第3話『甘い試練、友情のバランス』
教室に入った瞬間、陽菜は昨日よりも少しだけ落ち着いて息を吸った。
机の上には、今日の授業用に用意された色とりどりの材料が並ぶ。チョコレート、バター、砂糖、フルーツ……見ているだけでワクワクする。
「さあ、今日のテーマは“チームで作るデコレーションケーキ”!」
翔太先生が元気に声を響かせる。義兄だが、教室ではいつも厳しくも愛情深い指導者だ。
陽菜は少し緊張しながら、昨日と同じ席に座る。
隣には自由でふんわり男子・隼人、前列にはツッコミ界の女王・さつき、後ろには冷静ないつきがいる。
「えーっと、チーム分けは……陽菜ちゃんは隼人と一緒ね!」
さつきの厳しい声が響き、陽菜は思わず肩をすくめる。
「うわぁ……私、隼人と組むの……?」
「ふんわりパワー、存分に使うぞー!」隼人はにこにこ笑って、材料を手に取り始める。
「ふんわりすぎて崩しませんように……」
心の中でつぶやきながら、陽菜は小さな手でスポンジを押さえた。
授業開始とともに、教室は甘い香りと笑い声であふれる。
隼人は無邪気に材料を混ぜ、陽菜は焦りながらも手順を確認。
「陽菜ちゃん、ここはこうやって……ほら、ふんわり感出すんだよ!」
「わ、分かったけど……ふんわりってどうやって出すの……!」
そのとき、予想外のハプニングが起こる。
隼人が泡立て器を勢いよく振りすぎ、クリームが陽菜の制服に飛び散ったのだ。
「うわっ、クリームが……!」
「わはは、見て見て!ふんわり飛んだ~!」隼人は大笑い。
「もう!ふんわり飛ばすのはいいけど、私にかけるのはやめてー!」陽菜は大慌て。
さつきは眉間に皺を寄せつつ、冷静に指示を出す。
「落ち着いて、陽菜ちゃん!まずはクリームを均等に塗ること。焦ると台無しよ!」
いつきはそっと駆け寄り、陽菜にハンドタオルを手渡す。
「大丈夫、慌てずに。少しずつ整えれば、まだ間に合います」
陽菜は深呼吸し、手を止めずにクリームを丁寧に伸ばす。
隣で隼人も手を止め、二人で息を合わせてスポンジに塗り込む。
「……うまくいったかも……!」
小さな達成感に、陽菜は思わず笑顔になる。
完成したケーキを見て、さつきはにやりと微笑む。
「初めてにしては上出来ね。でも、次はもっとデコレーションのバランスを意識して」
翔太先生は目を細め、陽菜たちのケーキを褒める。
「甘さも見た目も合格!さあ、次は味の仕上げだ」
授業が終わる頃には、陽菜と仲間たちはすっかり打ち解け、笑い合いながら片付けをしていた。
「ふんわり男子、今日も元気だな……!」
「隼人……ありがとう、なんとか乗り切れたよ」
教室の外の花壇では、朝露に濡れた花々が光を反射し、甘い香りを運んでくる。
初めてのチームワークと小さなハプニング――陽菜にとって、今日の学びはただのスイーツ作り以上のものになった。
——甘くて、少し苦くて、でも仲間と分かち合う喜びは何にも代えがたい。
スイーツ学園の毎日は、今日も少しずつ、陽菜を成長させていく。




