真実の星 part5
「・・君の病気かなり悪化しているね。最近は戦うのも結構きつかったんじゃない?」
ティルディーは魔法を使い、俺の体を診察していた。その様子はとても手慣れていた。・・ティルディーの言う通りもう病気は末期に近い。苦しくて感覚を鈍くする薬を飲むほどには・・。
「・・・もうここ数年は。でも薬で症状は抑えられているしもう慣れた。・・・主治医ももって数年の命だって」
俺は地面を見ながらそう言った。そう。寿命を言われたのは幼い時。ずっと死と隣り合わせで生きてきた。だから今更死ぬなんて怖くない・・怖くないのだ。
それに死ねば親に会える。弟や妹にも・・。こんな生きていて苦しみしかないような世界から解放される。楽になれる。いいことしかないはずなのに。なのに。
「そう」
「・・・ここへ来るように仕向けたってことは何か手立てがあるのか?」
俺はティルディーを見た。・・あるなら教えてほしい。別にこの病気を治しに星の丘へ来たわけではないが「死にたくない、生きたい」と思う自分が心のどこかにいる。だから聞いてしまう。少しでも生きる可能性があるのなら知りたいと。
「あるよ。答えは簡単!」
ティルディーは微笑むと俺の目の前に浮かんだ。何が簡単にこの病気を治せるんだ?と思ったけど何も言わずに俺はティルディーをじっと見ていた。
「私に、星に願えばいいんだよ。ここは星の丘。星が人に願いを叶える場所・・。だからほら!君の願いを言って!そうすればーー」
ティルディーは嬉しそうに言いだしたがその続きが語られることはなかった。
「だめっ!!!」
・・ティーが突然大声を出してこちらへ走ってきたからだ。息を切らしながら走ってきた。
「・・・・」
俺はティーを見て目を見開いた。多分ティルディーも同じような反応をしている気がする。
「ティー・・・。どうして」
ティー、聞いてたな・・。ティーにはあまり聞かせたくない内容だったため顔を合わせずらく、ティーから目をそらす。もうすぐ俺が死ぬなんんて言うつもりはそもそもなかったのだ。
どうせ二週間の付き合いだと思っていたし、わざわざ死ぬなんて言ってティーに悲しい思いをさせたくなかったから。だけど聞かれてしまったものは仕方がないしそれに多分ティーが今一番気にしていることは・・。
「・・だめって何が?ソアンは病気が治るしソアンが治ればティーは人間の世界でもひとりぼっちじゃなくなる。ハッピーエンドじゃない」
ティルディーは何事もないようにとても嬉しそうな声でティーに言った。だが反対にティーは絶望するような声でティルディーに向かって叫んだ。
「そ、そうだけど星は、星は人の願いを叶えたら死んじゃう!消滅しちゃうんだよ! この世から完全にティルディーがいなくなっちゃう!!!僕がティルディーと契約したときはティルディーの願いを完全に叶えられなかったから消えなかったけどティルディーは天才だし失敗なんてしないし・・・。ティルディーを僕は失いたくない!本当の独りぼっちになっちゃう・・」
泣きながらティーはティルディーに訴えかけた。それを聞いていた俺は目を見開いた。今。とても重要なことをティーは言った。・・・星は願いを叶えたら消えるのか?
「・・・。契約のことは知っているよ。他の星から聞いたからね。それに君は独りぼっちじゃないって。ソアンがいるじゃない。私なんていなくても」
「じゃあなんで!別にティルディーがその願いを叶えなくてもいいじゃん・・。他の星でも・・。なんでなんでティルディーが消えなきゃいけないの・・」
その場にティーはへたり込んでしまった。ティーが言いたいことは分かる。俺もあの時・・俺以外の家族が死んだときなんで俺の家族じゃいけなかったのか。なんで俺だけ置いていくんだと思った。
でも俺の家族の代わりに他人が犠牲になってもよかったのかと言われると俺はなんて答えていいか分からない。今でも・・・・答えは出ない。みんなには帰ってきてほしいけど。
「・・・だめだよ・・。私事なのに他人を犠牲にしちゃ・・。前にも話したじゃん自分のことは自分で責任をとらなければいけないって」
・・・俺はティルディーがティーに対して話している言葉を自分の言葉のようにして聞いていた。自分の責任。でも・・・なら俺がそもそも願いを言わなければいい。生きたいと願わなければこんなに二人が悲しい思いをしなくて済む。・・。。
「・・・・なぁ俺・・願い叶えてもらわないから。大丈夫ティーの大切な人はうばわ・・」
バチーンッ
「・・・・」
思いっきり頬をティーにはたかれた。痛い・・。
「やめて!嘘でもそんなこと言わないで・・・・。ソアンにそんな顔させたかったわけじゃないの。分からないの。ソアンもティルディーもいなくなってほしくないの・・。だから苦しいの・・・。二人とも大事な人だから・・。分かってよ・・馬鹿」
ティーは地面に座り込んでぽたぽたと零れ落ちる涙をぬぐっていた。俺はまだ少しヒリヒリとする頬をさすった。大事な人・・。昔に病気のことを言ったら俺の周りからは人がいなくなった。だけど目の前にいるこの少女は違う・・・。
大事だからいなくなってほしくない・・。でも・・それでも・・。
「・・・・・」
なんて声をかけよう・・・そう迷っているとティルディーがティーを抱きしめるように肩に乗って口を開いた。
「・・・・・私ねティーと離れたけど星になって幸せだったんだ。ティーが居なきゃもう無理って思っていたけど魔術を使ったらみんな褒めてくれるし『もう一人前だね』って認めてくれた居場所ができた。こんなの人間の世界じゃありえなかった。願いではないけど私はもう十分に幸せをティーからもらった。でもその間ティーはひとりだった。きっと私がティーの幸せを奪っていたんだよ。だから返さなきゃ」
ティルディーは泣きそうな声でティーに言った。だがティーは怒ったような口調でディルディーに言い返した。
「ティルディーは天才なのに馬鹿なの!?奪われたなんかいない!僕は幸せだよ!ティルディーがいなくなって寂しかった。もうこんな世界どうでもいいと思ったでも幸せじゃなかったわけじゃない。人間になって温かいご飯を食べた。魔物を討伐しただけで「ありがとう」って感謝された。僕を馬鹿にする人だっていないしここが僕の居場所だって思えた。僕は大きな幸せじゃなくても心が温まるそんな小さな幸せが嬉しかったんだ。だから、だから僕の方がティルディーの幸せを奪ってると思ってたよ・・。だからこんな形でティルディーだけが犠牲になって僕だけが幸せになるのが嫌なの・・つらいの・・」
ティーは大粒の涙を流しながらティルディー(星)を抱きかかえた。
「ティー。でもそれでも私は契約をする。これは私のエゴ。それに・・・ティーは知らないだろうけど一度空から降ってきた星は新月の夜、願いを叶えられないまま空へ戻ると記憶をなくしてしまうんだよ・・。私はティーが来るのを予知していたから今までの新月は降りなかったけど今回は降りてきた。どうせ見守れなくなるならいっそ・・契約した方が幸せだよ。ティーも記憶のない私は嫌でしょ?」
「馬鹿!!いやじゃないよ・・・。いやじゃ・・・」
ティルディーは「おっと、これは予想外の回答だった」とでも言わんばかりにびっくりとしたような顔をしている。
「じゃあティーは私の何が好きなの・・別にもうティーと思い出を語れないなら・・」
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!もう!こんなの恋人がする会話だし!それにっ思い出なら作ればいいじゃん!」
「・・・・ふふ、ティーらしい。でも尚更私は消えるのを選ぶよ。消えて生まれ変わって会いに来てあげる。それに私は犠牲になるだけじゃない「私」っていう足枷を次出会うまでティーに着けるの。だから忘れちゃだめだよ・・」
私はそう言ってティーの額にキスをした。ティーは「そんなことしてる場合じゃない」と怒鳴った後咳ばらいをした。
「・・・・・・分かった」
なんだか分かったような分かっていないような表情でティーはそう答えた。私はそんなティーの表情を見てからソアンに向き直った。
「・・・ソアン。私は君の病気を治したい。どうか願って」
ティルディーは俺を見てそう言った。でもこれで願ったらティーの大切な友人が消えてしまう。それに俺はこの病気を治したいとは前まで思わなかった。病気で短い人生の俺のそばに人なんていなった。居場所知らなかった。でも今は?居場所ができてまたティーと旅をしてみたいと思う自分がいる。もうどうしていいか分からず俯いてしまった。
「それはティルディーの願い事なの?」
ティーが涙をふいてティルディーに問いかける。
「・・・そうだね。星が願いごとをするのはだめだってティーが言っていたけどこれが私が今、本当に叶えたい願い事。お星さまお星さまどうか私の願いを叶えてください・・。・・・叶えてくれる?ティー・・?」
ティルディーは短い手(?)でティーの手を取って言った。
「僕はティルディーの願いを叶えてあげられなかった。今度こそティルディーの願いを叶えられるのなら。・・・本望だ」
ティーもティルディーの手を取り握った。
「ありがとう親友。ソアンでは願いを」
くるりとティーの方から俺の方へ体の向きを変えると俺に手を伸ばして言った。俺はティルディーの手を握った。そして願い事を言った。
「お。お星様お星様どうか俺の病気を治してください」
俺が願い事を言い終えると辺りが瞬静かになった後俺たちのいる辺りが急に光始めた。
ーーー契約が始まったのだ。
ーー補足ーー
星が願いを叶えず戻ると記憶が消えるのはそもそも星としての名誉が人の願いを叶えることなので叶えなかった星は使えないからリセットしよう的な感じです。




