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星は僕を見ていない  作者: 雪道 蒼細
十章 最後の戦い編
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最後の戦い part1

 「へぇー生きているんですか。意外ですね。前のあなた達ならこれで死んでいたと思いますが・・」

 

 感情がこもっていない声でリボン様はそう言った。冷たい声、本当に前に会ったトナカイのような魔物と同じ魔物なのか疑いたくなる。


 「お前・・前会ったときのトナカイの魔物と同じ魔物だよな?いや人型だから魔人が?」

 「そうですが。まぁ呼び名はどちらでもいですよ」

 「ならジークはどうした?お前を友達と言っていたジークは生きているんだよな?」


 まだ確定はしていないが元不滅の六魔人の一人であっただろうリボン様だと分かっていたらあの時戦っていた。安全で人を襲わないと判断したから倒さなかったんだ。

 もし被害がもう出ていたら俺のあの時の判断は・・


 「ジーク・・?あぁあの人間か。生きているよ・・別に興味も無いからな。・・これで雑談は終わりか?終わりならその娘をこちらによこせ」


 ジークが安全なら良かったが。・・そうかこいつにはティルディーしか映っていないんだな。獲物であるティルディーしか見ていない。


 「嫌ですよ。あんたなんかにティルディー様を渡したら、ティルディー様がどんな目にあうか分かりませんから」


 そう言って先程までリボン様を見て震えていたスフィーニアは立ち上がり、リボン様に薙刀を向けている。俺もいつ戦闘が始まってもいいように剣を構える。

 俺の斜め後ろにいるキラやティルディーも各々武器を構えリボン様を見ている。

 目の前にいる敵が使う攻撃は多分魔法だ。魔術と違って詠唱が無いから戦いの始まりは突然なはず。目を離したらすぐに殺られてしまうだろう。

 

 「・・・そうか。なら」


 ーー来る!ーーと思った時にはもう遅く、目の前には無数の火の玉が向かってきていた。ティルディーが咄嗟に水の結界を張るが火の玉が負けじと水の結界を通り抜けようとしていた。

 (魔法陣を使ってなくてこの威力・・・!?)


 俺はリボン様が出した魔法を見て固まっていた。だが瞬時に正気に戻り、俺はティルディーの作った結界の外に出てリボン様の腕を狙い剣を振るった。

 

 「ーーっぐぐ・・・」


 体に強化魔法でも張っているのか剣が通らない。リボン様も俺が切れないことを見越してか、攻撃をティルディーに集中させている。

 俺もこれ以上は無駄だと思い少しだけ入った剣を抜こうとした。だが・・・


 「!?抜けない・・このっ!」


 どんなに力を入れてもびくともしない。なんだこれ・・。


 「ソアンさん!左!」


 剣を抜くのに集中しすぎていたせいで周りを見れていなかった。俺はキラの声で剣から目を離し、キラが叫んだとおりに左を見る。

 左には風の刃が俺に向かって突き進んでいた。

 (まずい・・避けられるか?)

 助けを求めようとしたが、三人ともリボン様の攻撃を防ぐの忙しく警告するのが精一杯と言ったところだ。

 視界の端でキラが走り出したような気がするが恐らく間に合わない。俺は一か八か剣を踏み台にし真上へ飛んだ。

 (あの風の刃に追跡機能が無ければ大丈夫なはず)

 

 ビュッビュッ


 天はこちらに味方をしたようで風はそのままリボン様の肉体にかすれた後消えて行った。

 俺はそのまま落ちる力を利用しリボン様の頭上を蹴り飛ばした後、剣を回収した。

 方向が悪くて抜けなかったのか原因は分からないが、今回は案外簡単に抜けた。

 

 さすがに一旦体勢を整えたいと思い俺は一旦下がる。


 「あなたなんかにティルディー様は渡しません!」


 俺が下がる少し前、キラはそう言いながらリボン様に攻撃していた。短剣を何個も投げているが、結界を張っているのかリボン様に当たらない。

 キラの短剣を避けている辺り毒を警戒しているのだろうか。


 ーーーーーーーーーー


 (結界はもう壊れる・・また同じように結界を張ってもいいけどそうしたら攻撃ができない)

 リボン様の方が確実に僕達より実力が上だ。四人で戦って勝てるかも分からない。

 (普通に戦って勝てないなら、話で気を逸らせないかな・・)

 どうしようと悩むが、悩む時間も無い。僕は結界が壊れると同時にリボン様へ叫んだ。


 「ねぇ!君は僕が目的なんだよね・・魔王を復活させるために。復活させてどうするの?また世界征服でもするつもり!?」

 「そんなことはしないさ。ただ私はもう一度魔王様と話がしたいだけさ。・・数秒でもいいんだ話をしたいんだ」


 リボン様が仕掛けていた攻撃が止まり、そう彼は言った。

 (死んだ誰かと話がしたい・・僕もそれは思ったことがある)

 少しだけでもいいからティルディーとまた話がしたい。ソアンやキラ・スフィーニアだって死んだ家族とまた話したいだろう。

 だけど僕は知っている。死んだ人はもう一生話すことはないのだと。どんなに泣いて喚いても死んだら終わり。話すことなんて絶対にできない。

 東の王家が絡んだ事件の時に現れた魔物だって、シリルの妹ルビアの体を使って動いてはいたけど所詮あれは作り物。本物のルビアはもうこの世に存在していない。

 それと同様リボン様が僕の魂を使って魔王を復活させたとしてもそれはかつてリボン様が慕っていた魔王ではないだろう。

 魔王に似た紛い物。

 そんな人物に会ってリボン様の目的が果たされることはあるのだろうか・・


 「・・話をしたって、それはもう魔王じゃないよ・・魔王に似た別物だ」

 「そんなことは分かっている!だが魔王様なら何でもいい!私の知っている魔王様はいつも誰かを探していた。所詮私は配下だ・・魔王様から作られた存在、駒なことは分かっている。だが・・せめて私と話しているときくらいは・・その瞳に私を映してほしかった・・・。それに魔王様に会ったら言いたいことがるんだ」

 「・・・」

 「だから魔王様とまた話せるならいいんだ!そのためならどんな犠牲を払ったって構わない。魔王様のいない世界など存在しなくていいんだ!」


 そうリボン様が言うと氷の柱が僕を囲う。

 氷に覆われる前に火炎華を僕は繰り出した。


 「火炎華!」


 魔力消費は多いが、敵にダメージを負わせられる。

 今は戦いよりもリボン様の話が聞きたい。だから少しでも動きを止められればそれでいい。


 火炎華を繰り出すと氷の柱は全て溶け、リボン様は火傷を負った。

 火傷を治すためか一瞬動きが止まったので、スフィーニアが薙刀でリボン様の背中を切った。


 「ちょっとだけ!話を聞いてリボン様・・」

 「あんたと話すことはないはずだが」


 そう言ってリボン様は土の弾丸を僕達に向かって放つ。


 「無いかもしれない!だけど僕は話したい・・話すことは大事なことなんだ!相手のことを思いすぎて話さなかったらたくさん僕はすれ違った。だけど話すことで分かり合えたこともあるんだ!」


 僕は弾丸を水の魔法で包み威力を落としながらそう叫んだ。

 ーーそう。話すことで僕は相手のことをもっと知れた。ティルディーのことは全て分かってるつもりだったけど全然分かってなかった。

 ルチャードだってそうだ。僕は最初の印象が邪魔をしてただ暴力を振るう人だと思ってた。だけど違った・・。

 ソアンも友人のリオネルや村長と話すことで得たことがあったはずだ。

 人はエスパーじゃないから心の中なんて分かんなくて、想像することでしか相手を思いやることができない。それは時に人を救うこともあるし人を傷つけることもある、

 だから人は話さなくてはいけない。どんなに相手が憎くても嫌いでも好きでも普通でも・・話さなくちゃ分からないんだ。

 

 「少しだけでいいから話してよ!君のことを・・。・・!」

 「・・・・」

 「魔王のことだっていい・・なんだっていい・・教えて!」


 僕は杖を投げ捨てリボン様に近づいた。


 「痛っ・・・」


 氷の針が頬をかすめた、だが僕は歩み寄るのを止めない。

 僕は何も考えなしに戦いたいわけじゃない。君を知ってから自分の想いを貫くために戦いたいんだ。


 「ティルディー様!だめです!戦わないのに近づいては!」

 

 スフィーニアが攻撃を止めこちらに近づこうとしたが僕は首を横に振り止めさせた。

 どんなに傷ついても話ができればいい・・・君を知れればいい。


 僕はゆっくりとリボン様に近づき目の前に立った。ソアン達は攻撃を止め僕とリボン様を見ている。


 「・・・私の何を知りたいというんだ。ただ作られただけの私を・・」

 「ただ作られたと言っても君は自分の意思がある想いがある・・ただの作られた駒なんかじゃないよ」

 「だが・・私は魔王様が世界を支配するために作られた物にすぎない。駒が自我を持ってみろ邪魔でしょうがないだろ・・。だから私は魔王様に見てもらいたくても何も言わなかった。私が一番怖かったのは捨てられることだったから」


 リボン様は下を向きながらぽつぽつとそう言った。


 「そう・・」

 「だから・・・だから私は魔王様が生きるのを諦められた時ショックだったんだ。魔王様が生きるのを止めたら私たちの存在はどうなるのかと・・魔王様が支配するために生まれた私・・なのに魔王様がそれを諦められたら私の存在意義などない!だから・・だから魔王様にもう一度会って言いたかったんだ「生きるのを諦めないでください」と。だからこの言葉を言えるなら魔王様の紛い物だってなんだっていい。これは私のエゴなんだ・・私が存在するため生きてほしいんだ。・・・だから・・お前の魂が必要だ。魔王様を復活させるには・・」


 これが・・リボン様の想いなのだろうか・・。

 主が生きるのを諦めたらそれに向かって突き進んでいた人たちの存在意義は否定される。だって最初に旗を掲げた人が旗を手放したのだから。

 ・・なら魔王も・・・影も同じだったのだろうか。影は記憶が無くなって僕を忘れた。今まで僕を守ってきた影にとっては主がいなくなったと同じだろう。

 今まで守るべき何かがあっただから想いを貫き通すことができた。

 だけど守るべき何かを失ったら?急に消えたら自分の存在意義何て分からなくなる。

 ・・・もしかしたらその想いが配下として作り出した魔物や魔人にも移ったのだろうか・・。

 だって影なら自我が無い魔物や魔人を作るだろうに、リボン様に自我があるということはそういうことだろう。

 ーー巡り巡って僕の想いが回って来たのかもしれない。

 

 だからこれは自分の想いとの戦いなのかもしれない・・。

 

 

 

 

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