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第3話

岡谷将年はいらいらしながら河原町通りを歩いていた。


昨晩のコンパで知り合った坂上美穂と京都府立植物園にて初デート。

“植物園でデートするカップルは別れる”という言い伝えを破ろうと意気込んだあまり、暑さと前の彼女とのいきさつで焦りがピークに達し破天荒な行動に出てしまった。

なんと、ベンチで半ば無理やりキスをしようとして、美穂に頬っぺたを殴られて帰られてしまったのである。

よく考えれば、まだ付き合ってもないのに別れるなんておかしいなと思うがそこは後悔先に立たずである。

こうなればヤケクソモード全開ということで四条河原町までひとり車で虚しく戻り、新京極のパチンコ店で1万円すられ、コンパ仲間の中村拓弥から伝授してもらっているナンパを敢行しようと考えながら四条通りを烏丸方面に歩いていた。


思えば少し大胆な作戦に出すぎたのかもしれない。

実は3日前に先月のH女学院とのコンパで知り合った宮村小百合と別れた。

別れたと言えば聞こえが良いが、振られた。

『もう将年君とは会いたくない』というメールが入って来た時はショックで思わず少しボサボサだった頭をスポーツ狩りに刈った。

しかし切り替えの早さとプラス思考は誰にも負けない。

スポーツ刈りにしたことで爽やかさが増したと信じ込んでいる。本人は昨晩のコンパに備えたつもりである。

コンパの席で女と別れたから髪を切ったと伝えたのであるがはたして信じて貰えたのであろうか?


話題が豊富なのは女性にモテル大きな武器である。

コンパ仲間5人の中で唯一地元出身と言う地の利を見せ付けたいと、いつもコンパ開催の時は話をはずませる。

天性の口の巧さで、簡単に女性は落ちると思いがちだが、肝心なところで焦りが生じてしまい、どちらかといえば詰めの甘いタイプであると自分自身では認識しているのだがまわりはどう思っているのであろうか?


それにしても昨日のコンパは可愛い子が多かった。

実際、どの子に声をかけようか大いに迷ったのも紛れもない事実である。


日本的美人の美穂、ボーイッシュさが魅力の月子、小柄ながら長い髪が魅力的なさくら、少し控えめなところがかわいい加代、そして終始1次会の時に話をしていたイマドキの雪絵。

その場の展開から雪絵と仲良くなるのが自然な流れだったのだが、2次会のカフェで突如奥手で通っている直斗が雪絵と話し出したので遠慮した。

直斗が「仲間由紀恵に似てるね」と言っていたのも言い過ぎではない。


その切り替えがきく時ときかない時の差が激しいのが将年の特徴でもあるのであるが、今は自暴自棄気味になっていた。


というのは小百合と付き合いだして1カ月、手もつながなかったのである。

それが嫌になられた原因ではないのであろうかと後悔することしきり。

仲間の中で唯一自動車を持っている将年は京都では珍しくマツダの車に乗っている。

帰りの京阪電車で一緒に帰った広島出身の美穂とマツダの車の件で盛り上がり、今日の府立植物園デートを約束したのだ。


ナンパを試みようと女の子を物色しながら歩いていると、なんと自分の中では本命だった雪絵が向こうから素敵なファッションに身を纏い歩いてくるではないか。


「もしかして雪絵ちゃん?」さして親しくない女性に対してさりげなく呼ぶのは得意だ。

「あっ、こんにちは」と雪絵が答える。

「ひとりなの?」

「はい」

「これから予定ないの?」

「はい、ひとりでぶらぶらしてるだけです」

「よければ、晩飯でも食べに行かへん?」

「いいですよ」


将年がUターンをし、河原町方面に2人で歩いて行く。

一方の雪絵は途中、四条寺町を左折し寺町通り方面に進んだとき、胸をなでおろすことを忘れなかった。

なぜなら直斗と待ち合わせしている阪急前まであと100メートル足らずのところだったからだ。


開き直った時の将年には神様と言う大きな味方がいるのであろうか・・・


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