星は僕を見ていない
「僕が星を作った?」
僕は事実が飲み込めず唖然とブレスレットを見ていた。
だって僕は前世があって、そこから星に生まれ変わって・・星なんて作って。え?
(じゃ、じゃあ僕だけ異質だったのはそのせい?)
落ちこぼれなんて今までの星でいなかったと誰かが言っていた。
ーーーそれに僕が星を作ったとなればそのことに理由つく。
星は影を思って作られたはずだから完璧だ。だけど僕は完璧じゃない。僕だけ落ちこぼれだったのも。だけどそうしたら。
「幸せじゃなかったのは僕のーー」
「違う!!っ」
「ソ、ソアン?」
「違う。リボン様は確かに言ったんだ。「たのむ」って。あいつはティーを追い詰めるために行ったわけじゃないはずだ!!」
そうソアンは僕の両肩を手で掴んで叫んだ。
でも頼むって?僕は何をすればいいの?償いだってしなきゃいけないけどどうすればいいのか分からない。
「じゃあ僕はどうすればいいの・・・星達の人生を狂わせたのは僕だ。僕が影に会いたいなんて願ったせいで影の模倣が生まれたんだ!僕のせいだ・・・」
どんなにソアンが励ましてくれても、僕のせいで星たちが縛られてる、幸せを知らないのだと考えたら涙がどんどん溢れてきてしまう。
「ティルディー様!では話し合いましょうよ!リボン様にだって言っていたではないですか。話し合おうって。なら星達とも話しましょう・・。星たちの想いをティルディー様は知らないじゃないですか」
「そうですよ。星たちが不幸か不幸じゃないかは星たちが決めることです。だって星達にも感情はあるでしょう?リボン様が魔王から生み出されて感情があるように・・」
・・話・・。そうだ、僕はリボン様と話し合おうと言った。なら僕だって星達と話すべきではないのか?勝手に相手を不幸だと決めつけるなんて自分の価値観を押し付けているようなものだ。
なら星達と話し合って、そのうえで僕は・・
「そう・・だね。じゃあ僕は星に会いに・・・行く。・・・ついてきてくれる?」
僕は涙を拭い三人を見た。すると三人は微笑んで頷いた。
「「「もちろん」」」
ーーーー三日後。
僕達は馬車を使い西の国から星の丘へとやって来た。新月の夜は近かったようで、星の丘に近い村へ着いた頃に新月の夜になっていた、
「ここが星の丘・・何もないんですね」
「そうだね・・逆に何もないからこそ星はここへ降りてくることができるんだ」
僕はそう言って夜空を見上げた。日が落ちたとともに星はどんどん星の丘へ舞い降りてきた。
星達は降りてくるなり舞を始めた。ちょうど僕達は星の丘の真ん中付近にいたため、星に囲まれている状態だ。
「・・・っ・・・」
いざ星達に向けて話そうとすると言葉が出ない。服の裾を掴んで地面を見つめてしまう。
そんな僕を見てかソアン達が僕の背中に手を置いた。
なんだ?と思い振り返れば微笑んでいる。まるで「頑張れ」と言われているような感じだ。
少しの間を置いた後僕は星たちに向かって叫んだ。
「君たちに聞いてほしいことがあるんんだ!」
多分今までで出したことのないような声が出た気がする。ちょっとびっくりしたけど気にしない。だって今は僕の声が星達に届けばいいから。
だが星達は聞いているのか聞いていないのか分からない。ただ淡々と舞を踊るだけ。
それでも僕は諦めずに大声で叫んだ。
「どうしても君たちに話さなければいけないことなんだ!少しだけでもいいから僕の言葉を聞いて・・ください!!」
どんなに言っても星達は舞を止めなかったが僕は話し始めた。
僕の前世のこと、僕が星を作って星達を生み出したこと。僕のことを全て話した。
途中言葉に詰まり、全て言い終わるのに時間を要したが構わない。僕なりの言葉で気持ちが伝わればいいから。
「・・・ということなんだ。・・だから僕は君たちに何かをしたい。僕のせいで君たちは・・」
『そんなことないよ』
「えっ」
今まで舞を舞っていた星達は舞を止め僕の方を見ていた。いつから舞を止めていたのかは分からなかったが聞いていてくれたという事実が嬉しかった。
『私たちは幸せを知っているよ。人のために願いを叶えるのが幸せなんだ』
「それで消えちゃっても!?・・それは幸せなの・・・?」
『そうだよ。だって誰かの記憶に残って消えるんだもん幸せだよ』
誰かの記憶に残って消える・・想いは生きているということを言いたいんだろうか。・・それは確かにそうだが。
「でも・・自分の幸せを知らないのに・・人の幸せを考えられるの?」
『・・自分の幸せというのがどういう物かは分からないけど、でも・・誰かを幸せにしたいという気持ちは考えられるよ。だってそれだけで心が嬉しくなるもん』
・・・じゃあ星達は幸せを知っていたのだろうか。でも・・なんで僕は空では感じなかったのだろう。地上の方がずっと幸せに感じていた・・。
この幸せを星達にも知ってほしいと思ったけど。大きなお世話かもしれない。
ーーだけど・・・それでも僕は僕なりの幸せを星達に伝えたい。だから・・
「僕が君たちにたくさんの幸せを教えてあげる!」
幸せの形は人それぞれかもしれない。そりゃ人のために尽くすことが幸せの一つかもしれない。
もちろん僕のエゴを押し付けるためにそう言ったわけじゃない。ただ選択肢の一つとして・・僕が貰った幸せを教えたいと思った。
そうして自分の幸せを知ったうえで、星たちが自らの幸せを決めてほしい。
僕がそうしたように・・・。
ーーーーーーーー
~五年後~
「ここへ毎月通うようになってもう五年か・・」
「早いよねぇ」
僕とソアンは夜空を見上げながらしみじみと言った。あの旅からもう五年が経つ。
旅はもう解散していて、キラとスフィーニアはルチャードが爵位を継いだと同時にトバッシュ家へまた勤めることとなった。
僕とソアンはトバッシュ領に家を建ててそこで暮らしている。
なぜトバッシュ領なのかというと、星の丘へ通うのが楽だから。本当はソアンの故郷でもいいかなだと思ったけど毎月通うには流石に遠いということなのでここになった。
毎月新月の日になると僕らはこうして星の丘へ来る。
最初のうちはあまり話せなかったけれど最近では星達と話せるようになって僕も嬉しい。
(今日は星達と何を話・・。・・?)
今何かが聞こえたような。ソアンが声をかけたのだろうか。
「ソアン、僕に話しかけた?」
「いや?俺は話しかけてないが」
じゃあ空耳?でもしっかりと聞こえた気がする。僕は声の主を探すべく目を閉じ音を聞くことに集中した。
『ーぇ』
「やっぱり聞こえる。どこにいるの?」
小さな人の声。近くからする気がするけど、この周りは木しかな・・
「だあれ?」
誰もいないと思ったが、金髪で桃色の眼をした小さな女の子がこちらを見ている。見たところ四歳程度だろうか。いやもう少し幼い・・?
・・・ただの幼女なはずなのに目が離せない。似ている気がする・・・ティルディーに。
ううん似てるんじゃない。この子は!
僕は幼女を見るなり涙が溢れてきた。ソアンはそんな僕をみるなり、あたふたとしている。
「君の・・っ名前は?」
「・・なまえ?」
「そう名前。僕はティー。でこっちはソアン。君は?」
「・・名前ないの・・」
そうポツリと呟いた幼女の右手には何やら紙が握られている。「読んでもいい?」と聞くと無言で紙を渡されたので、僕は丸めてあった紙を広げた。
『この子を育てて』
と書いてある。・・この子は捨て子なのだろうか。
「・・ねぇ君僕と一緒に来る?いや・・その前に」
僕は幼女の両手を握って笑った。ちゃんと笑えているかわからない。
だって涙がどんどんと溢れてくるんだもん。
「ねぇ今日から君の名前はティルディーだよ」
「ティルディー」
「そうティルディー。ねぇ僕と友達になってくれませんか?」
ちゃんと見つけられたよティルディー。もうあれから五年の月日が経っていたけどちゃんと見つけられた。
そして影もまた会えて嬉しいよ。また君とこうして話せるなんて思わなかったから。
「いいよ。ティー!おともだちになってあげる!」
そうティルディーは笑いながら言った。
(そうやって笑う君の顔をずっと見ていたいよ)
ティルディー見つけたよ。お帰り、ティルディー。
影、君がティルディーとして生まれ変わってるとは想像もしていなかったけど今世は絶対に僕のこと忘れさせてなんてあげないからね。
僕はティルディーの体を抱きかかえソアンの元へと歩く。もう一人じゃないよ。僕はもう空からは見守られない。だけどこの地で守ってくれる人がいるから僕は大丈夫。
ずっとこのような平和は続かないかもしれない。
何もかも奪われ、世界を憎み幸せな人生など歩めないかもしれない。
道を踏み外しても叱ってくれる人がいないかもしれない。
時に大事な人と別れなければいけないかもしれない。
それは一生の別れかもしれないし、ひとときの別れかもしれない。
明日には親が死んでいて、友達がいなくなっていて独りぼっちになってしまうこともあるかもしれない。
もう話せないならもっと話しとけばよかった。
あの時ちゃんと話していれば。
そう後悔することは誰にでもある。
僕だってそうだ。もう少し話しておけば未来は違ったかもしれない。
今頃ずっと二人で笑い合えた日々があったのかもしれない。
だけど後悔したって過去には帰れない。
なら今隣にいる人には後悔しないようにしよう。
同じ過ちを繰り返さないために。
せめて今隣にいる人だけは笑顔にできるように。
たくさんの愛情と幸せをあげられるように。
【Mut ist in deinem Herzen
Seien Sie mutig und sagen Sie Ihre Meinung
Das würde die Welt ein kleinesbisschen verändern】
【勇気は心の中にある
勇気を出して少しだけ話してみよう
そうすれば世界は少しだけ変わる】
「行こっかソアン、ティルディー」
僕はそう言ってソアンとティルディーに笑いかけた。
『星は僕を見ていない』 ~fin~
『星は僕を見ていない』完結です。ここまで読んでくれた皆様本当にありがとございました。感謝してもしきれません。
ブックマークや評価をつけてくれた方々もありがとうございました!(励みになってます!)(T . T)
改めまして星は僕をみていないを読んでくれた皆様ありがとうございました!!




