◎~ENORAⅡ~◎
これは現実だったのか・・・夢だったのか・・・
(ペンネームの所は実名ですが、私と妹の実名はあえて伏せてあります)
ある夏の日の夜・・・利根の自宅私室にて・・・
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「・・・と・・・ね・・・トネ・ジュウジュン・・・」
利根
「ん?・・・誰だ?筑摩(妹)か」?
誰かの声が聞こえてベットから起きる利根
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「私よ・・・」
利根
「ん?・・・き、・・・君は・・・」
目の前に居たのは、去年の秋・・・居眠りしていた時に見た夢で出会ったアメリカ陸軍航空隊・第509混成部隊・第393爆撃戦隊所属の長距離爆撃機B29の精霊、エノラ・ゲイだった
利根
「エノラじゃないか?・・・どうしたんだい」?
エノラ
「話を・・・教えて欲しくて・・・」
利根
「話・・・何の話だい」?
エノラ
「・・・あの後、私が基地に戻った後のヒロシマの事を・・・」
利根
「広島の事をかい?・・・」
エノラ
「えぇ・・・あの爆弾を落とした後に・・・どれだけの犠牲者が出たのかを知りたいの・・・」
利根
「いいけど・・何で知りたいんだい」?
エノラ
「・・・私の国が作って、私が運んだあの恐ろしい兵器が・・・どれ程の人を苦しめたのかを・・・」
利根
「・・・分かった」
その後、私はエノラに原子爆弾、リトル・ボーイの被害をエノラに話した
原爆投下当時、広島市には35万人が生活していたが原爆投下後に推定、9万人から16万人が死亡したとされ、今でも原子爆弾の放射能が人体への影響を及ぼしている
利根
「今も苦しんでいる人は沢山いるんだ・・・」
エノラ
「そう・・・」
利根
「火傷やケロイドが今でも残っている人もいるし・・・」
エノラ
「・・・ねぇ・・・広島に連合軍捕虜は居たの」?
利根
「・・・・・・・・・・・・・・・」
私はエノラの質問に言葉を詰まらせた、広島に投下された原爆でアメリカ軍の捕虜十数名が被爆して死んでいるのである・・・この事を彼女に教えていいのだろうかと・・・
エノラ
「ねぇ・・・どうなの・・・」?
利根
「いや・・・何でそんな事を聞くの」?
エノラ
「ただ・・・気になっただけ・・・」
利根
「・・・アメリカ軍B24爆撃機の乗員十数名が広島市内に居たんだ・・・全員この原子爆弾で死亡した」
エノラ
「そう・・・私は味方まであの爆弾で殺したんだ・・・私は悪魔ね・・・」
利根
「・・・・・・・・・君は悪魔なんかじゃないよ」
エノラ
「いえ・・・私は悪魔よ・・・10万人以上に人を殺して・・・いまでも人を苦しめている最悪な爆弾を運んで・・・何の罪のない民間人や味方の捕虜まで一緒にあの恐ろしい兵器を落として・・・私なんか・・・途中で墜落して死ねばよかったのよ!!・・・私みたいな悪魔なんて・・・」!!!
利根
「エノラ・・・」
エノラ
「私は正義の名の元に戦っただけ・・・それが・・・何も罪の無い子供や女性や老人が一瞬でゾンビみたいになっちゃって・・・あの戦いの正義って何だったのよ・・・」!?
利根
「戦争に正義か悪かなんて無い・・・戦争で誰が正義かで誰が悪かなんて・・・勝って見なきゃ分からないんだ・・・」
エノラ
「トネ・・・」
利根
「これ・・・俺が書いている小説の登場人物のセリフなんだけど・・・俺はそう思っている・・・現に君達アメリカ合衆国は大日本帝国に勝ったじゃないか・・・アメリカはあの戦争で一番強い国になった・・・その後も日本は挫けずにアメリカと並ぶ位大きな国になったんだ・・・あの大量殺戮兵器は確かに正義とは言えないよ、エノラが正義と思えないならそれは悪・・・エノラがその気なら償いをするべきだ・・・エノラの本体は今アメリカだよね」?
エノラ
「アメリカのスミソニアン博物館よ・・・」
利根
「それなら君はそこで次の世代へ伝えて行かないといけないよ・・・自分が運んだ物や、どれ程の死者や被害をもたらしたかを後世に伝えて行くんだ・・・日本でも原爆被害にあった人達は徐々に、亡くなっている・・・俺も原子爆弾を知らない世代にどれ程恐ろしいかを知らせて行くつもりだよ・・・エノラも一緒に後世に伝えて行こう・・・なっ」?
エノラ
「トネ・・・・・・」
そう言ってエノラは私に抱き着いて来た、そして小さな声で泣いていた・・・
私はその頭を撫でてあげた・・・それから数分後・・・
利根
「・・・ん」?
エノラ
「・・・どうしたの」?
作者
「君の体が・・・透けている・・・」
エノラ
「えっ」?
エノラが自分の体を見ると少しずつ透けていた
エノラ
「時間みたい・・・もう戻らなきゃ・・・」
利根
「分かった・・・お互い頑張ろうな」?
エノラ
「・・・うん・・・ねぇ、また会に来てもいい」?
利根
「あぁ・・・会いに来てもいいよ・・・」
エノラ
「ありがとう・・・またね、トネ・・・」
そう言ってエノラは消えてしまった
私は笑みを浮かべて再び、眠りについた・・・
午前8時頃・・・
筑摩
「お兄ちゃん!夏休みだからってまだ寝てるの」?
妹がドアを豪快に開けて入って来た
利根
「ん?・・・あぁ筑摩か・・・もうそんな時間なのか」?
筑摩
「そんな時間って・・・また夜遅くまでゲームしてたの」?
利根
「いや・・・23時までしかやってないが・・・しかし眠ぃ~」
私があくびをしている時に妹が言った
筑摩
「そう言えば・・・夜中に誰と喋ってたの」?
利根
「へっ」!?
妹の言葉に私は驚いた
筑摩
「夜中にお兄ちゃんの喋り声と女の子みたいな声が聞こえたんだけど・・・誰と喋ってたの」?
利根
「な、なんだって・・・・・・」!!!???
筑摩
「えっ?誰かと話してたんじゃないの」?
利根
「い、いや・・・」
筑摩
「はっきりしないなぁ~・・・どっちなの?誰かと話してたの」?
利根
「いや・・・お前も俺とエノ・・・いや・・・ただの寝言だと思うよ・・・」
筑摩
「いままでお兄ちゃんがあんな大きな寝言言う事は無かった・・・本当はどうなの」?
利根
「えっと・・・あ!そうだ、俺朝飯食わないといけないから先に一階におりるわ」
筑摩
「誤魔化すな」!!!
そう言って私は妹を押しのけて一階に走り降りた
これは夢なのか現実なのかは分からない・・・だが、エノラが私に会に来てくれた事は確かだ・・・
エノラは自分が運んだ原子爆弾を悪とした・・・エノラは後世に自分が運んだ悪がどれだけ恐ろしい物なのかを伝えて行く事を決めた
エノラの本体は、アメリカ合衆国のスミソニアン航空宇宙博物館で展示されている
エノラはアメリカで・・・私はこの日本で原子爆弾の恐ろしさを、原子爆弾を知らない世代へ伝えて行かなければならない義務がある
二度とこの様な兵器が使われないように・・・私はずっと願い続けます・・・
終
兵器である彼女・・・人間である私・・お互い違うが・・・後世に語り継ぐ事は出来る・・・
二度とこのような兵器が使われないように・・・
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