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無限農業と万能建築で最強国家造ります!愛する彼女と巨大モフモフ精霊獣の無血建国スローライフ  作者: 黒崎隼人


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第12話「純白の城壁と戦意の喪失」

 東の空が白み始め、荒野の彼方から太陽が顔を出すと同時に、地面を揺るがすような低く重い地鳴りが私たちの街へと迫ってきた。

 私たちは街の最も高い場所にある防壁の上から、眼下に広がる荒野を見下ろしていた。

 土埃を高く舞い上げながら進軍してくるのは、太陽の光を反射して冷たく輝く金属の鎧に身を包んだ数百の兵士たちだった。

 彼らは槍や剣を掲げ、弓を構え、統制の取れた足取りで真っすぐにこの街を目指してきていた。

 強欲な領主の命令で、豊かな土地と作物を全て奪い尽くすために派遣された略奪の軍勢であることは疑いようがなかった。

 しかし、兵士たちの行軍は、私たちが作り上げた巨大な城壁の数百メートル手前で急激に速度を落とし、やがて完全に停止してしまった。

 彼らの顔には、明らかな戸惑いと混乱の色が浮かんでいるのが防壁の上からでもはっきりと見て取れた。

 彼らが持っていた地図や事前の情報では、ここは見渡す限りの荒野であり、わずかな難民たちが粗末な小屋を建てて身を寄せている程度の場所だったはずなのだ。

 それが一晩にして、高さ十メートルを超える純白の大理石の防壁がそびえ立ち、しかもその壁全体が、見たこともないほど巨大な野菜と極太のツルに覆い尽くされている。

 軍勢の先頭に立っていた、一際豪華な鎧を身につけた領主の代理である隊長が、苛立ちを隠せない様子で大声で怒鳴り散らした。


「ええい、ひるむな。ただの植物の壁だ、弓兵隊、火矢を放ってすべて燃やし尽くしてしまえ」


 隊長の命令に従い、後方の弓兵たちが一斉に弓を引き絞り、空に向かって無数の矢を放った。

 鋭い風切り音とともに放物線を描いた矢の雨が、私たちの緑の防壁に向かって降り注ぐ。

 しかし、矢が分厚い野菜の壁に到達した瞬間、鈍い音とともに驚くべき光景が広がった。

 巨大なトマトやカボチャのような野菜の果肉が、矢の鋭い切っ先をクッションのように柔らかく受け止め、深く沈み込ませて完全に威力を殺してしまったのだ。

 火矢の炎も、野菜から溢れ出した大量のみずみずしい果汁によって一瞬で鎮火され、何事もなかったかのように地面へとポロポロと落ちていった。

 空気に焦げた匂いではなく、果実の甘酸っぱい濃厚な香りが広がり、兵士たちは信じられないものを見るように呆然と立ち尽くした。


「ば、馬鹿な……ならば力ずくで門を破れ。歩兵隊、前進しろ」


 隊長が顔を真っ赤にして剣を振りかざし、歩兵たちに突撃を命じた。

 兵士たちは雄叫びを上げながら、唯一の入り口である巨大な木製の門を目指して一斉に駆け出した。

 しかし、彼らが門の前に到達した時、その足は再び完全に釘付けとなってしまった。

 門の前に立ちはだかっていたのは、武装した兵士でもなければ、恐ろしい魔物でもなかった。

 ポムを先頭にした数千のシロモチグマたちが、巨大な白い毛玉の壁となって門への道を完全に塞いでいたのだ。

 兵士たちは大福のように丸く巨大な生物の群れを見上げ、剣を構えたまま完全に思考を停止させていた。

 ポムは彼らに向かって威嚇するどころか、大きなあくびをして鋭い牙の欠片もないピンク色の口の中を見せ、その短い腕で器用に自分の顔を洗うような仕草を見せた。

 その一切の殺気を持たない圧倒的な愛らしさと、見上げるほどの巨大さのギャップに、兵士たちの間から戦意が急速に抜け落ちていくのが分かった。


「な、なんだこのふざけた生き物は。退け、切り刻まれる前に道を空けろ」


 一人の若い兵士が恐怖と混乱のあまり、ポムの巨大な腹に向かって剣を振り下ろした。

 しかし、鋭い刃が純白の毛並みに触れた瞬間、剣は極上の羽毛のような圧倒的な柔らかさに絡め取られ、全く傷をつけることなく滑り落ちてしまった。

 バランスを崩した若い兵士は、そのままポムの巨大な腹の中に顔から飛び込む形になってしまった。

 周囲の兵士たちが息を呑む中、若い兵士はポムの毛並みから顔を上げようとしなかった。

 いや、上げられなかったのだ。


「な、なんだこの信じられない柔らかさは……それに、お日様みたいなすごくいい匂いがする……」


 兵士の口から漏れたのは、恐怖の悲鳴ではなく、完全な恍惚のつぶやきだった。

 彼は武器を完全に手放し、両手でポムの毛並みを抱きしめ、頬を何度もすり寄せていた。

 その様子を見た他の兵士たちも、警戒心を失ったように次々とシロモチグマたちに近づき、恐る恐るその純白の毛並みに手を伸ばした。

 触れた瞬間、誰もがその極上の手触りと、内側から伝わる命の温もりに魅了され、次々と武器を地面に投げ捨てていった。

 荒野に金属の剣や槍が落ちる乾いた音が連続して響き渡り、数百人の武装した兵士たちは、あっという間に巨大なモフモフの海に飲み込まれてしまった。

 彼らもまた、強欲な領主の下で過酷な訓練と労働を強いられ、心身ともに限界まで疲弊していたのだ。

 シロモチグマたちの無垢な優しさと極上の癒やしは、彼らの乾ききった心に劇的な効果をもたらしていた。


「貴様ら、何をしている。さっさとその毛玉どもを退かして門を破らんか」


 後方でわめき散らしていた隊長も、やがて背後から近づいてきた巨大なシロモチグマに背中を優しく抱き込まれ、その圧倒的な温もりに押し潰されて言葉を失った。

 彼らはもう、誰一人として戦う意志を持っていなかった。

 しばらくして、完全に毒気を抜かれ、穏やかで平和な顔つきになった兵士たちは、武器を拾うこともせずに自分たちが来た道をゆっくりと引き返し始めた。

 一度も血を流すことなく、誰の命も奪うことなく、私たちは完全な勝利を収めたのだ。

 防壁の上で全てを見届けていた私は、安堵のあまり大きく息を吐き出し、カレンの方へ向き直った。


「やったわね、カレン。誰も傷つけずに、街を守り抜くことが出来たわ」


 カレンは輝くような極上の笑顔を浮かべ、私の体を力強く抱きしめてくれた。


「ミユリの優しさと、ポムたちの愛らしさがもたらした奇跡よ。これで、この街が誰にも侵されない真の安全な場所だということが証明されたわ」


 カレンの温かい体温と、甘く清潔な香りが私を包み込み、私は彼女の背中に腕を回してその幸せを全身で噛み締めた。

 眼下では、街の広場に集まっていた住人たちが、信じられない無血の勝利を目の当たりにして歓喜の声を上げていた。

 獣人もエルフも互いに抱き合い、喜びの涙を流しながら私たちの名前を呼んでいる。

 私はカレンとしっかりと手をつなぎ、朝の光に照らされた美しい緑と白の防壁の上から、満面の笑みで彼らに向かって大きく手を振り返したのだった。

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