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星は僕を見ていない  作者: 雪道 蒼細
八章 誰かの願い編
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誰かの願い part1

 ーーー場所は東の国の王宮。なぜここにいるかって?それはルビアの婚約者アレディー嬢を引き渡すためだ。結構抵抗するかと思ったが意外とすんなりついてきてくれた。


 ここまで来るのに会話して気づいたことだが、どうやらアレディー嬢はルビアのことは嫌いではないらしい。ただ嫁ぐと色々自由がなくなるから今のうちに世界のことを知りたいという感じで飛び回っているだけみたいだ。


 アレディー嬢から聞く話にルビア・・ややこしくなるからルビアの本名シリルで呼ぶが。シリルがよく出てくるあたり、かなり仲は良いのだろう。


 「ルルア・・!良かった・・無事で」


 シリルはほっとした顔でアレディー嬢の手を取る。アレディー嬢は照れているのか「そりゃ無事ですわよ!」とそっぽを向く。・・・ちなみに耳はすごく赤い。


 「あ!そうだ!シリル様!これ、お土産です・・えっとニつあって、まずはこれをどうぞ!」


 アレディー嬢が取り出したのは子供が描いたような絵が描いてある紙と赤・緑のシート。勉強でも始めるのか?と思ったがそういうわけではないらしい。


 「これはなんだ?ルルア」


 シリルも見たことがなかったものらしく首を傾げている。


 「これはですね・・シリル様。ここの絵を見ていてくださいね、このぐちゃぐちゃとした絵にこの赤いシートを被せると・・じゃん!南の国の国家になりました!」

 「「「「「おぉ」」」」」


 シリルと共に俺たちまで声をあげる。俺もあれは見たことがない。見た感じ子供向けのおもちゃか?


 「へぇ、面白いものだね。じゃあ緑のシートを被せると?」

 「緑のシートを被せるとですね・・なんと!南の国の王宮になります!」

 「すごいな、細かいところまで表現させている。ありがとう、ルルア」


 シリルは笑ってアレディー嬢からお土産を受け取った。ーー俺も南の国へ行ったら買おうかな?


 「あ、あともう一つのお土産です!二つ目は食べ物です。南の国って料理おいしいんですよ。知っていました?」


 アレディー嬢がシリルに紙袋を渡した。紙袋の形がデコボコしている。何が入っているんだろうか。ゲテモノ?いや・・あのとんがり具合はフルーツか?南の国のフルーツって結構でかいんだよな。と昔街で見かけたフルーツを思い出す。

 南の国は農業大国なだけあって色々な野菜・果物が売っている。あと、プレアの濃度が他の国より少しだけ濃いからか植物が大きく育つ。

 よく育ちすぎた農作物は一般的に美味しくない・売れないとか言われることが多いが南の農作物はそんなことない。大きくても美味しい。だから売れる。

 俺も南の国の大きなりんごは好きだ。あれ普通のりんごより甘くて美味しいんだよな・・。


 「私もあまり南の国の料理は食べたことが・・・?ルルア・・こ、これはなんだ?」


 シリルが紙袋から取り出したのは赤くてとげとげしたフルーツ・・・?だ。ーーー確かあのフルーツはランブータン。あれさっぱりしていてアルが好きだった気がする・・母さんも。

 いいものをお土産に選んだな・・なんて見守っていると横からなにやら話し声が聞こえた。


 「あれなんだか赤いけど大丈夫?花みたいな見た目だし・・食べ物なの?」

 「おそらく食べ物かと・・・見たことがあるような気がしますが僕は食べたことがないです」

 「私も・・あの食べ物、毒なんじゃないですか?食べたらおなか壊しません?」

 「・・・・・」


 ランブータンについてやいのやいの言っていた。南の国のフルーツをそんなゲテモノ扱いしなくても・・と思ったがまぁ初見なら仕方が・・・いや仕方がないで済ませたくない・・。でも・・。


 「うぅ・・・」


 色んな感情がグルグルとしてしまう。シリルはどうだろう?と思い顔を上げる。シリルはじっとランブータンを見つめその後皮をむいたのち口に放り込んだ。ティルディーたちは「あ」と声を揃えシリルを見た。


 シリルはもぐもぐと目をつむったまま口だけ動かしている。あまりにも無言が続くとまずいのかとすら思ってしまう。うーん。美味しくないわけがないのだが。でも味の価値観は人それぞれだし・・。


 色々唸っていると「ゴリッ」と音が鳴った。俺はその音に思考をいったん止めシリルをを見た。シリルはというと先ほどまで真顔だった顔がだんだんと眉をひそめている。


 俺はさっきの音であ・・と思った。恐らくシリルは種を噛んでしまったのだろう。ランブータンの種はマジで苦い・・。今までの甘さは一気に忘れ去れるくらいには・・。


 「どう?美味しいでしょう?」


 アレディー嬢はソアンの異変に気付いた様子もなく感想を求めている。そんなアレディー嬢の様子を見てかシリルはぎこちない笑顔を浮かべてこういった。


 「・・・・とても独特な味で美味しかった」


 と。ティルディーたちは「ありえない!」という顔でシリルを見ていた。アレディー嬢は「そうでしょうとも」という笑顔である。多分アレディー嬢はランブータンを食べておいしさを知っているのだろう。でも美味しさを知っているのなら一つシリルに忠告してあげてほしかった。「種はちゃんと抜いて食べて」と・・。


 あとでこっそりシリルに教えておこうと内心思った。口直しにジュースを進めつつソアンにすすめられて茶菓子をいただいた。


 うむ・・めっちゃくちゃうまい。ケーキやらフィナンシェやら出されて美味しかった。砂糖は高いからな・・こういうのは貴重だ。ましてや冒険者だと食事すらありがたい。


 そんな食のおいしさに感動しているとふと思い出したというように話題を出された。


 「フィルア嬢・・兄の婚約者の家なんだが・・・どうやら最近フィルア嬢の様子がおかしいらしい。報酬は出す。どうか様子を見てきてはもらえないか?」


 フィルア・・確か母の実家だ。正直俺は母似だからあんまりあの家には近づきたくない。ばれても色々面相だし・・でも困っている人を見捨てるのは・・。


 「トバッシュ家も魔術師の家だからな・・一応頼んではいるんだが二重の方が安心できる。それにトバッシュ嬢がここにいる。事情を話せば協力してもらえるはずだ。ーーーどうだろうか?」


 ーーフィルア家とトバッシュ家が関わっている・・。俺はティルディーの方を見た。俺はともかくティルディーが心配だ。最近隈も酷いしあまり心労はかけたくない。ティルディー・・と声をかける前にティルディーは口を開いた。


 「ーーその依頼お受けいたします。僕も・・家族と会いたいと思っていましたから。」

 「ティルディー・・様・・」


 ティルディーは何でもないような顔でそう言った。ティルディー・・何を考えているんだ?大丈夫・・なのか?俺は心配でティルディーを見た。


ーーーーーーーーーーーー


 ・・・どうしても会わなきゃいけない気がした。ーー最近はずっと声が聞こえる。


 『助けなきゃ・・だって・・あの子は・・あの子は』

 「やめて・・やめ・・」


 耳をふさいでも聞こえてくる言葉。たまに記憶が曖昧になるのが怖い。ぼーっとしているとき気づいたらペンを持っていたり、ノートを開いていたりすることがある。


 あの声を聞くたび自分が消えていく。まるで知らない自分を引き出されるように・・。


 僕は僕なのに・・知らない僕がいる・・。知らない僕が誰かを助けたがってる。ーーでも。


 でも『助けたい』という言葉が聞こえても誰を助けたいのかが分からない。ただ永遠と聞こえてくるだけ。あの声が・・。


 僕だって・・助けたい人はいた。だから僕の知らない僕が助けたい人なら僕だって助けたい・・でも助けるにはまだ足りない。きっと何かが。


  『記憶が』  『力が』


 「ーーー?」


 今・・声が重なった気が・・。


 またぼーっとしてきた頭をしゃっきっとさせ席をたつ。


 ーーーー僕は僕だ。ティルディー。ティルディー・トバッシュ。


 君の名前を借りているただのティーだ・・・。

 


 

 

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