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第2話

「どうしようかな?」と中森雪絵はひとりごちた。

ここは中京区の烏丸御池にあるワンルームマンション。

福岡から親元を離れひとり暮らしを始めて3カ月が過ぎようとしていた。

本当は東京の大学に行きたかったのであるが、親の希望で京都の大学に落ち着いた。

京都だと親も安心感が漂うらしい。


K女子大に入学してからはひとり暮らしの寂しさをまぎらわすために、一日も早く彼氏を作ろうと努力している。

K大学のテニス同好会に所属しているが、野暮ったい男が多すぎて最近はあんまり顔を出さなくなった。


そこで同好会仲間のさくら、月子、加代、美穂との5人でコンパに明け暮れている。

雪絵の悩みの種は、コンパをする度に1番カッコいいと思っている男からお誘いの言葉を受けないことであった。

「私は不幸の星に生まれてきたのだわ」そう思うことがしばしばある。

思えば高校時代も恋愛には恵まれなかった。


と言うのは、いつも思いを寄せる男との恋は成就せずに来たからだ。

恋愛に妥協はしたくない。

高校生時代からのモットーなのであるが・・・


昨晩のR大とのコンパ。

なかなかいい男が2人いたのである。

自己紹介の時に「キムタクじゃなくナカタクで〜す」とおどけてみせた長髪の中村拓哉。

あと、髪はスポーツ刈りであるが精悍なまなざしが印象的な岡谷将年。

本人いわく、「最近ふられちゃったので髪の毛バッサリしました」と言っていたが真偽のほどはわからない。


1次会の祇園の店を出たのが夜の8時半。

2次会は三条京阪近くのカフェ。

普通、カラオケぐらい連れて行ってくれてもいいのにと思いつつも結構話がはずんだ。


ここで拓哉か将年どちらかから声をかけられたら、私の大学生活もバラ色なのにと思っていた矢先、少しおとなしめの本間直斗という鹿児島出身の男からほとんど唐突に『携帯番号を教えてください。』と言われ断りきれずに教えてしまった。

彼との会話で覚えているのは「僕も九州出身です」、「僕もテニスするんですよ」、「女優の仲間由紀恵に似ていますね」ぐらいしかない。


帰宅後、すぐに直斗から電話がある。

酔った勢いもあったのであろう。すぐにデートの約束をOKしてしまった。

直斗のことは正直なんとも思っていない。

とはいえ、無意識に着ていく服を自然と探しているのはやはり恋多き年頃の証拠なのであろうか?

男にちやほやされるのは嫌な気分ではない。


「とりあえず行って見るか」と決心を固めた。

青のボーダータンクトップと白のジャージーラップ風スカートに身をまとい、6時前にマンションを出て御池駅より地下鉄烏丸線に飛び乗る。


南へひと駅、四条で降りる。ここは烏丸通り京都の南北を走るメインストリートである。

約束の四条河原町の高島屋は同じ四条でも河原町通り沿い。

阪急に乗り換えてひと駅なのであるが、まだ時間もあるし歩いて行くこととする。


今年の梅雨は空梅雨である。

今日も真夏を思わせるような暑さだったのであるが、さすがに6時を過ぎると過しやすくなった。


京都の町は若者の街だ。

身を寄せながら歩くアベックを羨ましく思いながら大丸前を通り過ぎる。

すると河原町方面から見知った顔がこちらに向かって歩いてくるのに驚いた。


そう、昨晩コンパに参加していたR大の将年である。

雪絵は入試の合格発表を見る瞬間以上に自分の心臓が高鳴っているのを感じずにはいられない・・・

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