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星は僕を見ていない  作者: 雪道 蒼細
七章 白薔薇の祭り編
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白薔薇の祭り part9

 ーーー俺にはもう一つやらなければいけないことがある。


 それはーー。


 「ソアン?どこに向かっているの?」


 速足でどこかへ向かう俺にティルディーが不思議そうに聞いてきた。そう言えばどこへ行くのかをティルディー達に伝え忘れていた。俺は足を止め振り返った。


 「俺の家だ。金目のものはないかも知れないが家自体はまだあると思うんだ」


 というか、なければ困る。目的が達成できないからだ。・・・今俺が自分の家に向かっている理由としては母の宝物のためだ。


 俺が村を出た時は家族の思い出を封印したくて家族の物などは一つも持ち出さなかった。ーー思い出すと自分が消えてしまいそうだったから。弱い自分なんてきっとすぐに消えてしまう。だから・・・思い出も物も全てこの家に封印してきたのだ。

 

 ーーその封印を今日解くーー。


 「着いた。ここが俺の家だ」

 「ここが・・ソアンさんの家・・」


 あんぐりと口を開けてキラは俺の家を見ていた。まぁ驚くのも無理はない。だって俺の家は今にも壊れそうなくらいボロボロの家だったからだ。

 この村は金がないと言っても屋根のある家くらいはある。でも、目の前にあるのは屋根は半分くらいしかなく半壊しているような家だった。


 「元々はもう少しだけ綺麗だったんだけどな」


 そう。これは事実だ。他の家よりボロくても屋根はもう少しちゃんとしていたし半壊もしてはいなかった。けど事件の時から半壊した状態だ。時間が経ってもっと酷くなったのだろう。

 まあ、そんなこと気にせず俺は中は入っていく。俺の読みが間違っていなければおそらく両親はあそこに宝石を隠したはずだ、


 ーーー二人の思い出のあの所に。


 俺は心当たりのある場所へ手を伸ばした。俺が手を伸ばした先は本棚だ。そしてそこから一冊の本を取り出した。本の表紙はボロボロでなんて書いてあるかは分からない。けど中身の文字は読める。それだけこの本を大事にしていたのだ。



 「・・やっぱりあった」


 

 この本は二人が出会ったきっかけの本だと両親が言っていた。二人の愛読書とのことだった。それにこの本は少しくぼんでいる。小さな箱が入るようになっていたから宝石も隠せたのだ。


 本の中に入っていた宝石は大きくキラキラと輝いている。ーー大切な思い出の一つ。


 「置いていってごめん」


 ーーもつ絶対に置いていかないから。


 苦しい思い出も楽しかった思い出も悲しい思い出も色んな思い出。みんながいなくなった時は悲しくてどうでもいいと思って置いていってしまった。

 思い出は足枷にもなれば力にもなる。当時の俺にとって思い出とは前者だった。でも本当は思い出は持っておくべきだったんだ。

 病気であと少しで逝けるって喜んで・・生きる希望がほとんどなかった俺には必要だったんだ。あの金髪の少女に礼を言うという目標には少し遠いことを目標にした俺にとって。


 ・・・


 「みんなただいま、そして、行ってきます!」


 俺は満遍の笑みで本に向かって言った。

 もう俺の封印は解かれたーー。俺には友達がいる仲間がいる。思い出はもう足枷じゃない。宝だ。



 ーーーーーーーーーー


 【ティルディー】


 ・・・ソアン・・嬉しそう。笑っているソアンの顔を見て思わず僕も笑った。出会ったときは誰かの顔色を見たり下を向いたり・・笑った顔なんてあんま見れなかったのに。なのにソアンは笑っている。

 心の底から嬉しそうに。

 今回は色々あった。ソアンの村長がソアンの家族を殺したという衝撃な事実を聞いたりソアンの昔の友達に会ったり。

 ソアンは苦しそうで辛そうだったけど。ちゃんと向き合って解決をした。それはすごいことだ。


 でも・・


 『僕は君の力になれたのかな・・』


 ?今頭の中でも誰かが僕と同じことを言った気が。


 もう一度聞こえないかと思い目を瞑る。


 ーーーーそうしたら意識が遠のいた。僕が・・飲まれていく。知らない僕に


 ーーーーーーーーー


 『ダメ!殺さないで・・僕はまだ・・まだ君を救えていない!!!」


 僕は知らない誰かに手を伸ばした。殺さないで?誰を?・・・だけど僕は泣いている。心が痛い。


 「殺せ!!あいつは敵だ!あいつのせいで家族が殺されたんだ!」


 また知らない人が剣を持って僕が手を伸ばしている『誰か』に剣を振り下ろす。『誰か』が攻撃されるたび僕は心が苦しくなっていく。・・剣を持っている人には僕の声が届いていない。僕は透明?まるで認識されていない。

 こんなの僕じゃない・・僕じゃない。でも待って!その人を殺さないで!分からない思い出せないけど大切な人な気がする!だから!


 「殺しちゃだめ!」


 そう僕が叫んだ瞬間『誰か』が殺された。


 『・・・僕はあなたを救えなかった・・いや救え・・助けなきゃ・・あの人を『誰か』を・・』


 そう僕はブツブツと呟き始めた。痛い・・苦しい・・僕はそんな感情の中また意識を失った。


 

 

 「ティルディー?ティル・・あ。起きた。大丈夫か?立ったまま目を瞑っていたが・・」


 ソアンが心配そうに僕の顔を覗いてきた。あれ?僕今何していたんだっけ。・・・なんだか心が痛い。苦しい。ただ目を瞑っていただけなのに。どうしてこんなにも苦しいんだろう。

 


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