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星は僕を見ていない  作者: 雪道 蒼細
序章 星の下の運命
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星空の下の運命

 ー君は誰?ー


 俺は意識が朦朧としている中、目の前に立っている少女そうに聞いた。


 星のように暗闇でも輝く金色の髪をなびかせ、ルビーのような赤色の目を、俺を誘拐した男たちに向けている少女に・・。


 少女は俺の声に気が付きこちらに近づいてきて、俺の目の前でしゃがんだ。そして少女は人差し指を自分の口元に置いて口を開いた。


『新月の夜、夜空で星が一番輝く日。星は人の願いを一つだけ叶えるだろう。この世界で一番暗く、星が地で最も輝く星の丘で。 星空の運命の下。星は君を導く。きっとまたそこで出会うだろう。』


 ーそれってどういう・・ー


 そう聞こうとしたがそれよりも前に俺の意識が途絶えた。最後に見えたのはやっぱり暗闇でも輝く金色の髪とルビーのように綺麗な赤色の瞳だった・・。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「・・・夢か・・ゴホッゴホッ。」


 俺は咳をしながらベッドから上半身を起こす。そして近くに会ったコップに水を注ぎ、一気に飲みほした。・・・・久々にこの夢を見た。十年前、俺が八歳の時誘拐されたときの夢。


 十年前のあの日。母親に頼まれ、お使いで街に出ていた俺は買い物を終え帰ろうとしていた時に誘拐された。いつも街に出かけるときは持っていなさいと言われた守護のお守りをその時はたまたま忘れていたので抵抗するすべもなく捕まった。


 このころはまだ街の治安法がちゃんとしていなく街の警備兵も少なかったため誘拐は多発していた。子供や女性は一人では出歩かないようにと呼びかけられていたけど俺の家は父と母、それに小さい弟の四人家族。父は仕事で母は弟の世話にかかりっきりのためお使いは俺一人で行くしかなかったのだ。


 まさか誘拐されると思っていなかったし身近にそう言う話を聞かなかったから所詮噂話だと思っていたのだ。だけど自分が誘拐されると「本当に誘拐なんて存在するんだ。」と改めて思い知らされた。


 そこから俺は上半身に麻袋をかぶせられ。口にはひもを噛まされしゃべることもできなかった。


 捕まった後はこの後どこに売り飛ばされるのかもう戻れないのかという恐怖で震え、泣いていたところを一人の少女が助けてくれた。


 まだ俺と同い年ぐらいだったのに大きな大人をどんどんと魔術で倒していった。その時のことは今でも記憶に残っている。魔術を見たのもこの時が初めてだ。とても綺麗な魔術だった。


 そして今でも夢を見るたびに考えるのは俺を助けてくれた少女が去り際に言っていた言葉。


『新月の夜、夜空で星が一番輝く日。星は人の願いを一つだけ叶えるだろう。この世界で一番暗く、星が地で最も輝く星の丘で。 星空の運命の下。星は君を導く。きっとまたそこで出会うだろう。』


 昔はなんかもやがかかった感じで「星の丘」のフレーズしか聞き取れなかったけど最近ははっきり聞こえるようになった。いや思い出せるの間違いか。・・もし、あの言葉が本当ならもう一度あの少女に会うことができる。


 ・・・でも顔覚えてない名前も知らない少女に会っても分かるのだろうか・・。髪色と目の色しか覚えていない少女に・・・。


 でも・・・会えるならお礼を言いたい。それに、なんとなく会わなきゃいけないような・・そんな気がする。


 俺は自分の手を握りしめベッドから立ち上がった。考える時間があるなら行動しなければ・・。時間は無駄にできない。だって・・時間は有効だし・・。・・・無限じゃない・・。


 ・・・無限ならどんなにいいことか・・・。そう思い俺は寝間着から着替え外に出た。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そう言えば自己紹介を忘れていた。俺の名前はソアン。苗字はない平民だ。・・どうでもいい情報かもしれないが陰キャである。


 いや・・どうでもよくないな陰キャだ!真っ黒の服装でスパイとかと間違われたりするほどの黒だ!いいか、陽キャではない!顔がいいからって陽キャだと決めつけるなよ!


 ・・ゴホン・・。まあ、このことは置いておいて・・。


 年は十八歳、ギルドの所属で戦士をやっている。ギルドというのは星を喰う『魔物』を倒す依頼を受けることができる施設で貴族や王族以外なら誰でも所属することができる。依頼は魔物討伐以外のこともあるがほとんどが魔物討伐関連のことだ。


 ランク付けもあって初級・初級+・中級・中級+・上級・上級+


 の六つに分けられている。最初は初級からで、進級方法は二つ。一つは月に一回ある進級試験を受け合格すれば次のランクに昇級することができる。飛び級は無くてランクが上がるごとに依頼できることも増えていき給料も増える。


 二つ目は、魔物討伐の数だ。多ければ多いほどランクは上がっていく。ちなみに俺は上級だ。魔物は数十年前に討伐された魔王が作り出した配下で、空に浮かぶ星を喰う。魔王が倒されても彼らが生き続けているのは星を食べ、自然の力を得て魔法を使うからだ。


 ・・・星は夜空で輝き人々を見守っている。俺達から言えば守り神のようなものだ。星は自然の力を利用し特別な『魔法』を使うことができるが自然に少しでも影響が出れば魔法の威力は弱まってしまう。


 その隙をつくように 魔物は夜空に輝く星を食べるのだ。星がいなくなれば俺たちは守り神を失うも同然恐怖に包まれこの世界は混沌に陥る。そのようなことを防ぐためギルドという組織を国が作り魔物を討伐するのだ。


 ・・・話がずれたな、まあギルドで討伐をしつつ星の丘の場所の情報収集ほしているというわけだ。


 ギルド本部にも問い合わせてみたが星の丘の居場所は特定できないらしい。それに最初の方は掛け合ってもくれなくて探してもらえるようになったのは上級になった最近のことだからすぐに見つかるはずもないんだけど・・。


 運が悪いのかそれとも、欲しいものは自分で見つけろってことなのか・・。俺は複雑なで思い空を見上げた。欲しいものは自分で手に入れなくちゃ意味がない。・・・分かってはいるけど・・自分じゃどうしようもないことはどう手に入れたらいいんだよ・・。


 「・・・うわっと。」


 空を見上げ歩いていたら近くの石に足が引っかかり転びそうになった。・・・・よそ見をして歩くのは危険だな。うん。やめよ。


 ま、まあ俺も少女の言葉と童話ぐらいでしか星の丘なんて聞いたことがないのだが・・。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そうこうしてるうちにギルドへ着いた。俺はギルドの扉を開き、近くの受付嬢に依頼状況を聞くことにした。


 ・・・あまり女性に積極的に声をかけるのは得意ではないがやむおえない。よし・・。ここは勇気を振り絞って聞こう。俺は心の中で決心して深呼吸してから受付嬢に声をかけた。


 「・・す、すみません。受注可能な依ら…。」


 「なんなんだよお前!!俺様が声をかけてやってるのに。」


 ギルドの奥の方から怒鳴り声が聞こえた。びっくりした。喧嘩だろうか・・・。やめてほしいなこんな地方の穏やかなギルドで喧嘩とか・・・。


 ーーーーーーっというか今の怒鳴り声のせいで俺の勇気が水の泡になったんですけど!?


 もう一回心の中で決心するのって大変なんですけど!??どうしてくれるんじゃい!!??・・・・おっと失礼失礼。俺は咳ばらいをした。


 内心怒り狂ってしまったがなんでもない。大丈夫だ・・・。俺は一度深呼吸をし、心を落ち着かせ周りを見る。


 目の前にいる受付嬢はギルドの奥で聞こえた大声にびっくりして固まっていたが、我に返ったのか声のした方へ走っていった。


 俺も声がした方に駆け付ける・・。 一発殴らんと気が収まらん・・。顔面あたりに・・。

 

 ・・・・・いや違う・・。様子見だ。そう野次馬しにいくだけだ・・。勘違いしないでくれ・・殴ろうなんてそんな野蛮なこと考えるわけがないじゃないか・・そう陰キャだし・・ハハ・・。。


 ぶつくさ独り言を言いながら先程、怒鳴り声が聞こえたギルドの奥の方へ行った。行ってみると顔が怖い大男とフードを被った少年が部屋の真ん中に立っていた。。


 ・・・・顔の怖い大男の方は、あの顔・・そのままお化け屋敷に使えるんじゃね?ってぐらい怖い顔だ。


 少年の方は顔が見えないから何とも言えない。俺のいる方に少年は背を向けているから顔はわからないのだ。


 「・・・。」


 怒鳴られているフードの少年はじっと顔が怖い大男を見るだけで何も言葉を発しなかった。


 多分、どうしたらこの顔が怖い大男の怒りを鎮められるか言葉を選ぼうとしていたのだろうがそれが凶と出た。


 「お前!馬鹿にしてんのか!」


 大男は自分が侮辱されたと思いキレたのだ。大男は声を荒げ少年を殴ろうとした。


 「ギ、ギルド内での過度な暴力は禁止です!処罰対象です!!活動停止になりますよ!やめてください!」


 今までハラハラとこの状況を傍観していたギルド嬢も慌てた様子で仲裁に入ろうとした。だが顔が怖い大男の耳には入ってないようで・・・。


 ギルド嬢を見もしてない。というか多分存在も気づいていない。


 「・・・・・」


 その間も何も話さない少年に顔の怖い男はブチギレ、今度は本当に少年の頭を目掛けて拳を突き上げた。


 「キャッ!」


 少年は間にいた受付嬢を突き飛ばし杖を構え何か呪文を唱えようとした。だがその様子に俺は気づかず、少年が危険だと判断し顔の怖い大男の腕を掴み後方に投げ飛ばした。


 「っっぐっつ。」


 大男はガクッと意識を失った。頭からは血が流れている・・。多分柱の角に頭をぶつけたんだろう。


 はぁーなんだろめっちゃすっきりした・・・。いやぁやっぱり許せないよな・・・うん・・。

 

 少年は予想外の出来事だったのか目を見開いてこちらを見ている。受付嬢も何が起こったのかわからない様子だった。


 当事者たちは訳が分からなそうだったが、これを見ていた人たちは軽い悲鳴を上げた。周りの悲鳴などでやっと我に返った俺はだんだん事のやばさに気づいた。・・・やばい。


 目立っている。・・・それにやばいやりすぎた。そう思い俺は血の気が引いた。ギルド内での過度な暴力は処罰対象だ。最悪活動停止もありえる。先程ギルド嬢も同じことを言っていた。


 ・・・隠蔽すればバレないか?この黒い格好だし気づいたらこうでした。俺は後からやってきただけ・・みたいな・・。


 いや目の前にギルド嬢がいる。現行犯だ・・・。ほら、もうギルド嬢があんぐり口を開けて俺を見ている。それにもうこんだけ人が集まっている。


 手遅れだ。あぁせっかく上級戦士になれたってのに・・。少しだけ自分を馬鹿にしていた人たちより上に立てて優越感に浸れた三か月だったのに・・。短い冒険者人生だったな・・。俺は冒険者人生の終わりを悟り心の中で別れを惜しんでいると


 フードの少年が俺の服の裾を引っ張っていた。


 「・・・。」


  あ、自分のことばかりでフードの少年の存在忘れてた。


 「お前、大丈夫か?」


 「・・大丈夫。」


 俺が慌てて声をかけると少年はフードを外した。フードの中から現れたのは長い金髪で目元はくりっとした宝石のように綺麗な赤目の女の子だった。


 ーーーー女の子だったのかーー!!!??


 俺は心の中でそう叫んだ。そして心のなかで少年に・・いや少女に

 

 「性別間違えてごめんよ・・。」と詫びた。・・・本人には間違えたこと知られていないしな・・。

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