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マリコン 番外編  作者: 星つむぎ


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1/1

前日譚

私は今日、土屋先生の補助として、法廷に来ていた。

昨日の見合いの件、向こうは乗り気だったし、理想を語る姿は立派に見えた。

だけど、私の話はみじんも聞いてくれていない人だった。そう感じて断った。

他人を自分の理想の枠の中に押し込めようとする印象の人だった。

その事を、土屋先生にぼやいたら……。


「ちょっ……。それ、俺も見たかった!」


爆笑だった。

従兄に話したらげんなりした顔で、『おふくろ、人を見る目がないからなぁ』だって。

そう思うなら止めてほしかった……。


「あ、柳田先生」

「あれ、西園寺さん。こんにちは」

「こんにちは。間宮さんも、お久しぶりです」

「こんにちは」


奥の廊下から曲がってきたのは、中学・高校と剣道場に通っていた関係で知り合った、柳田弁護士と事務員の間宮さん。

私が大学時代にストーカーに遭った際、いろいろと助けていただいたコンビだ。

ちなみに、柳田先生は土屋先生の大学時代の後輩に当たるらしい。

()()土屋先生の後輩。……柳田さんの方が大人な感じがするから、不思議だ。


「土屋先輩は?」

「今、公判前整理手続に行ってます。私は別件の資料持ちで着いてきただけなので」

「そうなんだ……。そう言えば、昨日お見合いだったんだって?」

「……誰情報ですか?」

「先輩」

「……あの歩くスピーカーめ」


小さくぼやくと、柳田さんが苦笑した。間宮さんはいつも通り、にこやかだ。


「どんな人だったのかな?」

「……どんなと言われると、少し悩みます。ただ、一緒に過ごすと息が詰まって、苦しくなりそうだなと感じました」

「なるほどね。高校時代の『自称彼氏』くんと似たタイプだったわけだ」

「はい。そうですね」


そう、私、過去に告白を受けたわけじゃないのに、なぜか『彼女』扱いされて振り回された過去がある。

特別好きだったわけでもなく、ただグループで遊んでいただけだったのに、いつの間にかそう扱われていた。


「その前にも、二人ほどお見合いを、叔母のセッティングでしたんですけど……個性的すぎて」

「個性的?」

「はい。一人目は落ち着いた声で、第一印象は悪くはなかったんですけど……」

「うん」

「話の三分の二の主語が『母』だったんです」

「それはキツイな。年齢は?」

「私より八つ上だったと思います。だから、三十四歳かな?」

「……な、なるほどね?」


さすがに柳田先生も、間宮さんも引いている。


「もう一人の方は、よく分からないレベルの専門用語でマシンガントークでした。最初は無口な方なのかなと思ってたんですけど……喋りだすと止まらないタイプだったみたいで。話している内容の十分の一も理解できませんでした」

「……それ、かなりコミュニケーション能力に問題がありそうだね?」

「はい。苦手なタイプです」


すでに間宮さんの表情は、例えるならチベットスナギツネみたいになっている。


「西園寺さん。ただいま~。あれ? 柳田くんと間宮女史。久しぶりだね~」

「ご無沙汰しています、先輩」

「ご無沙汰しています」

「土屋先生、お疲れ様です」


このあとの別件の資料が入ったフォルダを手渡しながら、土屋先生を睨みつける。


「え、何々? なんで翠ちゃん、俺のこと睨んでんの?!」

「ご自分の胸に手を当てて、よ~っく考えてください」

「先輩、本人の許可なくプライベート情報は話してはいけませんよ。僕らは法律家なんですから」

「あ、翠の見合いの話? どうせ柳田くんに声かけられて、最近どうよとか聞かれたら、自分から話すだろう?」

「それとこれとは違います!」


間宮さんは土屋先生が苦手だから、さっきから沈黙。柳田さんも、苦笑を浮かべている。

もうこのおっさん、本当に腹立たしいわ!


「次のお見合いってなったら、どうするよ、翠」

「行きたくないです」


土屋先生が軽口でとんでもない話を振ってくる。

死んでも行きたくないに決まってるのに!!


「西園寺さんって今いくつだっけ?」

「え? 二十六ですけど……」


急に柳田さんに年齢を聞かれたので答える。

……なぜだろう、嫌な予感がした。


「ああ、なら、うちの九条くんなんて、年齢的に良いかもね」

「お! 何々、柳田くんが仲人でも務めるの?」

「九条くんから、少し相談を受けていましてね。それで、西園寺さんさえ良ければ……と。一応、叔母さんあてに釣書送っておくね」

「……ええ~。要りませんよ~」


予感的中。最悪だ!

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