真実の星 part6
契約が始まろうとすると舞を踊っていた星の一部は、舞を止め魔法で星の丘周辺を明かりなどで照らし始めた。炎や光など、使っている魔法は星によってばらばらだ。
星たちにも個性があるんだと思った。ばらばらだけどとても綺麗な魔法だ。思わず見とれてしまう・・・・。
そんな星達に囲まれながら俺とティルディーは向かい合わせで立っていた。ティーは少し離れたところで見守っている。契約は夜明けとともに完全に実行されるとティルディーが言っていた。
その間は何もないので俺は普段なら見ることができない星達の魔法をまじまじと見ていた。そんな俺をティルディーは何にツボったのかはわからないが突然笑い出した。
「フフフ・・。アハハ!なんか蟻の行列を見ている子供みたい!」
蟻の行列・・確かに小さい時はよく見ていたけどそれと同等に思われるとはなんか恥ずかしい。
「しょ、しょうがないだろ!魔法なんて見る機会なんてないし、ましてや星なんてこんな近くで見られるものじゃない・・」
俺は笑われたのが悔しくてむっと言い返す。だが逆効果だったらしくまだまだ笑い続けている。なんだか子供扱いされた気分だ。もう十八なのに・・・というか同い年だよな?
「ごめんって・・。人と話すの久しぶりで・・。こんなさ、くだらない話をするような友達はティーくらいだったから、なんか新鮮で・・。それに異性だし・・」
ティルディーは深呼吸した後笑うのを止め俺を見た。・・・真剣な表情をしている。何か重い話でも始めるのだろうか・・。
「・・あのさ・・。私がなんで君がここに来るか予言したとかさ・・聞かないの・・・?興味ない?」
下を向きながらティルディーはポツリと呟いた。・・・・気になるが・・。聞いていいんだろうか・・。でも俺との会話がもしかしたら最後に・・。
「・・・聞く」
聞くことにした。もしかしたら言いたいのはティルディーの方かもしれないが・・。
「ふふ・・良かった。・・・実はね予言の魔術ちゃんとは未来見えてなかったんだ。見えてたのは私と・・私の体と・・君が星の丘へ来ているところが見えたの。私、魔術の研究は得意でさ・・子供の時はできなかった病気の回復魔術とか、てっきり未来には完成するからここで君の病気を治していると思ってた。君を昔助けた時に病気のことは分かってたからね。・・私の家ここの近くだし、それでかなって思った。でも実際は違った。来ていたのは私と入れ替わったティーだった・・。まぁ君を治せたから今となってはどっちでもいいんだけどね」
なんでもないような顔でティルディーはそう話した。でも目元は潤んでて今でも泣きそうな感じだった。そりゃそうだ。多分だがティルディーはまだ俺と同じの十八歳。本当なら好きなことして馬鹿みたいに笑っている年齢なのだ。
それなのに今俺と契約したせいでその命を散らそうとしている。・・死ぬのは怖い。俺も病気が治らない・・寿命は長くないと医者に言われたときショックだった。目の前が真っ暗でそうしていいか分からなかった。目の前にいるティルディーみたく笑えはしなかった。
ずっと泣いていた・・。笑えるようになったのはあきらめてからだ。人生を希望を・・夢を・・・。
「・・・そんな顔しないでそんな顔されたら私もどんな顔したらいいか分からないよ・・。最後なんだ。笑って、くだらない話をしようよ・・くだらなくなくてもいいからさ・・」
そういってティルディーは笑っていた。そう無邪気に笑うティルディーは年相応の顔に見えた。でもくだらない話・・。そういう話をする人は俺にはいなかったから逆に悩んでしまう。
悩んだ結果質問をすることにした。
「・・・ん・・・・。じゃあさ、俺からは一つだけ・・・。なんで俺を助けたんだ?たった一度過去に会っただけの男を。俺はティルディーに何もしていない。出会っては助けられているだけだ。普通助けた側の顔なんて忘れるだろ?」
・・・これは結構気になっていたことだ。別に特別剣の才能があったわけじゃない。特別頭が良かったわけじゃない。特別顔が良かったわけじゃない。何も持ってなくて泣くことしかできなかった子供なのに。
「・・・それはね・・。君がティーと一緒にいてくれると思ったから!私・・・本当は知ってたんだ未来で二回りも上のおじさんと結婚するってことは。あまりいい噂も聞かなかったし気が乗らなかったけど仕方がないなと思ったの。貴族だし・・。その頃はティーと会ったばかりで幸せもあんま知らなかったしね。予言してから成熟するのに十年ぐらいはかかる予定だったから心の決心がつくと思ったんだけどね・・。つかなかった・・。・・本当の幸せを知ってしまったから。・・・・君を助けようと思ったのは私がいなくなった後ティーが独りぼっちにならないようにと思って未来の友達を探していたからだよ」
「・・・?話は分かったが、なんで俺なのかはいまいちわからなかったのだが・・?」
・・・そう話の流れ的に友人を探しているのは分かった。でもそれは俺じゃなくてもいいはずだ。俺は特に才に恵まれているわけでもない凡人だ。俺みたいな人間はたくさんいるだろうに。
「そうだね・・。君がいいと思ったのは・・・」
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【ソアンが誘拐犯に攫われティルディーが助けた時のこと・・】
「もう・・薬草を取りに来ただけなのに誘拐犯と出くわすとは・・ティーが家で待ってるから早く帰んなきゃいけないのに・・!」
私はぶつくさと心の中でもう動かない誘拐犯に対し文句を言った。まさか薬草を取りに来た帰りにばったりと誘拐犯に出会うとは想像していなかった。
少しぐらいこらしめないと気が済まない・・私は杖を出現させ魔術を発動させようとした時だった。ーー視界の端で何かが動いた。
(そう言えばあの男たちなにか抱えていたような?)
私は『何か』を確認しようと思い周りを確認する。すると麻袋が少しだけ動いた。それに微かだけど声がする。人か?と思い一応声をかけてみる。
「大丈夫?君?」
「ーーあ・・」
(人間だ・・それに生きている)
私は誘拐されていたであろう少年を麻袋から出し口に咥えられていた縄を外した。少年はぐったりしている。咳もしていてとても苦しそうだ。私は魔術を使って少年の体を診察した。
「ーーーっげほっつげほっつ・・。はーっはーっ・・」
・・・どうやら少年は病気のようだ。この少年は不治の病とされているものにかかっている。私は祝福の魔術をかけ少年を安心させようとした。私まで暗い顔をしていたら少年も不安がっちゃうもんね。
「大丈夫・・。もう悪いやつはいないわよ・・」
そう言って私は少年の上半身を起こした。だんだんとだけど呼吸が落ち着いてきている良かった。・・とそう思っていると少年の瞳が少しずつ開かれて私を捉えた。
「・・・・・」
黒髪で青目の少年・・。私の顔をじーっと見た後。少年は急に眼を見開いて私の服を引っ張って私の上に覆いかぶさった。
バーンッ!!!
急に少年が覆いかぶさった後銃声がした。私は何がなんだか分からず少年を自分の上からどかそうとした瞬間
「・・ッぐ」
少年が表情を変えた。少年の腕を見ると腕から血が出ている。銃弾が少年の腕をかすったのだ。
「!!!『精霊よ 光をこの地に 裁きの雷を』!!」
私は少年が傷つけられた怒りなのか分からないが、気づけば呪文を唱え男は雷に打たれぐったり横たわっていた。もう確実に動け鳴くようにするため動かなくなった後も雷を浴びせておいた。
「ごめん・・うっかりしていたばかりに・・・っ!!」
私は回復魔術をかけた後少年の手を握った。だけど別の方から足音がした。敵かと思ったけど多分誘拐犯のアジトを突き止めた兵達だ。
私はこっそり来ているから証明書も持っていない。不法侵入になってしまうから彼らにばれるのはまずい。だから逃げなければいけない。
「・・ごめんなさい。もう行かなきゃ。見つかるわけにはいかないの」
私はそう言い残して少年の手を離し裏口の扉から逃げようとした。
「君は誰?」
ノブを回そうとしたときそう少年が言った。とても小さく消えてしまいそうな声だったけど私には聞こえた。私は急いで少年に近づきしゃがんだ。そして自分の口元に人差し指をあててこう言った。
『 新月の夜、夜空で星が一番輝く日。星は人の願いを一つだけ叶えるだろう。この世界で一番暗く星が地で最も輝く星の丘で。星空の運命の下。星は君を導く。きっとそこでまた出会う』
・・・さっき少しだけ予言の魔術で未来を見た。この少年には未来でまた出会える。その時はティーと一緒に三人で・・・。
「それってどういう・・]
少年はそう言ったがだんだんと瞼は閉じていき眠ってしまった。私は最後に一部の記憶をなくす魔術と私の言葉を数年後思い出す二種の魔術をかけてその場を去った。
「あの子ならきっと・・・」
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・・あのときの君の勇気に惹かれた・・とはいいだしにくいかもなぁ・・。私は心の中でそう思い、目の前にいるソアンを見て微笑んだ。
「まぁいいじゃん。君がいい。君じゃなきゃダメなんだ」
「えぇ・・・?」
少しごり押しだったがまぁいいだろう。これは私が空までもっていく秘密なのだ。私だけが知る唯一の思い出・・。私はゆっくりと目を瞑る。・・もう時間だ。夜明けが来る。私の体もだんだん薄くなっている。光に包まれ変な感じだ。
「・・・ねぇソアン・・。最後に頼まれごとしてくれない?」
「分かった。なんでも願いは聞く」
「・・ありがと。あのね・・・」
俺はソアンの耳に言葉を託した。そして私の体はさっきより光に包まれていく。これでソアンに言うことはもうないかな。あとは・・・。
「・・・!ティルディー!!」
ティーが少し離れたところから大声を出して私を呼んだ。
契約者と星以外は星の舞より内側には入れないのでティーは近づけないのだ。でもそれでもお構いなしにティーはこちらへ近づこうともがいている。そんなティーが嬉しくて悲しくて懐かしくて。私は今までの感謝を伝えることにした。
「ティー!私たちは本来、関わるはずはなかった。それなのに私たちは巡り合えた。ありえないを超えて友達に・・親友になったんだ!こんな運命みたいなこと絶対ない!私はティーと親友にされて幸せだった!素敵な時間をありがとう!」
私は思いっきり大声で今までの感謝を伝えた。本当はずっとティーと一緒に話していたい。別れた後何してたの?とか何ができるようになったの?ご飯は毎日食べてる?今でも兎のぬいぐるみは持ってる?言いたいことはたくさんある・・。
「・・・・!僕も!ティルディーと親友になれて幸せだったよ!自分が自分になれた気がして幸せだった!食べ物や知識、居場所をくれてありがとう!」
「こっちこそ!本当にありがとう・・・。こんな私を親友にしてくれて!」
「そんなことないよ・・そんなことない・・。僕の方こそ愚図でつまんない話しかしないのに、いつもゆっくり・・聞いてくれてありがとう」
「私の方こそいつも自慢話ばっかだったと思うし・・それに私を受け入れてありがとう!ティーの居場所はいつも心地が良かった!安心できた!」
「僕だって!優しさをもらったし暖かさをくれた!これは僕の壊れた心を癒してくれた・・。僕が生きているのはティルディーのおかげ!!ありがとう!!」
・・もう感謝大会みたくなってしまった。私もまだまだ言おうとしたけど少しだけ声が薄くなっている。もう時間かもしれない・・。
「ティー!私はこれまでの人生はとても暗かった!でもティーのおかげで光が差したんだ!私は消えてもティーの記憶からは消えない!それに絶対絶対生まれ変わって会いに行く!そしたら、また私に居場所を頂戴!ありがとう・・・ありがとう・・親友!」
「分かった!待ってる!未来で!絶対に僕たちは会えるよ、見つけるから来てね!」
「分かった・・・・っ」
私はそう言った後眩い光に包まれて消えた。
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「ティルディー・・・・またどこかで・・」
僕は空に向かってポツリと呟いた。ティルディーがいなくなっても不思議と涙は出なかった。
・・・だって・・また巡り合えるって信じているから。
でも少しだけ涙が出てきた。一滴二滴・・どんどん溢れてきた。
「あれ・・泣かないつもりだったんだけど」
「・・・・・・」
ソアンは無言のままそっとハンカチだけ渡してきた。・・こういう何も言わないのがソアンらしい。僕はハンカチで涙をぬぐいソアンを見た。
朝日に照らされている彼はまぶしかった。まるで一つの星みたいに・・。僕の視線に気づいたのかはたまた僕が悲しそうにしていたからなのかこう言った。
「俺も星にはもう見られてないからさ!」
・・そう星と契約したソアンはもう願いを叶えてもらうことはできないのだ・・。でもなんだか嬉しそうだ。ソアンが笑顔で言ったので僕もつられて笑顔になる。
「・・・!ふふ、そうだね。僕も・・そうだ・・。
『星は僕を見ていない』」
the story continues
これにて真実の星編は終了です。期間は空くと思いますが次章も書こうと思っています。




