勇者
俺こそが勇者、らしい。
もう何度も創作物で見飽きたものだが、俺は召喚された勇者らしい。
で、俺に何ができるというのだろう。当然何もできないのは分かってる。
だけどそんなことは王女には全く関係ないらしい
災厄が迫っていて、それを倒してほしいのだそうだ。
どう考えてもそんなの無理なのだけれど。
とはいえ、張りぼてでも勇者は勇者だ。
どれだけ張りぼてで、どれだけ酷かろうと、それでも戦わないといけない。
俺はそれがすごく嫌だったけど、帰るには王女の許可が必要なのだから、戦わないわけにはいかなかった。
戦わないという選択肢はない雰囲気だったからだ。
だから俺はここで戦うことになる。
「災厄はもうすぐそこにいます」
王女がそんなことを言う、
どうもそんなぎりぎりのタイミングで、起死回生の策として俺を召喚したらしい、なんと無駄なことをしているのだ彼女は。
俺はそんな状況の絶望感を感じながらも、もう戦場に出向くことにした。
このまま死のう。
そうすればいい。どうせ夢なんじゃないかこれ?
王女と共に戦場に出る。
化け物の軍勢と戦う人間軍たち。
魔法の炎が飛んでくるのを、こちらの魔法で迎撃する。だが、火の粉はこっちに降ってきて、俺の服に燃え移る。
「あっつつ! あぶな!」
慌てて火を消した。これは本物だ。まずい。
とはいえ、結局俺はそのまま災厄と戦いに行った。
思いっきり敵を無視して相手の親玉の方に駆け抜ける。
「人間がいるぞ! 殺せ!」
怖いことが聞こえるが、完全無視。とにかく親玉だ。
殆どの敵は人間軍の方に夢中で、俺の存在は無視しているようだった。こんなのを気にしていられないのかもしれない。
そうしてようやく敵の親玉のところに行く。
そこには巨大な椅子に座ったでかい化け物がいた。
こんな戦場のど真ん中にわざわざこんな椅子を持ってきたのかよ。腰でも痛いのか?
俺はそう思いながらも突撃する。とにかく叫べ叫べ、後は野となれ山となれ!
「お命頂戴ーーーーーーー!!!」
剣を振りかざし、突っ込んでいく。
呆然とする化け物たち。親玉も不意を突かれたのか、目を見開いて俺を見てとまっている。ハイさよなら。
俺は思いっきり剣を親玉の胸元に突き刺す。
剣が肉をえぐり、できるだけ深く刺さったうえで止まった。
感触がきもいきもい。叫び声がうるさい。周りも大音量で叫んでいる。
ああもう知るか知るか。
俺はそのままダッシュで人間軍の方に走っていく。
「うおーーーーー」
後ろから敵討ちの化け物たち。沢山の犬を引き連れる飼い主のようだ。
俺はそのまま人間軍の方に行く。
「敵の突撃だーーーー! まて! 戦闘は人間だ!」
なんか妙に冷静な人の叫びで俺は見逃される。
そしてそのまま王女の元に戻る。
「親玉を倒しました。返してください」
「え?」
王女が呆然としていると。
「敵が引き返していくぞ!!!」
そんな声が聞こえてきた。
そして王女は驚いたまま、とりあえず俺を部屋に連れていって、いったん休んでくださいという。
俺はそのままその部屋で休んでいた。
そしてやがて王女が戻ってきた。
「ありがとうございます! 本当に本当に感謝します!」
「いえ。俺もよくわからないんですよ。鍛冶場の馬鹿力ってやつですね」
「ところで、あのー」
王女が申し訳なさそうに言う。
「実は元の世界に戻れません。ごめんなさい!」
「えええええええ」
俺は驚いたまま。硬直し、終わった。
その後は勇者として崇められながらも、俺自身はこの国で生涯を終えることになった。
勇者として。
なんでやねん。
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