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星は僕を見ていない  作者: 雪道 蒼細
八章 誰かの願い編
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誰かの願い part7.5

 僕は夢を見た。


 きっと僕が星になるより前の記憶の夢ーーー


 「魔術師か・・なんて気味の悪い・・」

 「ーっ」


 僕は壁に蹴飛ばされた。背中が痛い。でも大丈夫。これはいつものこと・・どうせ飽きたら目の前の人物はいなくなるのだ。僕はぎゅっと目を瞑る。目を瞑り次に目を開けるともうすべては終わっている。


 なぜかは分からないけどいつもそうだ。痛いことを誰かにされた時、目を瞑ると全て終わっている。

 僕は暗い部屋に一人。暗くて誰もいないけれど僕に話しかけてくれる人がいる。その人はどこからか僕に話しかけてくれる。始めは部屋にもう一人いるのかと思い、部屋中を探したがいなかった。


 だからきっと魔法を使って僕に話しかけてくれているのかと思った。

 まぁ、そんなことはどうでもいい。だって僕の友達だから・・・。


 『おい、お前。大丈夫か?』

 「!元気だよ・・影」


 今日も話しかけてくれた。名前はいいたくない、と言っていたので勝手に『影』と呼んでいる。影は僕が一人の時に話しかけてくる。お喋りな僕の話をずっと聞いてくれる。

 影はあまりお喋りな性格じゃなかったけれど、僕の質問には答えてくれたし、相槌もうってくれる。決して僕の話を無視したりしない。・・影のそんなところが僕は好きだ。

 体が傷だらけでも、嫌なことがあっても影と話すことができるから僕は我慢できた。影さえいれば大丈夫。そう思っていた。


 ーーそんなとき転機が訪れた。僕が十五歳の時のことだ。


 その日はいつもよりも体調が優れず、ずっと床で横になっていた。体が燃えるように熱く呼吸も荒かった。どうにか熱を冷まそうと氷を魔術で出そうとした時だった。


 「あ・・・っ!!くる。苦しい・・」

 

 いつも数センチの氷の粒が約一メートルの氷の塊が出てきた。魔力が暴走したのだ。魔力暴走は魔力の多い人ほど起こりやすく、魔力暴走中に魔術を使うと制御が効かない。それに、魔力暴走は周囲一帯の魔力濃度がかなり濃くなるため、魔力が少ない者や、魔力をかなり使い残りの魔力が少ない者。魔力が無い者などが近づくと体が濃い魔力に対応できずに死に至る。


 だがこれは魔力暴走を起こしている本人にも可能性がある。

 魔力暴走中は周囲に魔力をばらまいている状態なので本体の魔力はほとんど無いに等しい。その状態で自分のばらまいた魔力を吸収してしまうと本人も死に至る。

 そのため、魔力暴走を起こした者の生存率は約三十%。助かる可能性は低い。・・だけど魔力暴走を起こした時用に何か術があるそうだが僕はそれを知らない。それに周りの人が魔力暴走で死なないように結界が街に発動するはず・・。


 「あ・・・ぼ・・く・・・」


 ”死んじゃうのかな”と本気で思った。


 でももう苦しまないなら死んでもいいかなって思った。だって生きていても苦しいし、楽しく・・


 『大丈夫か』 『今日はなんの話をするんだ?』 『お前泣き虫だな』


 「無くはなかったな・・」


 影と話すのは楽しかった。死んで嫌なのは影と会えなくなることだ。でも死にたくないと思ってもどうすればいいか分からない。いつも苦しく鳴ったら目を瞑る。こうしたらすべてが終わっている。・・これを今やってもいいんだろうか。

 目を瞑って開けたらいつものように終わっているだろうか。でも目を瞑って開けることができなかったら・・


 『目を瞑れ』

 「えっ・・・・?」


 今のは空耳?影の声が聞こえたような・・


 『瞑れって・・俺が終わらせてきてやる』


 影だ。いつも僕が来てほしいていうときに来てくれるんだ。僕は安心して目を瞑った。そしてプツンと意識も途絶えた。


 ーーーー

 

 「ーーーんっ」


 次に目を開けた時には何もかもが終わっていた。もうどこも苦しくもないし、熱くもない。だけど目の前に広がる惨状に目を向けたくなかった。体中血まみれで倒れている人が僕の目の前に何十人もいた。きっとこれは僕がやったんだ・・。


 さっきの魔力暴走で・・死・・。


 「っおえっ・・ゲホッ・・」


 僕は気持ち悪くなって吐いた。だって魔力暴走を起こしただけで人が死んだ。魔力暴走に一般人の巻き込まないように設置された結界も発動されてないということはきっと僕が壊しちゃったんだ。


 どうすればいいか分からなくて泣いていると誰かが僕の頭を撫でた。


 「?」


 僕は涙をぬぐいながらゆっくりと顔を上げた。目の前にいたのは紺色の癖っ毛の少年だった。


 「えっと・・誰?」


 僕は家から出たことがないから叔父以外の人間を見たことがなかった。撫でられたから面識のある人物かと思ったが会ったことがあるはずもないので本当に知らない。


 「俺だよ、影」

 「えっ!?」


 僕は驚いて目の前にいる少年の顔をペタペタと触った。だって影の顔を見たことが無かったから。ーー顔は何というか良いで、うん。美形。黒色の目なのがまた可愛い。でも性別は分からないな・・女の子かな?


 「色々あってな、お前と直接面と向かって話せるようになったぜ」

 「じゃ・・その。ずっと一緒?」

 「一緒だよ。だからもう泣くなよ。お前の恐怖対象は俺がすべて倒してやる」


 そう言う影はとても輝いて見えてた。あれ?そうだ。じゃあなんで僕はあの子を、影を助けなきゃって思ったのだろうか。


 だって影は強くて、頼りになる。僕の方が弱くて泣き虫なのに。なんでーー。


 ーーーーーー


 「あ、だめ!」


 ?僕が叫んでいる?


 僕はゆっくりと瞼を上げ。前を見る。目の前にあった光景は前に僕が引き起こしたものにそっくりだった。


 「魔力・・暴走」


 僕は血の気が引いた。だって魔力暴走が起きると30%の確率で死んでしまう。僕のときは影が助けてくれたけど・・今回は。


 僕は手足が震えその場に座り込んだ。怖くて立てない。でも、このままじゃ影が死んじゃう。僕はボロボロと涙を流しながら魔術の詠唱をしようとした。


 だけど・・


 「・・・・・・」

 

 声が出なかった。恐怖心からだろうか。何度だそうとしても息しか出ない。声を出さなきゃ詠唱が・・


 『知ってた?魔術って詠唱しなくてもできるんだ。魔法が使えるんだ!』

 「そうなの!?どうやって?」

 『それはな・・昔の文献に載ってたのを参考にして・・』


 ーーそうだ。魔法。これなら詠唱がいらない。影が手本を見せてくれた時、僕は魔法を使えなかった。でも。影を助けるためなら魔法だってなんだって使ってやる!


 だって誰かを失う以上に怖いものなんてないから。僕の腕でも足でも全財産でもなんだってくれてやる。それで影が助かるなら!


 僕は急いで座標計算、威力計算をした。これを間違えると魔法は発動しない。魔術と魔法は途中まで仕組みは同じだって影も言っていた。僕ならできる!


 「!」


 僕は結界魔法を影の体内に張った。まず影の命を最優先。そして、ーーーここ!

 風の魔法を発動させ、近辺一体の魔力を晴らした。そうすれば魔術が暴走することも無い。

 影の魔力暴走が少しおさまり、影は地面に倒れた。僕は急いで影に近寄り、回復魔法をかける。ーーほとんど僕も魔力が残ってないけれど回復魔法をかけるぐらいならまだいける。

 数分の間回復魔法をかけていると影の目が開いた。まだぼーっとしている。まぁ魔力暴走があったばかりで影も疲れているんだろうなと思っていた。


 だけど・・


 「おまえ・・だれ?」

 「えっ・・・」


 影が発した第一声はそれだった。僕は何かの間違いかと思った。だって影が僕を忘れるはずはない。ずっと一緒にいたのに。


 「っ俺の体に何しやがんだ。近づくな!」

 「ーーっ」


 影は僕の体を押し距離をとった。・・目の前にいる影は影じゃなくなっていた。


 「影・・?影。僕だよ、覚えてないの?」 

 「は、知らねぇな。俺は守らなきゃいけねぇ奴がいるんだ。だからお前なんか知らねぇ。さっさと失せろよ」


 影・・はどこかへ走り去ってしまった。影の守らなきゃいけない人は誰なのだろうか。影は。もう僕のことを思い出すことはないのだろうか。

 でも。それでも。僕は影の傍にいたい。僕は立ち上がって影を追いかけた。影の隣にいるために・・

 そこから約二年が経ったころだった。--影が魔王となり世界を支配し始めたのは。


 僕は結局影のことを見つけられず世界征服のことも新聞で知った。


 僕は君に思い出してほしかっただけなのに・・・

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