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ゴーストテレフォン

作者: アディ

すごくむかーし書いた作品です。


もう僕本人もよく覚えてません(オイ



生暖かい目で見ていただけると幸いです。

プロローグ


 僕には女の子の幼馴染がいた。


 その頃の僕達に恋愛感情なんてものは無かったと思う。

 でも、いなくなってから気がついたんだ。

 絶対に触れることができない、電話だけの会話・・・・・・。

 愛に気づいた二人にこんなにも辛い物はなかった。

 僕と彼女には越えられない壁があった。


 その壁の名前は、【生と死】


 そう。彼女は死んでいた。













見えない彼女


 はじめは信じられなかったものさ。

 それは僕が6歳の頃・・・・・・・・突然の知らせだった。


 紅実が死んだ。


 僕と紅実は絵に描くような、今思うと恥ずかしい『大きくなったら秋斗のお嫁さんになるの』というような仲だったんだ。

 その紅実が死んでしまったなんて信じられなかった。

 子供ながらに考えたさ。もしかしてドッキリじゃないかとか、これは夢だ!とか・・・・・。


 でも、僕は見てしまったんだ。

 病室で白い布を被った、その白い布のような顔の・・・・・紅実を・・・・・・・・。

 その時確信した。

 彼女は・・・・紅実は死んだのだと。


 その日の夜、まったく寝付くことのできない僕は、ひっそりと起きだしてリビングのソファに座ってため息をついた。

 その時初めて実感したんだ。紅実の死を・・・・・・。

 あぁ泣いたさ。人に見せられない様な顔でワンワン泣いたよ。

 そして、ある出来事が起きた。


 PRRRRRRRR

 電話の音だ。人が死んだ夜遅くに一人で泣いてていきなり電話がなったらそりゃびびるさ。

 番号は【93】電話番号にはありえない数字だ。

 でも、僕は出た。なぜか出なきゃならない気がしたから。

「・・・・もしもし・・・・・?」

『・・・・・秋斗、泣いちゃ嫌だよ。私なら秋斗の後ろにいるよ。』

 その声は・・・・・・紅実の声だった。

 僕は度肝を抜かれたね。でも後ろを向いてもだれもいなかった。

「紅実なの?僕には見えないよ。」

『私だよ・・・・・そっかぁ見えないかぁ。』

 僕はこのとき幽霊と話をした。

「ねぇ紅実、なんで死んじゃったの?嫌だよ、結婚するって言ったじゃないか。」

『秋斗は、私にいてほしい?』

「当たり前じゃないか!」

 僕にとって紅実はかけがえのない人だった。

『わかったよ。私、ずっと秋斗のそばにいるから。』

「えっ?」


 こうして僕は紅実に憑かれた。



 それから10年が経った。今、僕の手には古びたケータイがあり、そのケータイにはありえない人の電話番号が登録されていた。

 【紅実:番号93】

 これは、僕にしか使えない秘密の番号。死者への電話番号だ。

 PRRRRRR

 紅実から電話だ。彼女は、ポルターガイストや呪ったりなんかができない代わりに、こうして音の出る機械をハックして、こちらに気持ちを伝える事ができる。

「もしもし?」

『あっもしもし?これからどうするの?』

「どうするって、いつものアレだろ?」

 いつものアレとは、僕が電話を片手に話しながら町中を歩き回るのだ。

 これが、僕らなりのデート。

『そうじゃなくて、どこ行くの?』

 いくあては、ない。

「また、町でもブラブラしようか。」

『うん。わかったよ。』

 そうして僕達は歩き出した。


『ねぇ』

「ん?」

『右の店入らない?』

 それは一人で入るには少し勇気がいるような、少ししゃれた店だった。

「いいよ、入ろう。」

 でも僕は一人じゃないから、何も気にする必要はない。

「いらっしゃいませ。ご注文は何に致しますか?」

 メニューを指差して答える。

「アイスコーヒーと、このバニラアイスください。」

「かしこまりました。」

 店員が奥へ入っていく。

『ねぇ、秋斗ってば甘いの苦手じゃなかったっけ?』

「アイスは紅実へだよ。」

『!?』

 冗談でお供え物とか言おうと思ったけど、そんな感じじゃなさそうだ。

『マジで?』

「マジ。ほら、来たよ。」

 受け取ったアイスを向かい側へ押す。

「はい、どーぞ。」

『・・・・・』

 まずい、少し怒らせたか?

『ありがとぉ・・・・・・がんばって食べる!』

「食えんの!?」

『根性!』

 幽霊に理屈は通らない。

 その証拠にアイスがものすごいペースで溶けていく。

「えっ?今食ってんの?」

『おいすぃ~あぁ久々の甘みだぁ~』

 本当に食べたのか。

「やったじゃん!これからは一緒にいろいろ食べれるよ!」

『そうだね!ん、ごちそうさま。』

 少し興味本意で溶けたアイスを口に含んでみた。

『あぁー間接キスだー』

 そういえばそうだけど、もっと気になることがある。

「味がないよ!すげー本当に食べたんだー。」

『でしょでしょ?私すげーですよ!』

「すげーすげー!」

 と、これは周りから見ると僕が一人で大騒ぎしてるようにしか見えないわけで、なんだかイタイ視線を感じるわけで・・・・・・・。


 その後、僕はアイスコーヒーを一気に飲み干して、店を出た。

 外はもう暗かった。

「帰ろっか。」

『うん。』

 僕達は歩き始めた。

 

 いつも歩く横断歩道、長い信号に待たされて、僕は前に足を踏み出した。

『あぶない!』

 横でまぶしく光るライト!鳴り響くクラクション!僕は足がすくんで動けなかった。

 轢かれる!そう思った瞬間、僕の体は何かに突き飛ばされて衝突を避けた。

 通り過ぎていく車、そして轢かれるケータイ。

 ケータイがぼろぼろになり、消えかける紅実との通信。

『も・・・・う・・・バチ・・・・あぶ・・・な・・・・ブブブ・・いじゃ・・・・・ブブ・・ない・・・・・・・の』

 ぶつ

 ケータイの通信が途絶えた・・・・・・。

 僕は、僕を押してくれた亡き恋人に激しく感謝した。


 1週間後・・・・・


 僕は新しいケータイを買った。これを買うまでなんと寂しかったことか・・・・。

 それも今日でおさらばさ。

 PRRRRRRR

 おっ、さっそく電話だ。

「ん?テレビ電話?」

 僕のケータイは自慢じゃないが買ったばかりの最新機種だ。このために僕のコツコツ貯めたお金はパーになったんだから。

 そしてその機能にはテレビ電話があった。

『もしもし?』

 

 映った物は僕と、横にいる成長した彼女の姿だった。




 僕の彼女は幽霊だ。だから誰にも奪えない。







                             END


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