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この世界  作者: 松本 庵
~運命の始まり~
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第5章  忠誠

 極夜キョクヤは不機嫌そうに百鬼ビャッキの部屋でのこと、ヨスガの世話を命じられたことを音波オトハに話した。その間、縁は極夜と音波の顔を興味深そうに交互に見ていた。


「そうだったのか。私を呼ぼうと思ったならすぐ呼べばよかったのに。」


少しにやつきながら音波に言われ、極夜は更に不機嫌になった。ここで初めて縁が口を開いた。


「あの、音波さん、は極夜、さんと仲がいいんですね。」

「おいおい、本当に縁は変わってるな。さんなんて付けて呼ぶ悪魔を初めて見たよ。私たち魔の部類の者に敬語は使わなくていいぞ。もちろん、さんもつけなくていい。本当に人間みたいなやつだな。まぁ、極夜よりは上下の分別はあるみたいだが。」

「あの、魔の部類って?」

「ああそうか、わかりやすくピラミッド形でいうと、まず頂点には魔羅マラ様。魔羅様は私たちを作ってくださった絶対の存在のお方だ。すべての悪魔は魔羅様に絶対の忠誠を誓っている。これは言わなくてもわかっているだろう?心に刻み込まれるように魔羅様の存在があるはずだ。」

「うん。僕たち悪魔は魔羅様の手足。魔羅様の道具っていうのはわかってる。」

「そうだ。そして次には、魔羅様の直属である魔界四魔様たちだ。この方々は、四魔の下にあたる、我々魔の部類の力の強い者から選ばれる。魔羅様直々のご指名でな。」

「じゃあ皆、四魔に選ばれたいと思ってるの?」

「いや、そういう訳でもないんだ。もちろん魔羅様に指名していただくことほど名誉なことはない。魔羅様に選ばれた方々だから我々も絶大な尊敬の念を抱いている。だが、四魔に選ばれたくて人を闇に染めている悪魔はほとんどいないだろうな。」

「どういう事かわからないよ。」


縁は首をひねりながら眉間にしわをよせ一生懸命理解しようとしていた。


「まぁ、縁はまだ力を使ったことがないからな。初めて力を使った時に自分の中の欲望に気づくはずだ。元々悪魔は自分の欲望にしか興味がない。その欲望を追い求めれば追い求めるほど部屋も大きくなるし、自分の力も強くなっていくから、魔羅様の目にも留まるんだ。」

「ふぅ~ん。そうなんだぁ。まだいまいちわかんないなぁ。」

「そのうちわかるようになるさ。」音波は静かにほほえんだ。

「さて、最後は底辺の者だ。底辺には小悪魔コアクマがいる。小悪魔たちには意思もないし、話もしない。我々悪魔に命令されればできることはなんでもする。といっても、小悪魔を使うのは人間界でだけだがな。まぁ、使い方は人間界に行く時に極夜に教えてもらえ。」

「うん、わかった。」

「次は寿命だな。我々の寿命は200年から300年くらいだろうと言われている。」

「言われているって?」

「そこまで生きる悪魔は四魔様たちくらいだからな。はっきりしたことはわからないんだ。だいたいの悪魔は100年くらいで闇に戻るしな。」

「闇に戻るってどういうこと?」

「人間界に行って人を闇に染めるだろ。そうしたら、染めている間の闇は自分の力としてもらうことができるんだ。力が強くなれば強くなるほど人に影響する力も強くなる。そして、力が強くなりすぎてくると、魔羅様の中に戻ることになる。まぁ、人間でいう死ぬってことだな。」

「えっ、さっき力の強い者は四魔に選ばれるって言ってたよ。」

「それはタイミングだな。たとえ、四魔様より力の強い者が現れてもそれが理由で地位が代わるわけではないんだ。」

「え~っと・・・」縁はもう首をかしげることしかできなかった。

「よし、わかった。まず四魔のことを詳しく説明するか。」

「うん!教えて!」

「四魔に入って魔羅様に命じられるのは、生まれた悪魔の教育だ。教育として人間界に行くことはあるが、自分の欲望のために人間界に行くことはできない。さっきも言ったが、四魔の一人に選ばれることはとても名誉なことだ。しかし、悪魔の本質は人間への執着なんだ。だから、魔羅様に任命されたら迷わず四魔に入るが、その執着を忘れることはない。そして任命された誇りと人を欲望のまま闇に染めることができない苦しみが悪魔の中に芽生える。だから任命されてから100年務めたらそのまま四魔を続けるか、魔羅様の中に戻るかを選ばせていただけるんだ。だいたいの四魔様たちは魔羅様の中に戻るほうをお選びになるがな。四魔を続けることを辞退された方や四魔を続け寿命が尽きた方が出れば、その時に魔羅様が魔の部類の中から力の強い者をご指名なさるのだ。」

「そうなんだぁ。あのさ、魔羅様の中に戻るって、怖くないの・・・?」

「縁は怖いのか?」

「うん・・。」

「やっぱり縁は変わってるな。悪魔にとって魔羅様の中に戻ることはなにも怖いことじゃない。自分の欲求を満たすことが魔羅様のためになる。得た力を魔羅様のお力にできるのはとても誇りに思うことなんだ。我々は魔羅様のためにあるんだからな。」

「そっかぁ。僕も早く力を使ってみたいな!そしたら、皆みたいになれるかもしれないし!」

「そうだな。きっと力を使ったら楽しくなるぞ。あと、他の悪魔の前で怖いなんて絶対に言ったら駄目だ。奴らから何を言われるか。」


「言いたい奴には言わせとけばいいんだよ!」突然極夜が口を開いた。


「まぁ、お前ならそう言うだろうな。」すこし笑いながら音波が言った。

「ねぇ、ずっと気になってたんだけど、どうして極夜は僕の事一番わかるって言ったの?極夜は僕とは全然違うよ!目つきだって鋭いし、話し方だって乱暴だし、部屋だってこんなに大きいよ!部屋が大きいのはすごいんでしょ?百鬼様が部屋の大きさは魔羅様に捧げた力の強さだって言ってた。それだけは教えてくれたよ。」


「はっ、百鬼様は自分のご自慢だけはきっちりやるんだな。」

「まぁ、そう言うな極夜。そうだな。次は極夜の、魔の部類の話をするか。」


縁は前のめりに座り直し、目を輝かせて音波を見つめた。





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