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星は僕を見ていない  作者: 雪道 蒼細
二章 謎の症状編
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謎の症状 part4

 旅三日目。新月まで今日を入れて後十一日。芝生の上で寝たおかげか昨日よりは体が痛くない。今日は何か有力な情報が手に入ればと考えていた時、街の人々がざわめき始めた。


 「ティルディ、ティルディー。起きろ。何か向こうの方であったらしい」


 俺は急いでティルディーを起こした。否、起こそうとしたである。二日目同様ティルディーは起きない。今回は謎の症状が街全体に蔓延しているため、前みたいにニワトリを借りるということはできない。

 ・・・どうしたものか・・。俺は近くのもので代用できないかと辺りを見回す。だが代用できそうなもの・・・なんてそう・・あ。

 俺は鞄に代用できそうなものが入っているのを思い出した。

 そして手に取る。


 「・・・・これなら・・・」


 多分今の俺の顔はめっちゃくちゃ悪巧みを考える悪ガキのような顔をしているだろう。まぁ事実だししょうがないが・・。

        ・・

 俺は手に持ったソレを思いっきりティルディーの耳元で吹いた。それはもう勢いよく。


 「ピイイイイイイイッッッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」


 と鳴った。冒険者内でもうるさいと評判の”ソレ”はティルディーも起きた。俺も貰ったときはうるさ・・・と思ってあんま使わなかったけどこんなところで役立つとは。


 「ぎゃあああああっ何々!?」


 ティルディーは飛び上がるように起きた。・・・まぁ作戦成功だろう。ちょっとやりすぎた気もするが。ごめんティルディー。


 「おはよう。ティルディー、急ぎの用だ。起きてくれ」

 「わ、分かった。けど・・今日は何で起こしたの・・?めっちゃうるさかったんだけど」


 怪訝そうな顔で見つめてくる。今日のは相当嫌だったらしい。


 「あ、今日はな・・。これだ!」


 俺はティルディーに見せつけるようにそれを出した。そう俺が出したのは笛だ!この笛は仲間に自分の居場所を伝えたりするための笛で、俺もパーティーを組んで、はぐれた時とかは使っていた。結構うるさい音だから気づいてもらえるがまぁ魔物に見つかったりもするから微妙な所だ。

 

 「・・・・今度からはさ、起きるから。それ絶対使わないでね・・」


 めっちゃくちゃ機嫌が悪そうな顔で睨まれた。こわっ・・・。まぁでも起きてくれるなら問題ないだろう。ティルディーは眠そうに目をこすりながら立ち上がった。そして俺とティルディーは騒ぎがする方へ向かった。

 そこへ向かう中ティルディーはふと何かを凝視していた。


 「お香・・・。珍しい平民の家にあるなんて・・」


 そうポツリと言い残しながら・・


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「奥様だわ!」

 「奥様!あの薬を!」

 「奥様!奥様!」

 

 「奥様」と呼ばれている人物の周りを街の人達が取り囲んでいる。囲んでいるみんなは比較的症状が軽い人達だ。


 「はぁっはぁ。これは何事だ?」


 駆け付けた俺たちはこの状況に困惑した。俺が辺りを見回しているとティルディーが俺の服の裾を掴んでいた。少しだけ震えてるような気もする・・。


 「ティルディー。大丈夫か?何か分かったか?」

 「あの囲まれている女の人・・なんか嫌な気配・・。あんま近づきたくない」


 ティルディーが声を震わせながら言った。


 「あいつから!?じゃああいつが黒幕・・?でもここで戦闘になったら周りの人を巻き込んでしまう・・」


 どうしようかと悩んでいるとこちらに足音が近づいてきた。顔をあげると先ほどまで街の人達にに囲まれていた『奥様』が俺の前に立っていた。さっきティルディーが言ったせいか俺も少しだけ手足が震えた。

 もし魔物だったら街の人達が危ない・・。そしてこの至近距離なら俺なんてすぐ殺られる・・。詠唱を必要とする魔術師のティルディーならなおさら。


 「あなたたちが冒険者ね・・。ねぇあなたたちも何か症状に困ってない・・・?よかったら、この薬をあげるわ。気休め程度だけど薬よ」

  「あ、ありがとうござ」


 緊張しながらも薬を受け取ろうとすると腕を女に掴まれ耳元でささやかれた。


 『何をしても・・無駄なの・・・・』

 「ーーーっ!!!」

 「じゃあ。またいつか」


 そう言うと『奥様』は館のある方へ戻っていった。・・・なんだか想像と違った・・・なんというか悲しそうな表情をしていた。・・言葉も俺達に向けてというより・・・。俺は『奥様』がいなくなった方を見つめていた。するとティルディーは俺の手のひらにある薬をじっと見つめていた。


 「ーーーこれが薬?」


 はっ!そうだ薬!よくわからないが気休め程度と言っていた。謎の症状の対策薬なんだろうか・・?


 「・・・ねぇソアン。多分この原因って・・・」


 ティルディーが俺の耳元で言葉を発した。俺はその言葉を聞いて目を見開いたが、それは俺もこの街で見た。だからティルディーの仮説は正しいのだろう。


 「ーーーーそれが本当なら今からでも領主に問い詰めるか?」

 「そうしよう」


 俺とティルディーは顔を見合わせ、館のある方へ走っていった。

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