表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/44

魔法の威力

「先生……アレは一体何ですか?」


正体不明の化け物を目の当たりにし戸惑いを隠せないリサ。


驚愕の表情を浮かべながら思わず後ずさりしてしまう。


「アレがファントム、魔法使い認定試験の相手よ。という訳で軽くやっつけちゃいなさい」


 相変わらず能天気な命令を下す我が母。するとその声を聞いたお坊さんや神父さんが一斉にこちらを振り向くと


先程までの険しい表情が一変し、皆がパッと明るい表情を浮かべたのだ。


「マヤ殿、マヤ殿が来てくださったぞ‼」


「遅かったじゃないですか、待ちくたびれましたぞ‼」


「これで安心じゃ、忌々しいファントムめ、これで終わりだ‼」


 それまで切迫したムードがガラリと変わり、皆歓喜の声で母さんを迎えていた。


母さんに対するこの信頼感は何なのだろうか?


「見た所、図体はデカいが、動きは鈍い、ランクCといったところか」


「うん、私の読み通りリサちゃんのデビュー戦にはもってこいの相手じゃない。


さあ、さっさやっつけちゃって、リサちゃん‼」


 父さんと母さんは訳の分からない会話を交わしているが


聞いてもどうせ説明してくれないだろうから、もう聞く事もしない。


しかし本当にあんな化け物を倒せるのだろうか?


「先生……無理ですよ、あんなの。オーガよりも大きいじゃないですか⁉」


 リサは母さんからのゴーサインに応えることなく、顔面蒼白でガタガタと震えていた。


これでは戦いどころじゃないだろう、どうするんだよ、母さん……


「いいから、やりなさい、まずはファイアーウェーヴ‼」


 明らかに困惑しながらも、リサは震える手で魔法の杖をかざした。


「ファイアーウェーヴ‼」


 リサが震える声で魔法を発動させた。その言葉に呼応する様にかざした魔法の杖の先がキラリと光った


そして次の瞬間、巨大な炎が凄まじい勢いで化け物目掛けて放たれたのである。


「マジかよ⁉」


「うそ……」


 リサの放った魔法の炎は巨大な化け物を一瞬で包み込む


炎の明かりで周りは赤く染まり、爆炎による放射熱でこちらの顔まで熱く感じる程であった。


衰える事の無い炎の勢いはファントムと呼ばれる相手を容赦なく飲み込み焼き付きしていた。


「凄いじゃないか、リサ‼」


 俺が思わず声を掛けると、何故かリサ自信が一番驚いていたのである。


「な、何で……この凄まじい炎は本当に私の魔法なの?」


 全身を炎で焼かれ悲鳴を上げるファントムを呆然と見つめているリサ。


「何をボーっとしているの、続けてアイシクルランサーよ」

 母さんに注意され、リサは我に返った。


「あ、はい、アイシクルランサー‼」


 リサが続けて放った魔法は無数の氷の槍を出現させた。


しかもその一本一本が電柱ほどもある巨大な物、それが数十本と空中に浮かんでいるのだ。


「シュート‼」


 リサの掛け声とともに巨大な氷の槍はファントムに向かってもの凄い速度で飛放たれた。


それはまるで槍自身が意志を持っているかの様に真っ直ぐに向かい、次々とファントムの体を貫いていく。


〈グモーーーー‼〉


 なんともいえない悲鳴のようなファントムの声が夜の埠頭に響き渡る。


周りのお坊さんや神父さんも〈おおーー〉という感嘆の声をあげていた。


「す、凄い……」


 俺はリサの放った魔法のすさまじさに言葉を失い見とれてしまっていた。


 素人目から見てもリサの魔法があの巨大なファントムを圧倒しているのがわかる。


巨大な炎と氷の槍にボロボロにされのたうち回るファントム、この時点でもう勝敗は決したと言ってもいいだろう


そんな光景を呆然と見ていた俺に母さんが声を掛けてきた。


「ね、凄いでしょ、ウチの生徒のリサちゃんは」


ウインクしながら可愛らしく俺に語り掛けてきた母さん。


確かに今のリサは凄いとは思うが、いい年をしてそのリアクションは何だよ……


「でもね、あの子の凄さはこんなモノじゃ無いのよ。見ていてね、正樹ちゃん」


「こんなモノじゃないって……どう言う事だよ?」


「魔法使いの素質は生まれ持ったモノや鍛錬の成果というのも大きいけれど、性格も大事なの。


今までの魔法はいわばデモンストレーションの様なモノ。

あの子が本当に得意な魔法は風系統の魔法


特に雷撃系は私をはるかにしのぐ威力をもっているわ。


生徒の間では【雷撃姫】と呼ばれているぐらいなのよ、しっかりと目に焼き付けてね、正樹ちゃん」


 珍しく真剣な口調で語る母さんの言葉に俺は思わず息を飲む。


今までの魔法はデモンストレーションだと⁉じゃあ一体……

 


これ程のモノを見せられるともはや注目すべきは勝敗ではなく、どれほどの魔法を見せてくれるのか?という一点である。


その瞬間を見逃さない様にと、俺の目はリサの一挙手一党則に注目していた。


「さあトドメよ、リサちゃん、アークギガサンダーをお見舞いしなさい‼」


 母さんの指示に対して力強く頷くリサ。もう怯えている様子は微塵も無い。


むしろ自身の魔法の威力に酔いしれている節さえあった。


「はい先生。じゃあ行くわよ、アークギガサンダー‼」


 リサのかざした魔法の杖の先が光ると同時に、俺の背中に冷たいモノが走った。


それは例えようのない感覚、恐怖とも絶望とも違う、あえていうのならば畏怖とでもいえばいいのか?


そんな不思議な感覚を体験した後に俺は信じられないモノを目の当たりにする。


夜の埠頭に凄まじい轟音を伴った巨大な稲妻が舞い降りた。


それは落雷などという言葉では生ぬるい衝撃。


夜の闇を切り裂き、静寂をぶち壊した一筋の霹靂。


解き放たれた雷光は一瞬で辺りを明るく照らし、そこに居た者を真っ白い世界へと誘う。


落雷の衝撃で周りの者達の耳は甲高い音に支配され聴覚器官としての機能を完全に停止した。


焼け焦げた様な嫌な臭いが鼻をつき、迅雷の衝撃で目も耳も馬鹿になってしまっていて状況が全くつかめない。


「何が起こった⁉」


 誰に聞いたわけでもないが、口にせずにはいられなかった。


しばらくすると目の前には夜のとばりが戻り始め、目も耳も正常に機能を取り戻しつつあった。


そして完全に体が正常化した時、もうあのファントムは跡形もなく消え去ってしまっていた。


「良くできました、これで貴方は晴れて正式な魔法使いよ。リサちゃん、おめでとう」


稲妻の衝撃の余韻で誰もが無言のままたたずんでいる中、母さんだけが拍手をしながら上機嫌でリサに近づき語り掛けていた。


「あの、先生……どういうことなのか説明してください


どうして私の放った魔法はあれ程の威力があったのでしょうか?」


 見事認定試験をクリアし、一人前の魔法使いとして認められたリサだったが


そんな事よりも今起こった現象の説明を求めたのである。


「そうね、まずは種明かしをしましょうか。リサちゃんが住んでいるバレント王国の世界は


この日本がある地球に比べて凄く小さいのよ。


つまり魔法の源である魔力の根源、マナの絶対量が少ない為に威力が小さくなってしまうの。


だけどこの地球では広大な土地から発生する自然のエネルギーや


無数にいる精霊たちから生み出される力、つまり膨大なマナが巨大な魔力となり凄まじい魔法へと姿を変えるのよ。


だから同じ魔法を使用したとしてもバレント王国とこの地球とでは


全く別物と言っていい程に魔法の威力がブーストされるという訳なの。


しかもこちらの世界では科学を中心に世界が回っていいて魔術を使う者はほとんどいない。


それ故に術者はこの世界の膨大なマナをほぼ独り占めできるという訳。理解できた?」


この世界での魔法の秘密の解説を饒舌に語る母さんだったが、リサの方はまだピンと来ていない様であった。


「先生のおっしゃることは何となく理解できました。


実際に目の前で見たので納得せざるを得ないというか真実なのもわかります。ただまだ実感がわかなくて……」


「まあ無理も無いわね。でもリサちゃんこれだけは覚えておきなさい。


バレント王国ではあくまでサポートメインの補助職だった魔法使いもここでは花形職。


と言うよりこの世界で魔法使いに勝てる者などいないわ。


国家の軍隊でさえ魔法使いの前では烏合の衆と化すでしょう。


この膨大なマナを利用し魔力に変換して有効に使えば


私達の魔法は大勢の人が住む都市だって吹き飛ばす事が可能なの。だからこそ強い心が求められる。


正義感、倫理観、自制心、慈愛の心、持つ者が故に求められるものも多いの。


それだけはしっかりと心に刻んでおいてね。


この八十億の人間が住む地球の未来を守るのが貴方の役目と言っても過言じゃないわ。


もの凄い責任を押し付けてしまうけれどずっと貴方を見てきたから……


リサちゃんならできると信じているわ」


「先生……」


 リサの目には薄っすらと涙がにじんでいた。傍から見ると一見良い話に見えるかもしれないが


よくよく考えてみると俺と同い年の女子が国家の軍隊をも超える力を持っている事とか。 


その責任と役目を任せたのがウチの天然母親だとか。かなり危ない気がするぞ⁉


こういうのって国会とか国連とかで話し合うべきモノじゃないのか?良く知らないが……


「いや~凄い魔法でしたな‼」


 先程までフントムと戦っていたお坊さんや神父さん達がフレンドリーな態度で近づいて来た。


「この女性は誰なのですか?若いのに随分と凄腕の様ですが」


 一人の神父さんが珍しいモノでも見る様にリサを見つめながら問いかけてきた。


「この子はリサと言いまして、私の自慢の愛弟子です。今後ファントム撃退のお役目はこの子に任せますから皆さんよろしくお願いしますね」


 リサの肩にポン手を乗せ嬉しそうに弟子を紹介する母さん。


当のリサも少し戸惑う顔を見せたが流れ的に逆らう事も出来ず慌てて頭を下げた。


「マヤ先生の弟子、ライトハルト・フォン・リサと申します、よろしくお願いします」


 丁寧に頭を下げるリサを見て思わず顔がほころぶ皆様。


神や仏に仕える身とはいえ若くて可愛い女性が嫌いな男はいないのだろう。


それを改めて確信させた瞬間であった。


「そうですか、摩耶さんの後継者。良い弟子を育てられましたな」


「この世の平和の為に、そして大勢の人の為に、これからもよろしく頼みますね、リサさん」


「我々退魔士も微力ながらお手伝いいたしますので、今後も一緒に戦いましょう」


 母さんからリサへの交代はほかの人達にも素直に受け入れられた様だ


まあ、あの凄まじい魔法を見せられたら納得せざるを得ないのだろうが……


 リサを囲んで母さんと退魔士たちが談笑している中、突然父さんの携帯電話が鳴った。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ