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星は僕を見ていない  作者: 雪道 蒼細
二章 謎の症状編
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謎の症状 part7

 戦闘に街の人たちが巻き込まれないように俺とティルディーは街の外へ逃げ魔物を誘導した。

 街の人たちは症状が治まったばかりで、まだ寝起きの人やすぐには立って逃げられない人が多くいる。逃げろ!と大声で言っても無駄だろう。だから俺たちは街の外へ来た。街の外は何もなく草原が広がっている。ここなら多分、多少無茶をしても被害はない・・。


 ・・・・・多分だからな・・・?


 「『精霊よ 光をこの地に 裁きの雷を』!!」


 おっと、戦闘はもう始まった。ティルディーは呪文を唱え雷を魔物に向かって落とした。とても大きな雷で人が当たったら無事では済まないだろう・・。そんな気がする。冒険者の勘だろうか?

 俺もティルディーの雷に当たらないよう魔物に近づき一撃入れようとしたが、魔物の後ろ脚に蹴り飛ばされた。・・・魔物は感覚が人の数倍は鋭い。普通に近づくだけでは、たとえティルディーが魔法で攻撃している間でも気づかれるだろう。


 「っくっーー!!」


 俺は蹴り飛ばされた勢いで少し体制を崩したが、すぐに立て直し魔物を見る。すると魔物は火の玉を数十個作り上げ俺達に向かって攻撃してきた。

 魔物は食べた星の得意魔法をそのまま受け継ぐ。例えば水魔法が得意な星を食べたら魔物も水魔法が得意魔法となる。だから星を食べた数が多ければ多いほど魔物は得意魔法が増えどんどん強くなる。・・・まぁ得意魔法だから高難易度の専門魔法が使えるってだけで結局はどんな魔法でも使えるから厄介は厄介なのだけど・・。


 ・・・そうこうしているうちに火の玉が近づいてきた。さぁ。どう対処しようか・・


 「『水の精霊よ 心溢れる雨に 守りを』!」


 ティルディーが俺たちの前に水の結界を作り出し火を消した。相殺というやつだろう。どう対処しようと考えているうちに敵の攻撃は消えてしまった。まぁ有難いは有り難いが。


 「『精霊よ 眠りゆく我らに 静けさを』」


 ティルディーはまた呪文を唱え次は霧を作り出した。・・視覚を奪うのか・・俺もこれで一撃入るかな。

 魔物の気配を探りつつ気づかれないように細心の注意を払い背後へ回った。

 よし、いける!


 「はあああああっ」

 「ギュアアアッ」

 

 背中辺りを切り付けることに成功した。

 だが人と同様、生命活動を停止させなければ、魔物は倒せない。俺は一旦後方へ下がることにした。その間ティルディーは氷を魔術で作り出し魔物に向かって突き刺す。

 俺はその光景を見て昔師匠に言われたことを思い出した。

 ーーー俺の剣の師匠は言っていた。多くの星を喰った魔物と戦うには戦士は不利だと。そもそも魔術師以外の職種は対魔物戦には不利らしい。剣は魔法には勝てない。ずっとそう言われて育ってきた。

 だから魔物とは魔術師と一緒にバディーかパーティーを組んで戦うべきだと。俺は剣が魔法に勝てないはずないと思ってずっと一人で戦ってきた。魔術師にバディーを組まないかと言われてもずっと断って来たから魔術師と二人で魔物と戦うなんて初めてで上手くいかないと思っていたが。

 (意外と戦いやすいんだよな・・これが。戦いの相性いいのか?俺ら)

 

 ちょっとだけ口角を上げティルディーと魔物の戦闘に視線を戻す。ティルディーが先程作り出した氷は魔物が口から炎を出し氷を溶かしてしまった。・・氷をあんな一瞬で溶かすとかどんだけ高温なんだよあの炎・・。若干引いた。けど魔物が氷を溶かしている間に少しだけ隙ができた。

 俺は剣を振り下ろし、次は足をと思ったが魔物がくるりとこちらを向き、氷の鋭い粒を放ってくる。近くにいたため、攻撃をモロに食らってしまった。何個かは切り落とすことに成功したが全部とは難しく足、頬など氷の粒がかすめる。

 そこから赤い血がポタポタと地面に落ちる。そこまで深手は負ってないが地味に痛い。ティルディーが杖を構えたので魔術の邪魔になってはいけないと思い俺は後ろへ下がった。


 「『精霊よ 大いなる嵐を 巻き起こせ!』」 


 詠唱の後大きな竜巻が魔物を襲う。・・・が魔物も対抗し氷で大きな壁を作った後炎こっちも竜巻を作り上げた。ティルディーの竜巻は炎の竜巻に押しつぶされ消えてしまった。ティルディーの竜巻を取り込んだ魔物の竜巻は威力を増しティルディーのもとへと向かってくる。ティルディーは水の結界を魔術で作り出し魔物の竜巻を消した。

 その間に俺は魔物が作り出した氷の壁を斜めに切り魔物と距離を詰め魔物の体を剣で突いた。魔物は血を吐いた。俺は剣を抜いた後、もう一度斜めに剣を振るい一撃を入れた。そして先程俺が壊した壁の破片をティルディーが鋭い刃に変え魔物へ突き刺した。俺はまとめて刺されないように横へとずれる。 

 だがその攻撃は魔物に届くことなく魔物が炎の結界を作り出していた。だが結界と治癒の魔法を同時に行っているせいか少しだけ結界の魔法が弱いように見えた。これなら俺も壊せると思い、思いっきり剣を結界に対して振るう。だが結界に反撃魔法が掛けられていたらしく結界に傷を入れたと同時に俺の太ももに植物の棘のようなものが突き刺さった。


 「ーーーーーっ!!」


 「ソアン!!!」


 太ももから血が流れている。かすったのとは違って刺さったので痛さが先程の比ではないぐらい痛い。一旦結界から離れ、布で応急処置をしようとするとティルディーが近づいてきて俺の太もも近くに手を当てて呪文を唱えた。


 「『精霊よ 時に逆らい 導きの光を』・・・」

 

 そうティルディーが言うとだんだんと痛みが引いてきた。魔術ってすげぇ・・・。


 ーーー『剣は魔術に勝てない』ーーやっぱこの通りかもな・・俺は首を横に振り、その後顔を上げティルディーを見る。今は戦闘の途中だ余計なことは考えない考えない。


 「助かった・・ありがとうティルディー」

 「・・治せるけど気を付けてソアン・・」


 ・・気を付けるがそもそも戦士って職業柄怪我をするもんだが、今はそれどころではない。相手も治癒魔法をかけていたから多分体力は減っても、俺とティルディーが付けた傷は消えてしまっている。だがそんなことを気にしている場合じゃない。くよくよする暇があるなら早く目の前にいる魔物を倒さなくては・・。


 「よしっ!!」


 俺は結界の外へ飛び出し一直線に魔物もとへ走り出す。魔物は炎を口から出し俺に当てようとしている。だが簡単に当たる俺ではないので右に避け、魔物とだんだん距離を詰めていく。俺が避けた炎はティルディーの下へと向かっていくが。


 「『水の精霊よ 心に溢れる 雨を今ここに』」


 水を出す魔術を詠唱し、思いっきり炎の上に被せていた。だが魔物はこれで終わりではないと言わんばかりに地面を氷にしてそこから氷の剣を次々と作り出している。その標的が誰かというと・・


 「・・・!そうだよな・・俺だよな!」


 運悪くターゲットにされてしまった。だがこんなに至近距離に来ておいて退いたらもったいない!俺は向かってくる剣を次々に切り落とす。漏れた分はティルディーが風の魔術を使い剣の刺さる方向を変えてくれている。よっしこのまま魔物に斬撃を・・と覆った瞬間。


 「うわっ・・・・!」

 

 地面が氷なことを忘れ足に力を入れようとしたら滑った。まずいこのままでは次の攻撃が来る!


 「ーーーーっ!『精霊よ 光をこの地に 裁きの雷を』」


 ティルディーが雷の魔術を魔物に浴びせてくれたおかげで魔物は少し怯み氷の剣からの攻撃を逃れられた。助かったティルディー!


 「ありがとう!ティルディー!」


 俺はティルディーにお礼を言った後魔物に近づき二回攻撃を入れることに成功した。このままもう一発と思ったが・・


 「痛ーーっ!」


 俺は後ろからの魔物の攻撃に気づかず氷の柱に貫かれかけてた。間一髪のところで風魔術をティルディーが発動してくれたおかげで腕をかすめるだけで済んだ。それに上空へ飛ばされたおかげでこのまま下へ落下すれば魔物を突き刺せるということに気が付き、攻撃の体制に入る。このままいけるーー!

 

 「剣だって魔法に勝てるんだぜ!」


 俺はそう言い魔物の心臓部分を突き刺す。魔物は声を荒げその場で暴れている。暴れるせいで魔物の爪が顔や足に引っかかれたがあと少しで倒せるんだ。こんなもん怪我に入らない!俺は顔をしかめ、最後の一撃を入れようとした。がーー人影が視線の端に映った。

 

 「ま、待て!!!」

 「うわって領主様?」

 

 目の前に現れたのは領主だった。見た目も汚れていて息切れもすごい。屋敷から全速力で走って来たんだろう。というか急に現れないでくれ・・突き刺すところだった。


 「・・・この魔物が・・・・私の・・私の妻なんだな?」


 悲しそうな顔をして言う。多分分かっていて聞いている。けど・・・現実を最後まで認めたくない気持ちは痛いほど分かる。分かるがこれが現実だ・・


 「・・・」

 

 魔物も襲おうともせずじっと領主を見ている。意外だった。魔物は・・領主には興味がないと思っていた。だからすぐに襲おうとするかと思っていた。


 「君に一つ問おう・・・。君と結婚する前の君は演技だったのか?嘘だったのか?・・・ずっと私を騙していたのか・・・?」


 震えうような声で領主は魔物に質問した。魔物の恐怖ではなく妻に裏切られていた。騙されていたという事実が恐ろしいんだろう。俺でも・・・。信用していたのに裏切られたら、今までの思い出を偽りと断定された気分になる。


 「・・あたしはずっとあたしよ。あんたとの思い出も全て嘘よ・・」


 魔物は視線を横に逸らし答えた。・・


 「・・でも 私には嘘に見えなかった。結婚後変わっても街の人に対しての笑顔も嘘には見えなかったんだ・・!」


 領主の目からは涙がこぼれた。全て嘘だと言われても・・。領主は信じている。信じているんだ・・。


  「・・・いえ、全て嘘よ。嘘だから嘘だから、あたしはこの街を乗っ取るつもりだったの、そう演技

あんたとの思い出も・・全部、全部が・・・嘘だから・・」


 そう言うと魔物は領主をつきとばした。とても悲しそうで苦しそうな表情を見せながら。傷ついているのは領主だけじゃない・・・きっと魔物も・・・。


 「っつ、、そうか・・・嘘か・・・・じゃあ私も君が嫌いだ」

 「・・・・・っ!」


 魔物は目を見開いて領主を見た。信じられないなにかを見たかのように・・。


 「・・・・・・ごめんね・・・嘘を・・ごめん」


 魔物はそう言い終えると俺たちの方へ走り魔法を使おうとした。俺は倒していいのか迷い受け身の体制だけとっておく。そして魔物を正面に捉えると・・。


 『冒険者さん・・・倒して・・・』


 ーーーーそう耳に聞こえた。俺はそう言われれも殺そうか迷った。だって・・だって魔物とだって友達になった人がいるんだ。だから夫婦だっていてもいいんじゃないか。俺は頭の中でグルグルと考えた。だがその数秒後、魔物は俺が構えていた剣で自分を刺した。


 「ーーっ!!!!」


 魔物は嬉しそうな切なそうな表情をし地面に倒れた。最後に領主の顔を見ようとしているのか少しだけ動こうとしている。でも数秒後には動きも鈍くなった。それに気づいたのかたまたまか領主は魔物のそばに座った。領主は魔物の耳元に近づきこういった。


 『ごめん・・愛してる』


 ーーーーと。


 魔物は動かなくなり、その場で息絶えた。

 

 「・・!ううっ・・・」


 領主は声を殺しながら静かにその場で泣いた。・・・魔物は街を乗っ取るつもりで領主に近づいたのかもしれないだがもしかしたら・・その愛情は本物だったのかもしれない。


 けどその愛情をどうだったか愛情があったから殺さなかったか・・その思いが心を通過するのはもう遅い。彼女は・・息絶えてしまったから。



 

 

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