表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は、親友の逆ハーフラグをへし折ろうと思います。  作者: 義已暁
木瀬叶歌をめぐる朝の一幕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/23

私とししょーは同好の士。

 叶歌視点の新キャラ登場です。この調子で交互に主人公とキャラの視点が入ります。


 では、どぞ。

「ふふふーん。ふんふんふーん」

 鼻歌交じりに渡り廊下を抜けて、目的の場所に辿り着く。扉を開けば、かさついた古ぼけた匂いが鼻に付く。私は図書棟の管理をする司書に駆け寄った。

「ししょー。おはよーござーますっ!」

「はい、おはようございます。木瀬さん」

 カウンター越しに視線を合わせたのは、くるふわの天然(パーマ)を一つに纏めたエプロン姿の図書棟司書、小暮優志(こぐれゆうし)である。

「今日は早いですね、朝練ですか?」

 道着姿の私を見て司書は首を傾げる。相変わらず癒し系ですね、ししょー。流石心の師匠です。

「いやあ、戦の前のシュミレーションをちょっと」

 二、三度シャドーをしてみせて、カウンター前の椅子に座る。ここは私のいつもの指定席です。

「シュミレーション、ですか」

 天パーの前髪から覗くクリクリの丸い目がこちらを覗き込んでいます。眼鏡の度が強すぎてえらい目が大きいんですよね、ししょー。三十半ばとは思えない童顔ぶりです。前髪切った方がぷりちーですよ。

 私のけしからん妄想など知る由も無いので、取り敢えず要件を言いましょうか。

「はい。今日転校生が来る事ししょーは知ってます?」

「ええまあ。これでも教員ですから」

 流石は情報通。殆ど人気の無い図書棟に一日中居るのに、なんで色んな事知ってるんでしょうかね。いや聞くまいよ。私もそれに助けられているクチなんで。

「それで、ししょーには予め避難先にココを予約したくて」

 この素敵スポットを私の親友三崎の秘密基地にするべく交渉をしに来たのですよ。

「避難、予約? ……ふむ。詳しく伺っても?」

「勿論」

 眼鏡の奥が興味津々ですね、話の分かる先生ですよほんと。お茶も出してくれるし。

「粗茶ですが」

 私の前に湯呑を差出したししょーの厚意を有り難く頂く。うーん番茶美味~い。

「あ、どもです。転校生は三崎なんですよ、実は」

「名前は存じていますよ。職員室でも話題です。成程、それで避難ですか」

 実は以前から私とししょーの会話には何度も登場してるんだな、三崎。まあ主に私が三崎の可愛らしさを惚気てるだけなんだけど。

「話が早いですねぇ。三崎ってば絶対女子から浮くと思うんです。下手すればいじめの標的に」

「以前からの木瀬さんの話を聞く限り、整った顔立ちだと推測されますが」

「整ってるなんてもんじゃないですよっ! 天使です、フェアリーです。敢えて言うなら美の化身です」

 私が前のめりに叫べば、ししょーは若干引き気味に後ずさる。

「……鼻息荒いですよ。それならば避難先は保健室が妥当では?」

 まあ確かに。サボりスポットランキング上位よね保健室。

「あそこは、女子のエンカウント高過ぎです。女子から身を隠すには適しません、サボるには最適だけど」

「こら、目の前で堂々と言うものではないですよ?」

 おっと、怒られてしまった。うーんでも全然怖くないよ。ししょーくらいだと二十人くらい居ても全部投げれるな。その前に二十人も居たら別の意味で負けそうだ、可愛すぎて。

「じゃあオフレコで」

 舌を出せば、ししょーから苦笑が返って来る。

「しょうがない人ですね、貴方は」

「で、良いですか? どうですか」

 私が番茶を啜りながら伺うと、色好い返事が返って来た。

「ご自由にどうぞ。静かにするなら構いませんよ。その為に朝からわざわざいらっしゃったんですか?」

「そうです。あと、お茶を飲みに」

 もとい、本の話をしに。

「ここは喫茶店ではないのですがね」

 喫茶店よりサービス良いですよ。タダでお茶が飲めてお勧めの本を紹介してくれるんだから。

「まあまあ、ししょーと私の仲ではないですか」

 実は体育会系と見せかけて私は、文学少女なのだ。週三で放課後図書棟に通い、お勧め本を借りて、ししょーと雑談をするのがライフワークになっている。

 特待生として推薦入学した私はちょっと訳有りで。平たく言えば空手部の勧誘から逃げまくっていたのだけど、その時匿ってくれたのがししょーだ。今は空手部長の土下座参りから解放されて(仕方なく部に籍を入れた。誓約書を書かせる代わりに、だけど)平穏な学園生活を送っているが、その縁が元で仲良くなったのだ。元々本は好きだったしね。

「予鈴、鳴ってますよ」

「え、聞こえないですけど」

 ししょー、超人過ぎです。分厚い扉の向こうで微かに鳴る鐘の音を聞き取るなんて。

「いえ、聞こえてませんけど。時間的にそろそろでは?」

 ししょーが腕時計を指差す。うん、確かに八時半だね。

「遅刻するのはあれなので、行きますね」

 立ち上がり入口まで歩いた私の背中に、ししょ―の声が掛かる。

「今日は放課後はいらっしゃるんですか?」

「三崎を連れて来ますね。ししょーに紹介したいんでっ!」

 そう言って図書棟を出た私は、『お待ちしています』と言うししょーの呟きに口元を緩めて、にんまりとする。ししょーは多分、三崎の逆ハーフェロモンの耐性があると思う。趣味がおかしいし。


 数少ない協力者になってくれるであろうししょーを見た時の三崎の反応が楽しみで、知らずにまた鼻歌が漏れ出した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ