったんだ。そんなわけあるか。」
「でも、この顔、この声、どう見ても人間だ。」
「魔羅様がお作りになったものを愚弄するのか!」
「いや、そうは言ってないが、できそこないの前例もあるしなぁ。」
悪魔たちが口々に話している中、極夜がすごい形相で言った。
「おい、お前ら、できそこないとは誰の事言ってんだ?てめえらの事か?」
極夜は自分が音波のことを悪く言うのはいいが、ほかの悪魔に馬鹿にされるのは無性に腹が立った。皆と違う考え方を持っている自分のことまで言われている気になるからである。
「ほぉ、さすが災いを招く夢魔様だ。言うことが違う。」
「何言ってる!夢魔は魔羅様に歓喜を運んでくれる方だ!変な言い方はやめろ。」
「しかし、魔羅様に忠誠を誓っている者とはとても思えない。」
「こいつは、魔羅様に災いを招く。」
悪魔たちは口々に言い争いを始めた。
極夜は縁に上へ行くぞと声を掛け、飛んで天井の穴に向かった。
「だから口を開くなと言っただろう。話すにしても小声で話せ。」
縁は口に手を当てたままうなずいた。よほど驚いたのであろう。目は見開かれ、顔は青くなっていた。
穴をくぐると次は広場に出た。居住区より天井は高かったが穴はなかった。イスが数えきれない程あり、居住区とは比べものにならないほどの悪魔たちがいた。
「ここは2層目の魔界の広場だ。なぜか悪魔は話好きでな。話好きというか、どうやって人間を苦しませたのか、闇に染めたのかの自慢話をいつまでも飽きずにやっている。それがだいたい終わると夢魔の伝説についての話だけどな。」
「ほぉ、珍しいな。極夜が広場にくるなんて。」
後ろから野太い声がして振り向くと五蘊が立っていた。身長は音波と同じくらいだが、体格がよく筋肉質で腕も足も太かった。
「来ちゃ悪いかよ。」
「本当にお前は変わらんな。横のちっこいのは新しい悪魔だろ。」
そういうと五蘊は顔を近づけてしみじみと縁を観察するように見た。縁は直立不動で棒のように立っていた。
「縁、こいつは四魔の一人、五蘊だ。」
それを聞いた縁はさらに体を硬直させた。
「こいつってことはないだろう。そんなだから百鬼に災いって言われるんだ。魔羅様からご指名された四魔に敬意を払え。俺はお前の事を歓喜を呼ぶ者だと思っているぞ。なにしろ魔羅様がお作りになられたんだからな。」
また始まったかと思いその場を立ち去ろうとしたとき、次は五蘊の後ろから天邪が現れた。
「皆がざわついているから何かと思えば、極夜か。お前が広場にねぇ。おや、隣のが例の新しい悪魔かい?」
そう言って天邪は縁を上から下まで舐め回すように見た。




