プロローグ 星に願いを
「ルチャード!この出来損ない!!せっかく人が一流の教師を集めてやっているのになぜ言われていることができないんだ!!」
男が近くにあった机を叩くと机に乗っていた花瓶がグラリと揺れ地面へと落ちた。花瓶の破片があちこちへ散らばった。だが今はそんなことを気にしている余裕はなかった。
「ごめんなさい・・ごめんなさい・・まだやれる・・まだやれるから。お願いします見捨てないでください・・」
俺は必死に頭を下げた。すぐにこうしなければ殴られる。もう痛いのはいや。それに俺はやれる。だから・・だから。もっと勉強しなくちゃ。もっと頑張らなくちゃ。
俺はできる子だから。大丈夫。次のテストはまた百点を取れる。科学のコンテストだって・・論文のだって・・。あの人は全部やっていたんだ。だからできる。できるはずなんだ・・同じ血が通っているんだから・・。
僕は父親が部屋を出て行ったあとすぐに机に本を並べて勉強を開始した。
ーーーこれが正しいんだと思い込んで・・
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【ソアン】
「・・五日くらいこの村にいたけどそろそろこのお嬢様をルビアに届けないとな!」
ーーあの事件から早五日。村長とその共犯達は俺たちの呼んだ衛兵によって連れていかれた。そして俺の家の片付けなどやりたかったこともあり五日間この村に滞在していたのだ。
キラとスフィーニアも村の周りの散歩とかここの村でしか食べれない料理などを堪能して楽しんでいるようだった。
一方この村へ来る前に一番喜んでいたティルディーはこの五日間どこか浮かない顔をしていた。それに目元には隈があった。
四日目の夜、寝れないのか?と聞いたが話を逸らされ、結局話は聞けなかった。何かあったなら力になりたかったのに・・。
ーーーーまぁ『リボン様』のこともあるから仕方がないのかもしれないが。俺はティルディーが眠る部屋のドアへ視線を向けた。
俺は君の力になれるだろうかーーー。
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【ティルディー】
「・・・」
ここ最近あまり眠れていない。リボンのこともあるけど一番の原因は謎の声だ。
最初に聞こえたのはこの村へ来る前の時だった。二回目はこの村に来てソアンが村長さんの言葉で怒っていた時。
その次は・・あれ?いつだっけ・・でもどこかで寝ている時に聞こえてきた。なんだかその声を聞くのが辛くて。怖くて。向き合えないまま5日が過ぎた。
ソアンにも昨日の夜心配されたけど寝不足のせいか少しイライラしていて話を逸らしてしまった。
このままじゃソアンを傷つけてしまいそうだったから。・・・夢のせいかもしれないが。
ーーーこれは今日の明け方に聞こえた声だけど・・
『助けなくちゃ。あの子を解放しなくちゃ。だってあの子はーー』
そう言っていた。その時は声と共に映像も見えて目の前にいる闇の塊は魔法を放っていた。声の主・・僕はその闇の塊を抱きしめたところで目が覚めた。
あの闇の塊は何だったのか。僕は何がしたかったのか分からない。分からないけど悲しくてむしゃくしゃした。例えるなら自分の感情を表現できない子供みたいな感じだ。
ーーーー声の主はあの闇の塊を助けることができなのだろうか。
僕には何ができたのだろうか。僕は。僕なら・・。
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【キラ】
最近ティルディー様が寝不足だ。今日なんて隈が酷かった。ティルディー様の好物を持って行ってもあまり食べてなかった。
ーーー他人を励ます。僕はこれをするのが苦手だ。言葉を直球に投げてしまう癖があるせいか逆に他人を傷つけてしまう。そして距離をとりたくなる。
スフィーニアはこの性格について分かってはくれるがずっと、このままではいられない。僕だって変わらなくちゃいけないのに。もう背負う必要はないのにーーー。
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【スフィーニア】
近頃ティルディー様は夜、寝れてないようだ。夜にリラックス効果のあるハーブディーを持って行ってお喋りをしているけど、それでも眠れていないらしい。
たまに『助けなくちゃ』と呟いているのを聞いたことがあるが、どう言う意味か分からない。
ティルディー様は本物のティルディー様じゃないっていうのは聞いた。でもそれでも、もう色々片付いたとソアンさんは言っていた。
だからティルディー様が救う必要がある人は誰なのだろうか。
・・私は強くない。だから守りたいものすら兄さんみたくは守れない。でも私は努力してある程度の力は手に入れた。
ティルディー様は魔術師・・えっと魔法使いいや魔女?だから私よりずっと強い。
強いのに守るべきものは何なのだろうか。
ーーーー私にもっと力があったら守るべきものも守れたのかな。




