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無限農業と万能建築で最強国家造ります!愛する彼女と巨大モフモフ精霊獣の無血建国スローライフ  作者: 黒崎隼人


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第3話「白くて大きな家族の誕生」

 私の手が白い生き物の背中を撫で続ける間、カレンは私の背後から静かに近づき、鋭い金属の罠の構造を観察していた。

 生き物は私の手のひらから伝わる温もりに安心したのか、荒かった呼吸を少しずつ落ち着かせ、黒く潤んだ瞳で私をじっと見つめていた。


「ミユリ、この罠の仕掛けはそれほど複雑じゃないわ。私が両手で金属の枠を押し広げるから、その隙に足をそっと引き抜いてあげて」


 カレンは冷静な声で手順を指示し、罠の金属部分に手をかけた。

 私は生き物の顔を両手で優しく包み込み、恐怖を取り除くようにその滑らかな額に自分の額を寄せた。


「少しだけ痛いかもしれないけれど、すぐに終わるからね。頑張って」


 私のささやきに応えるように、生き物は短く小さな声で鳴いた。

 カレンが息を止め、腕の筋肉を緊張させて金属の枠を力強く左右に押し広げる。

 鈍い摩擦音が響き、刃の食い込みが緩んだ瞬間に、私は生き物の足を慎重に、しかし素早く罠から引き抜いた。

 生き物は痛みに一瞬だけ体を強張らせたが、すぐに安堵したように大きく息を吐き出し、私の膝の上にその重たくて温かい頭を乗せてきた。

 傷口からはまだ少し血が滲んでおり、痛々しい裂け目が見えていた。


『早く手当てをしてあげないと』


 私は焦る気持ちを抑え、自分の農業スキルが治療にも応用出来ないかと思考を巡らせた。

 目を閉じ、傷を癒やす成分を持った清潔な植物の葉と、清らかな水を含んだ茎を頭の中で強くイメージする。

 傷口の近くの土に手を触れると、指先から柔らかな光が漏れ出し、あっという間に肉厚で瑞々しい葉を持つ薬草が生い茂った。

 私はその葉を丁寧に摘み取り、手のひらで揉み込んで粘り気のある樹液を抽出した。

 その液体から漂うのは、鼻の奥をすっきりとさせるような清涼感のある爽やかな香りだった。


「これを塗るわね、少し冷たいかもしれないけれど」


 私が樹液を傷口に優しく塗り広げると、不思議なことに裂けていた皮膚がみるみるうちに塞がり、赤く染まっていた毛並みも元の純白の輝きを取り戻していった。

 痛みが完全に消え去ったことを理解したのか、生き物は立ち上がり、巨大な体で私にすり寄ってきた。

 その全身から発せられる太陽の光をたっぷりと吸い込んだような干し草の匂いと、極上の毛布のような手触りが私を包み込む。

 あまりの心地よさに、私は生き物の首の周りの豊かな毛の中に顔を埋めてしまった。


「ふふ、すっかりミユリにほだされたみたいね。私も撫でていいかしら」


 カレンが微笑みながら手を伸ばすと、生き物はカレンの匂いを嗅ぐように鼻先を近づけ、それから彼女の手のひらにも自分の頬を擦り付けた。


「本当に賢くて優しい子なのね。ねえミユリ、この子に名前をつけてあげない?」


 カレンの提案に、私は顔を上げて生き物の丸いフォルムを見つめ直した。

 白くて丸くて、どこか果実のような愛らしさを持っている。


「ポム……ポムっていうのはどうかしら」


 私がその名前を口にした瞬間、生き物は自分の新しい名前を理解したかのように、嬉しそうに耳をピクピクと動かし、短い尻尾を小刻みに振った。

 その反応があまりにも可愛らしくて、私とカレンは顔を見合わせて声を出して笑い合った。

 私たちはポムと一緒に、ゆっくりとした足取りで家へと戻ることにした。

 ポムは私たちの歩幅に合わせるように寄り添って歩き、時折その大きな鼻先で私の手をつんつんと突いては甘えてきた。

 家に着くと、カレンはすぐさま建築スキルを発動させ、家の横にポムが快適に眠れるような大きな木の小屋と、柔らかい干し草を敷き詰めた寝床をあっという間に作り上げた。

 私はポムのために、甘い果実や栄養満点の野菜を地面から次々と生み出し、大きな木製の器に山盛りにした。

 ポムは目を輝かせて器に顔を突っ込み、幸せそうな表情で野菜を咀嚼し始めた。

 その食べっぷりの良さと、口を動かすたびに揺れる丸い頬の動きを見ているだけで、私たちの心は底知れぬ温かい感情で満たされていった。

 夜になり、冷え込みが厳しくなってきた頃、私たちはポムを家の中へと招き入れた。

 大きな体は少し窮屈そうだったが、ポムは器用に体を丸めて寝台の足元に陣取った。

 私とカレンが寝台に入ると、ポムは自分の豊かな毛並みの一部を布団のように私たちの上にかけてくれた。

 その重みと、じんわりと伝わってくる生命の熱が、この上ない安心感を与えてくれる。


「ミユリ、私たち、この世界に来て本当によかったね。こんなに素敵な家族も出来たし」


 カレンが私の腰に腕を回し、耳元で愛に満ちた声を囁く。


「ええ、私も最高に幸せよ。カレンとポムがいれば、これからどんなことが起きても絶対に乗り越えていけるわ」


 私はカレンの腕の上に自分の手を重ね、ポムの柔らかな毛並みに触れながら目を閉じた。

 窓の外の荒野は暗闇に包まれていたが、私たちの小さな家の中だけは、お互いを想い合う深い愛情と、温かな希望の光で満ち溢れていた。

 明日からは、ポムと一緒にもっと遠くまで土地を開拓し、この荒れ果てた場所を緑豊かな楽園へと変えていこう。

 そんな決意を胸に抱きながら、私は大好きな人の匂いと極上の温もりに包まれて、穏やかな夢の世界へと旅立っていった。

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