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この世界  作者: 松本 庵
~運命の始まり~
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第1章  悪魔の悦び

この世には悪魔が存在する。

それは人より出でし者、人が作り出した物・・・・・・・


 人間の憎しみ、嫉妬、恨み、妬み・・負の感情より闇が生まれる。生まれた闇は、闇に惹かれるように暗い暗い世界に集まる。そこは、魔界。悪魔のいる世界。悪魔は闇によって生まれ、闇のために生きる。悪魔の唯一の悦びは人を闇に染めること。自らが闇に落とすことに、とてつもない快感を得る生き物。


 悪魔は心の闇にササヤキきかけ闇をアオる。かといって、人に悪魔の存在を気づかれてはいけない。自らで心の闇を大きくし、自らが悪魔だと思わせなければ意味がない。悪魔はその闇に落ちていく人間の姿をみて悦びを得るのだから・・・。


 しかし、悪魔の力は人の心を一気に闇に染めるほど強くはない。少しずつ、少しずつ闇につけ入り時間をかけて囁く、じわじわと染まる闇を見て悦び、力を得ていく。そして、人の心が闇に染まりきったのを見届けたら、悪魔は次の標的を探す。人からにじみ出る闇で、魔界が成立しているからだ。これからこの人間は魔界に力をそそぐ大事な人柱になるのだ。


 そんな魔界の中にあり、皆に恐れられ尊敬されている者がいる。名前は、極夜キョクヤ。髪は黒く、青年のような見た目と背格好。歳は40を越えてはいるが、身長・顔立ちは生まれてから一切変わっていない。極夜は人の心が闇に落ちたぐらいでは、まったく悦びを得られない。暗く染まった闇をさらに黒く落とすのだ。憎しみに狂い、嫉妬に狂い、自己嫌悪で狂わせ、寝ることも、休むことも許さない。人がものをいっさい考えられなくなるまで狂わせたら、最後には死を囁き殺してしまう。その死の瞬間に極夜は最高の悦びを得るのだ。


 極夜はまた人間を死に追いやり、興奮冷めやらないままこの日も魔界に帰ってきた。


 魔界は宇宙のような、ブラックホールのような、ただただ真っ暗な中にある。その暗闇を支配しているのは、すべての闇、すべての悪魔を支配する魔界の王、魔羅マラである。悪魔にとって魔羅は絶対無二の存在。絶対のルール。すべての悪魔が忠誠を誓い、崇拝し、魔羅のために生きている。


 -----ああ、今日も最高の日だった・・。あの顔!あの目!思い出すだけで震えが止まらない。


極夜は興奮で震える手を見つめながら自分が満たされているのを感じた。


「おい、極夜」


 ふと後ろから声をかけられ振り向くと、近づいてくるのは、魔界四魔の一人、百鬼ビャッキである。背は高く、髪は白い。見た目は人でいう40歳過ぎくらいか。しかし、目は怒りでいつもよりさらにギラつかせている。極夜はマズイとばかりに目線をそらした。


「また殺したそうだな。何度言わせたら気が済むのだ。」

「・・・・・・。」


 やっぱりそのことかと思うと怒りが込み上げてきて、極夜は反抗的な目つきで百鬼を見た。


「人を殺すのは魔羅様のお考えと違うといつも言っているではないか。魔界のため、王のため、忠誠を誓わんか!」

「・・・俺は自分の快楽のためだけに生きる。これはもうやめられねぇ。」


 極夜は興奮を思い出し、また震えだした。それを見ていた百鬼は、鼻で笑い見下しながら言った。


「ふん、快楽か・・・・。お前も知っているだろうが、自分の快楽に溺れた者は死魔シマに消されるぞ。」


 極夜は一瞬ビクッと体を硬直させた。ため息をつき百鬼は続けた。


「悪魔は人より生まれし闇の者。人が苦しむ姿はなんとも言えん快楽。だが、一線を越えてはならん。闇に生きる者には闇に生きる者のルールがある。すべては魔羅様のため。魔羅様が悪魔のすべて。自分のためだけに生きてはならん。」

「あぁ、・・わかってるよ。気を付ける。」


 極夜は百鬼に背を向けながら言った。


 -----なにかと、魔羅様、魔羅様・・わかってるが、やめられないものはやめられない。


 百鬼はその後姿を見ながら、極夜がほくそ笑んでいるのを感じていた。 





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