真実の星 part3
「・・!ティルディーおかえり!旦那様からのお話って何だったの?あ、そういえばお菓子は食べてないからね!」
僕は芝生に寝っ転がるのを止め、起き上がってティルディーの下へ近づいた。ティルディーが「お父様に呼び出されたから先に星の丘に行ってて。お菓子は先に食べててもいいから!」と言われたので大人しく一人で待っていたのだ。
なんとなくだがティルディーは暗い顔をしている。嫌なことでも旦那様に言われたのだろうか。もう・・こんなにいい子なティルディーを虐めるなんてひどい旦那様だなぁ・・。
「あのね・・・あのね。ティー・・。私・・。私。この家から出て結婚することになっちゃった・・」
そう言ってからティルディーはボロボロと涙を流し始めた・。いつも元気に走り回って笑うティルディーが泣いたのは今日が初めてだった。
僕と出会ってから悲しい顔なんてしなかったのに今僕の目の前にいるティルディーは何かに恐怖を抱き震えるような小さな子供のようだった。
「・・・ティルディー泣かないで・・。大丈夫。大丈夫だから・・」
僕は少しだけ不完全な祝福の魔法をかけた。これで気分が晴れるというわけではないが気休め程度にはなる。でも不完全なのでどれくらい効果があるかは僕も分からない。多分ティルディーが自分でかけた方がちゃんとできる・・。
「ゔっゔっ・・・」
でも・・結婚・・・。いまだに泣き止まないティルディーを慰めつつ頭の中でさっきの言葉を思い出す。
初めてこの地に降りた時から僕とティルディーはずっと一緒だった。でも僕はここからは出て行けない・・。一緒があと少しで終わる。僕の頭の中が真っ白になった。
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「・・落ち着いた?」
数十分僕を抱きしめて泣いていたティルディーは落ち着いたのか、僕を抱きしめるのをやめて地面に降ろした。
「うん・・・。ねぇ・・ティーはさ、ここから出られないんだよね・・・」
「・・・・出られない・・。星は結界の張られた星の丘から出てしまうと自然の力に耐えられなくて消えちゃうから」
じっと見つめてくるティルディーから目をそらして答えた。
星は魔法を使えて髪みたいで強そうに見えるかもしれないが脆いのだ。それも人間の赤子のように脆い・・。雨や風、雪・暑さ・寒さ・・それらが耐えられなくて消滅してしまうほどに・・。
星の丘周辺には結界が張ってあるため星でも存在を維持できる。星の丘には雨風もなく何もない。無なのだ。唯一星が空から舞い降りる新月の夜を除けばの話だが・・。その夜は星が舞を舞うことで結界が一瞬だけ解けまた新たな結界をはり直す。
「・・・ねぇ・・ティー・・。じゃあ。・・いやなんでもないや」
ティルディーは何かを話すのをやめ、首を横に振った。僕は隠し事をされた気分になり少しむっとした後ティルディーに尋ねた。
「なにを言おうとしたの・・?僕に言えないこと・・?」
いつもはすぐに言ってくれるのに今日は視線を地面に向けて話そうとしない・・。・・・僕達の間に隠し事話だと思ったのに・・。
「・・・ううん・・。あの・・じゃあ。ティー。私のお願い叶えてくれる?」
「・・え?」
僕は口をぽかんと開けティルディーを見た。予想外の答えだったからだ。まさか願いを叶えてなんてティルディーが言うはずないと思ったからだ。あの他人に頼らないティルディーが・・。
「・・・無理ならいいの」
そうポツリとティルディーが言い僕は我に返った。ティルディーがせっかく僕にお願いをしている叶えてあげたい・・。
「違う!無理じゃない。ただ・・驚いて・・」
「・・・・・・・」
ティルディーは無言で僕を見つめている。本気なんだろうと思った。だから僕はその願いを叶えようとした。幸せをあたたかさをくれたティルディーに何か返せるならと思って・・。
「なぁに。願いって・・。ティルディーのお願いなら全部叶えるよ・・」
魔法を上手く使えない僕でもティルディーのためならこの命に代えてでも叶えたい・・。世界を征服したい壊したいという願いでも・・。
「・・・あのね。ティー・・。私。ティーと一緒に星になりたい。・・これが私の願い。叶えて・・・くれる?」
・・・想像と違った願いだった。僕は結婚しなくてもいいようにとか願うんだと思った。まさか星になりたいなんて・・・。・・・僕にとってはあまりいたくない星の場所。みんなが天才で・・僕に居場所なんてなくて・・・。でもティルディーが言うなら。一緒に戻れる・・・。でも・・。
「・・・いいよ。願い叶えてあげる。ティルディーのお願いならなんでも」
僕はそう言い、この地上で契約の魔法を使った。そしてティルディーの願いを・・・。
『叶えられなかった』
ティーは望むようにして星になった。そして僕は人間になった。・・・魔法で魂を入れ替えたんだ。そしてティーを空へ転移させた。結果的に僕は魔法が上手く使えない愚図だったからもともと叶えられない願いだった。
体を作り変える魔法はかなり難易度が高い。みんなの星の所へ帰れないような僕ができるとは思ってなかったけど。でも挑戦したかった。叶えてあげたかった。
「・・・・・ごめんね・・・・・ティルディー・・・」
僕は一人で泣いた。願いをまともに叶えられなくて悔しい涙なのか親友に簡単に会えなくて悲しい涙なのかもう感情がぐちゃぐちゃでわからなかった。
それに僕の願いも叶ってしまった。「人間になりたいという願い・・」もしかしたら感情が作用して失敗したのかもしれない・・。でもそれでも・・・やっぱりティルディーと離れるんならこんな願い持たなきゃよかった・・。
「ティルディー・・・ごめん・・会いたい・・ティルディー・・」
たくさん泣いた後僕はこれからどうしようか考えた。その時に思い出したんだ。ティルディーが昔助けた男の子の話を。『絶対彼ね、星の丘に将来来るのよ』ってティルディーが自信満々に言ってたから覚えてたの。
だから僕は君を探した。どうせ生きる元気もあんりなかったしどうせなら会ってみようかなって思って。
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・・・・この後僕は君に会ったんだ。あのギルドで。
「・・・ソアンの記憶は正しいよ。だってこの姿は当時ソアンを助けたティルディーの物なんだから。だから間違えたんだ」
「・・・・・」
俺はなんて言えばいいか分からず地面を見ていた。
「・・・時間だよ。ソアン・・君が探していた人物が来る・・」
ティルディーは空を見て指をさした。 ・・・夜が来る。・・星が来る・・。




