表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界  作者: 御影 零
~夢魔の進む道~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/68

第11章  もう一人の自分

 極夜キョクヤヨスガが泣き止むまでずっと抱きしめていた。望乃ノノは何も言わず、ただ黙って2人を見つめていた。


 縁が泣き止んでくると、極夜は縁を離し、頭をなでながら言った。


「ほら、もう落ち着いたか?」


 縁は涙を拭きながら、極夜を見た。その目はまだ恐怖を感じているようだった。


「縁、何があったんだ。死魔に何をされた。どうしてあんなに傷だらけだったんだ?」


「死魔・・様?死魔様がどうかしたの?」


 縁は極夜の言っていることがわからないようだった。


「もう、死魔様なんて呼ぶな。あいつのことは、死魔でいい。あいつは、あいつは・・・」


 極夜は音波オトハを消された時のことを思いだし言葉を詰まらせた。しかし、縁を見ると悲しい顔をしていたので、慌てて話を戻した。極夜はまだ縁が自分の事をどう思っているのか聞くのが怖かった。


「死魔はとりあえずいい。それより、なんで傷だらけだったんだ」


「たぶん、自分でやったんだと、思う・・・」


 縁は思い出そうとしているように下を向き考えていたが、極夜は信じられなかった。


「自分で!?本当か!誰かにやられたんじゃないのかっ!?」


「うん。だって僕、ずっと音波の部屋にいたんだ」


「音波の部屋!?お前、音波の部屋にいたのか!?」


「うん・・。あの日、僕、人を殺したでしょ・・?その後はよく覚えてないんだけど、音波が魔界に僕を連れ帰ってくれたんだ。音波は僕を部屋に置いて、そのまま出て行ったんだ・・」


 縁は涙目になり、言葉が止まった。


「それで?その後なにがあった」


 極夜は話を止めさせず、うながした。


「僕の中に声が聞こえてきたの。もっと人を殺せ、もっともっと力を使って人を殺せって。でも、僕は怖かった。もう人を殺したくなんてないんだ。前に極夜の魔空の糸に入った時、もっと人を苦しめたいって感情と苦しめたくないって感情があるって言ったでしょ?その時はわからなかったんだけど、魔空を使って人の中に入った時、気づいたの。僕の中にはもう一人の僕がいる。真っ黒い僕がいるんだ。僕が魔空で人に入った時に黒い僕は目覚めた。絶対に目覚めさせてはいけなかったのに・・・」


「何を言ってんだ。それが悪魔だ。人を苦しめ、人を殺したいなんて俺がいつも言ってたことだろ?」


「極夜とは違うんだ!極夜はまだ人に考える猶予を与えられるでしょ。でも、僕は、僕は人に何も考えさせず、すぐに殺してしまう。人が起きてようが、寝てようが関係なく、その人を殺せちゃうんだ・・・」


「悪魔にとったら羨ましいことだ。何も怖がることじゃない」


「でも、僕は嫌なんだ!もう絶対に人を殺したくない。もう二度と殺したくない・・。だけど、日に日に黒い僕の声がどんどん大きくなっていって抑えられなくなってきてたんだ。極夜と音波に早く戻ってきてほしいと思ってた。魔笛を吹く余裕なんて僕にはなかったから・・・」


 この言葉を聞き、極夜は心をえぐられたように痛かった。もう何も言えず黙ってしまった。


「だから、極夜から魔笛が聞こえてきたとき、本当に嬉しかったんだ。頑張って魔笛で返事をしたんだよ。そして、音波がいなくなったって聞いて・・・。僕はもう自分を抑えられなくなった。人も悪魔もすべてを消し去ってしまいたくなった・・・。悪魔も殺したいって思った・・・」


 極夜は驚き、息を飲んだ。


「悪魔を殺したいって・・。どういうことだ?」


「僕にもわからないんだ。でも、音波を思うと死魔、も、悪魔も許せなかった。そんな心がどんどん大きくなっていった。でも、極夜の顔が浮かんだんだ。絶対に極夜を傷つけたくなかった。だから、自分を抑えたかったけど、抑えきれなくなった。だから、僕は心を閉ざそうと思ったんだ。黒い僕は力を使えって囁くけど、僕の体を動かすことはできないんだ。だから、何も考えないように、少しずつ自分を殺すように心を閉ざした」


「それで、あんな状態になったのか?俺を想ってあんな傷だらけになりながらも自分を抑えようとしたのか・・・?」


「極夜は僕の友達だもん!人を殺すのももう嫌だったけど、僕が極夜を傷つけるなんてもっと嫌だった」


「お前・・。そんな・・・」


「でもね、僕は音波に守ってもらったんだよ。音波の部屋じゃなかったら、僕は部屋を出ていたかもしれない。悪魔も人も極夜だって、殺してしまったかもしれない・・」


 縁は目に涙を溜めていた。


「僕を守ってくれた音波を、僕が殺したんだ・・・」


 極夜は驚き、慌てて言った。


「何を言ってる!音波が死魔に消されたのは俺が悪いんだ。俺が暴走して、人間を殺した。そして、それを止めにきた音波が俺を守って、死魔に消されたんだ・・・!」


「極夜は悪くないよ。極夜は必死に自分を抑えてた。音波のいう事を聞こうとしてたでしょ。それなのに、僕が、僕が自分を抑えられずに人を殺したんだよ。それを見て極夜は自分を止められなかったんでしょ?極夜を暴走させたのは僕なんだ。僕が抑えられてたら、極夜も暴走なんてしなかったし、音波も消されることはなかったんだ」


「だから、違うって言ってるだろ!!お前は何も悪くないんだ!!」


「極夜、本当にごめんね。ごめんなさい・・・」


 縁はまた泣き出した。極夜は縁の肩を掴み、目を見つめて言った。


「いいか、お前は何も悪くないんだ。お前は余計なことは何も考えるな。もういいんだ。次は俺が守ってやるからな。もうお前を絶対に一人にしない。わかったか?」


 縁は泣きながらうなずいた。


「それで、今はどうなんだ。人を殺したいとか、悪魔を殺したいとか思っているのか?」


 縁は涙を拭き、答えた。


「それがね、今は何とも思わないんだ。黒い僕も静かなままだよ。まったく黒い僕の存在も感じないんだ」


「そうか。それなら、とりあえずよかった。お前はもう人を殺したくないって思っているならそれが一番だ」


「極夜はどうなの?」


「俺は、音波が目の前で消されてから、もう人間に対する執着は消えた。もうあんな思いをするのはイヤだからな・・・」


「そうか、やっぱり、極夜は音波が消えるところを見たんだ・・・。ごめんね、極夜。そばにいれなくて」


 縁が極夜を見つめ、悲しい顔をした。


「お前はそんなことを気にするな。それに、俺は、お前ほど何も考えてはいなかった。縁に、憎まれてると思って、俺は自分を守るためだけに人間界にいたんだ。悪かったのは俺のほうだ。お前がそんなに俺の事を考えてくれていたのにな」


 極夜は悲しそうに笑った。


「極夜、僕が極夜を憎むなんてあるわけないでしょ!なんか極夜って、ほんと、相変わらずだね」


 縁はそう言うと、冷たい目で極夜を見た。その目にイラッとした極夜は喧嘩腰に話し始めた。


「どういう意味だ!?お前をなんとかしようと、色々考えてたんだぞ!」


「それはわかるけど、またイライラしながら変なこと考えてたんじゃないの?ため息つきながら」


「ため息もでるだろ!人形みたいに動かなかったくせに!」


「そんなこと言ったって僕だって大変だったんだからね!」


「俺だってどれだけお前を抱いて飛び回ったことか」


「なにさ!僕を守ってくれるんでしょ!いいじゃん、力が有り余ってるんだから」


「お前、ほんっとに生意気だな」


 極夜と縁はお互い目を合わせ、笑いあった。そんな2人の姿を見て、望乃が笑い出した。極夜は望乃が近くにいたのをすっかり忘れていた。縁は望乃を見て目を丸くしていた。


「極夜、この人、僕たちの話が聞こえてるの・・・?」


「ああ、忘れてたが、姿も見えるぞ。お前の傷を治したのもこいつだ」


 極夜の言葉を聞き、縁は目を丸くするばかりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ