星は真実を語る
またもや馬車に揺られやっと星の丘付近の村へ着いた。
馬車の故障や魔物との遭遇などがあり予定より時間が
押し村へ着いたのは次の日の昼過ぎだった。
「間に合ってよかった。今日が新月の夜だってのに。」
「本当だね。馬車が故障したときには間に合わないんじゃないかと思ったよ。」
「本当にな。ここからどうするんだ?」
俺はあたりを見回しながら質問した。
「今から丘に向かって歩こう。そうすれば日の入り頃に丘に着く。」
「分かった。」
「じゃあ行こうか。」
そういうとティーは歩き出した。
今聞くべきだろうか。魔法のこと…。
後、助けてくれた少女に関係があるのか。
出会ったとき見覚えがあった気がして寝る前に
考えていたら十年前の少女に似ていることを思い出した。
でもあの時の子なら俺に話しかけてくるか?
星の丘で出会うって言っといて。
うーん。
俺は歩きながらずっと考え続けていた。
ずっと悩んでいたため気づいたら日がかなり傾いていた。
あれ・・もう夕方。あれからかなり時間がたっている。
その間ティーは何か話しかけてきていたか…?
前を見るとティーは黙々と歩き続けていた。
やばい考え事に夢中になりすぎていた。
このままじゃ星の丘に着いて旅が終わってしまう。
その前に聞きたい…ティーのことを・・。
俺は大きく息を吸った後ティーに質問をした。
「なぁティー一つ聞きたいことがあるんだ。」
「・・・何?」
少しの間の後ティーは振り向いた。
「ティーは、昔俺を助けた女の子なのか?それとティーは何者なんだ?」
「・・・。」
ティーは何も言わなかった。
やばい直球に言い過ぎたかもしれない。
「なんでそう思うの?」
返事をしてくれた。
「一昨日、魔術じゃなくて魔法を使っていた。魔法は自然を全て理解
していなきゃ使えないはずだろう。
それと昔助けてくれた子に似ている気がする。」
俺はティーの瞳をじっと見つめて言った。
「……ねぇソアン一つ昔話をしてもいい?」
・・・?急に何だろうか。
「い、いいけど。突然どうして。」
「ソアンの質問の答えを言うだけだよ。」
ティーは少し寂しそうな顔をして言った。
「それじゃ話すよ。
ある所に落ちこぼれの星が居ました。星は魔法が上手く使えず
仲間の星からも落ちこぼれと馬鹿にされいつも独りぼっちでした。
新月の晩、落ちこぼれの星は仲間たちと共に星の丘へ舞い降りて
一晩中舞を踊り続けました。明け方。日の出か近づくと星たちは
空へ帰っていきます。ですが落ちこぼれの星は上手く飛べず
星の丘へ置いてきぼりにされてしまいました。
星は悲しくて涙を流しました。そんな時星の丘を含む一帯を治めていた
領主の娘が落ちこぼれの星を見つけました。
領主の娘は落ちこぼれの星とは違い天才でした。
魔術の才にも恵まれ勉強も作法もなんでも上手にこなしました。
ですが天才故に彼女も孤独でした。ひとりぼっちだった
二人は出会い友達になりました。二人は毎日星の丘でお話をし
遊び毎日が輝いていました。
ですがある日領主の娘の結婚が決まりました。
結婚するためにはこの領地を出ていかなければなりません。
星と離れることは嘆いた娘は星にお願いをします。
『お星様 どうか私を星にしてください』と
星は前よりは魔法を使えるようになりましたが
まだ上手に魔法は使えませんでした。ですが親友のために精一杯
頑張りました。するとあたりが光だし星は娘の願いを叶えることができました。
ですが星は人間になってしまいました。娘は訳が分からず泣きましたが
星は魔法を使い娘を空に飛ばしました。
またひとりぼっちになった星はこの世界をさまようのでした。
おしまい。」
「・・・。」
話が終えた後も俺はただ黙っていた。なんて言ったらいいかわからず。
「もう分かったでしょ? ソアン。そろそろ時間だよ。」
ティーは空を見て言った。
時間だ。
ーー〈補足〉ーー
星は通常空に浮かんでいるもので地上には降りてこないが
人の願いを叶えるために新月の夜だけ降りてくる。
星は繊細で神聖な場所である星の丘以外に行くと
原型を保てなくなるため星の丘から出ることはできない。