誰かの願い part9
俺は本物のティルディーに命を救われた日からティーを絶対に守る。と決めていた。だからティーの・・ティルディーの力になりたかった。でも・・俺は魔術も使えない。
学校だってさぼってばっかで頭もあまり良くない。剣だって別に上級冒険者ってだけで国一強いわけでもない。ティルディーに勝てるところなんてほぼない・・
だけどそれでも俺はティルディーを守りたいんだ。守られてばっかじゃ嫌だ。それじゃあ対等でもない。
俺は死に急いでるわけでもない。弱い人間は守られてればいい。そりゃそうだ。戦いの場にいたら迷惑だと誰でもわかる。
だから俺は剣にしがみついている。魔術じゃ魔力封じでも使わない限り魔術師に勝てる可能性なんて少ない。
勝てないってわかってる。だけどティルディーの力になるためには仕方がない!俺はティルディーを守るために戦うんだ!だからこんなところで死ねない。
それが俺なりの信念だ。絶対に曲げたりなんてしない。だから・・
「こんな炎にやられるかよっ!!!」
俺は剣で青い炎の薔薇を真っ二つに切った。ーー炎だ切ったところでどうということもないけれど・・俺は炎を切ったと同時に吸収魔術を使った。吸収魔術は魔術師の中では基礎の基礎であまり使われないけれど、基礎の基礎しか使えない俺には丁度いい。
それにこの魔術は接近戦をする戦士にとっては相性がいい。炎を剣で吸収するんだ
「はぁぁぁぁぁ!!」
「!何・・」
俺は剣に炎を纏った。吸収するだけで炎が剣につくとは思っていなかったけど、これは好都合だ。俺は魔人に向かって斬撃を入れる。俺は俺なりの強さを貫く!だから・・
「さっさとくたばれ魔人野郎!」
俺は男の腹を手で殴り、男の後ろにある木へ叩きつけた。
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「さて・・使用人さん。悪いけどフィルア嬢はあんたには渡せないよ!」
僕は杖を敵に向ける。スフィーニアに安心していいよって言ったけど正直言って立っているのも辛い。頭痛だって治ったわけじゃない。
だけど気絶している間。夢を見たんだ。起きてから数分経って、全ての内容は思い出せないけど。でも夢の中の僕は守られてばっかりで。欲しいものなんて離れて行った。
夢の中の僕はバカで寂しそうだった。僕はあの子を助けられなかったんだ。ならせめて、今の僕は救いたい!
守られるだけじゃ奪われていくだけ!
夢の僕を繰り返しちゃダメだ!僕は空中に花を数個出現させ、男に向かって爆発させた。
その間にスフィーニアが薙刀を男に向かって振るう。爆煙のせいで男とスフィーニアが見えない。だが、ここで爆炎を消し去ってしまえば好機も好機ではなくなる!
僕は立て続けで雷を男に向かって打つ。さっきの花の爆弾には魔法を集中させて当てることのできる機能が入っている。スフィーニアには水の結界を薄く張っていたのできっと対象外のはず。だから。
「はぁっ!!」
スフィーニアは雷で緩んだところを突き刺していた。
「グハッ。ーーお嬢様だけいればいいんだ。金のためか?だが俺を殺せばフィルア家は潰される。金なんて手に入んねぇぜ。なら俺にお嬢様を渡したほうがいいんじゃないのか。旦那様には俺から上手く言っといてやるよ」
「その言葉を誰が信じるんですか?それにあなたはどっちの味方なの?敵じゃないんですか?」
スフィーニアは薙刀の刃を男に向けそう言った。目の前にいる男が敵なのか敵ではないのか・・味方だった場合、交渉して早くこの戦いを終わらせたい。僕も長くは戦えないし、ルチャードを早く病院に連れていきたい。
スフィーニアのおかげで応急処置はされているけど、あくまでも応急処置だ。このまま放置していたら命に関わる。僕が回復系の魔法専門だったらどうにかなったかもしれないけど、生憎、回復魔法は専門じゃない。
僕の回復魔法じゃ手遅れになる。だから早く戦いを終わらしてこの空間から出なきゃいけないのに。
「・・・俺は敵でも味方でもない。ただお嬢様に恩がある人間の一人さ!」
「グ・・なら・・なんでフィルア嬢を連れてくんですか?なんでフィルア嬢は夜にここへ来るんですか!?何か知ってるんでしょ!知ってるなら話してください!
男が剣をもう一本取り出しスフィーニアに切りかかった。僕は男が動いたと同時に男の足元を凍らせた。だけど一瞬で切られ氷は砕けてしまった。
やっぱり魔法の威力が弱い。でも声を出すのも辛い。まだ計算をしたほうがマシ・・
「あぁよく知ってる。お嬢様は俺のためにこの森へ毎晩来てるんだ。貢物をこの空間の主の魔物に届けるために」
「主の魔物?それってさっきの魔人のことですか?」
「あぁ・・魔人・・まぁそうさ」
男は一瞬何かを考えたが、考えるのをやめたのか、へらっと笑いそう言った。でもなぜフィルア嬢は魔人に貢げ物をするのだろう・・。弱みでも握られている?いや。この男が関わっているの?
「ーーー俺はスラムの出身でな・・暴力団の下っ端でもあった。いつも誰かから奪って、暴力をふるって・・そんな時、今の旦那様に拾われたんだ。それで俺は暴力団を抜けたと思っていた。だけどそう簡単じゃなかった。働き始めて何年か経った頃、暴力団の首領に偶然再会したんだ。そこから逃げようとして殴られたり色々あって・・それを助けてくれたのがまも・・魔人さ。正直言って殺されるかと思ったがあいつは契約を持ち掛けてきた。その時・・その現場をお嬢様に見られたんだ。お嬢様は俺が魔物に襲われていると思ったみたいで・・助けようとして・・。俺も守ろうとした。そしたらあいつ言ったんだ。『お嬢様にも仕事してもらおう』・・って。そこからだよ動物の死骸やらなんやら毎晩あいつの元にもっていくようになったのは・・。俺はあいつの手足。逆らったらお嬢様もみんなフィルア家全員を殺すって」
「・・」
「だから俺はお嬢様を返して欲しいんだ。今日の貢物はまだなんだ」
男はそう言って僕とスフィーニアの目を見た。男の目は真剣だ。きっとこの話も全て真実・・なんだろうけど。
「じゃあ。・・なんで君は僕をこの空間に呼んだの?ソアン達だって・・本当はフィルア嬢を救って欲しかったんじゃないの?君・・自身も」
そうじゃなきゃわざわざ敵をこの空間に呼ばないはず。フィルア嬢を助けるような僕たちを。
「それは・・ソアン様達はそのつもりだった・・でもあなたは違う。あなたは命令でこの空間に転移させたんだ」
ー?じゃあ僕はなんでこの空間に呼ばれたんだー?
もしかしてリボン様が関わっているのだろうか・・
僕は唾を飲み込んだ。




