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真実への手がかり

 あれから二日が過ぎたが俺はまだリサにその事を聞けずにいた


ヘタレっぷりもここまで来ると情けないを通り越して自分に呆れるばかりである。


 どうせそんな事はないのだろうから〈リサ、お前俺のこと好きなのか?〉とサクッと聞けばいいだけなのだ。


〈はあ?馬鹿じゃないの、そんな訳ないじゃない‼︎〉と返事が返ってきて終わり、それだけの事だ。


何を躊躇する必要がある。だが万が一〈ええ好きよ、それが何か?〉とか言われたらどう答えればいいのかわからない


そんなはずはないと心では思いながらも、もしそうだったら……


 そんな事を何度も何度も考えながらどうしても聞けずにいたのである。


 そしてその日の日以来気がついた事は、リサの態度が少しよそよそしく感じるという事だ。


全然俺と目線を合わせようとしないし、俺と話す時はどこか態度が変なのである。


そう意識しているからそう感じるのか?それとも本当に俺を意識しているからそうなっているのか?益々わからない


しかし美穂ちゃんをいつまでも待たせるわけにはいかない。


いいかげん腹を括ってリサに聞けよ、情けない‼︎


「で、どどど、どうだ、リサ、剣道部のマネージャーに少しは慣れてきたのかい?」


「そ、そうね。まあまあかな、べ、別に普通よ」


 いつもの部活を終えての帰り道、妙によそよそしい俺とリサの態度を見て純平とエミリは何やらコソコソと話していた。


「ねえ、この二人完全に意識しているよね?」


「ああ、超絶鈍感男の正樹兄もようやく姉貴の気持ちに気づいた様だな」


「でもそれを言い出せないとかどこまで情けないのよ、この馬鹿兄貴は……まあリサ姉もどっこいだけれど」


「今時小学生でももう少しマシな態度を取るぜ


これでお互いにバレていないつもりなのだから、おめでたいというか、お子様というか……」


 二人は呆れながら俺達の事を話していた。


お互い血の繋がった兄弟にそんな事を言われているとは夢にも思っていなかった。


「そ、そういえばあの後ロイド先輩とはどうなったのだ?」


「べ、別に……どうもなっていないわよ、そもそもアンタには関係ないじゃない」


「まあ、関係ないと言えば関係ないが……」


「それより美穂とのデートはどうだったの?うまくいったの?」


「えっ⁉︎まあ、それなりに……」


「で、付き合うの、美穂と?」


「いや、それはまだ……」


 俺が曖昧に返事を濁すとリサが強めの口調で言ってきた。


「何やっているのよ、デートがうまくいったのならばさっさと告白しちゃいなさいよ、だらしないわね」


 男としてだらしないのは重々承知しているが、それは理由あっての事だ。


お前が俺の事を好きかもしれないと聞いて躊躇しているんだろうが‼︎……とは言えなかった


もし言ったとしても〈そんな訳ないじゃない、馬鹿じゃないの⁉︎〉と言われる事がわかっている、でも……


 俺達は何かギクシャクしながらもそのままいつもの様にアナザーゲートをくぐった。


 そして向こうの世界でも少し変化があった、その一つはロイド先輩が卒業した事である。


 本来ロイド先輩が卒業するまではまだ日にちが残っているのだが、全ての修士課程を終え異例の早期卒業となったのである。


 もちろんロイド先輩が特別優秀であったから取られた処置ではあるがそれだけ事態が切迫していたという事だろう。


 しかしそんな裏の事情をよく知らない学生達はロイド先輩の卒業を悲しんだ。


特に学園のアイドル的存在だったロイド先輩の突然の卒業は女生徒達の心に大きなダメージを与え


〈ロイドロス〉なる言葉まで出始める。そんな傷心の女生徒達の中で人気急上昇してきたのが我ら地球代表のイケメン純平である。


 金髪イケメンで誰とでも分け隔てなく優しく人当たりの良いロイド先輩とは対照的に


純平は黒髪で無口そしてクールというロイド先輩とは全く異なったキャラであり


そんなところが女子達の心を捉えた、本当の純平は無口でもクールでもないのだが


女嫌いの為に女子相手だとそういう態度になってしまい自然とクールなキャラへと映ったのであろう。


イケメンは何をやっても得といういい例である。当人は有難迷惑なのであろうが……


 ある日の昼休みでの出来事、俺達がいつもの様に机を囲んで四人で弁当を食べている時


リサが吐き捨てるように言い放った。


「もういい加減にして欲しいわ、私は純平のマネージャーでも何でもないのよ‼︎」


 リサは連日大勢の女子生徒から〈純平くんを紹介して欲しい〉というお願いをされていて心底ウンザリしていたのだ。


「ロイド先輩がいなくなってみんな寂しいのよ……しばらくすれば収まると思うから少しの辛抱じゃないの?リサ姉」


「そうだぜ、いきなりロイド先輩が卒業しちゃったからみんな戸惑っているのだよ


みんなに事情を話す訳にもいかないし、しばらくは付き合ってやりな、リサ」


 しかしリサは俺達のフォローにも耳を傾けることもなくジロリと純平を睨みつけた。


「な、何だよ。俺は何も悪くねーぞ」


 姉の怒気を含んだ視線を受け、純平は思わずそう言葉を返した。


「こんな欠陥男のどこがいいのよ、顔だってロイド先輩の方が百倍いい男じゃない」


 相変わらず実の弟である純平には非常に厳しいリサ


純平の容姿にもケチをつけているが自分とそっくりな弟の顔に文句をつけるということがどういう事かわかっているのだろうか?


「ひでえ言われ方だな、そもそもロイド先輩の卒業は


姉貴に振られたショックで学園にいられなくなったから……とか噂で聞いたぜ」


 それを聞いたリサは再び机にうずくまると、恨み言を言うように呟き始めた。


「そうなのよ、何でそんな根も歯もない噂が流れているのよ……


事実無根もいいところじゃない、そんなおかしな噂を流した奴をぶん殴ってやりたいわ」


 そうなのだ、学園では何故かそのような噂が流れていて、女生徒達が純平に群がる事への原因にもなっていた。


 そしてその噂があるので俺も戸惑っていたのだ


あくまで根拠のない噂とはいえリサがあれほど好きだったロイド先輩を振ったとか……もしかしてリサは本当に俺の事を⁉︎

 


 未だに机にうつ伏せになって起き上がれずにいるリサを見てそんな事を考えずにはいられなかった。


そんな時ふと横を見るとエミリが妙に嬉しそうにニヤニヤしているのが目に入ってきた。


まさかこの噂を流したのは⁉︎……いやこれ以上考えるのは止そう。

 

 こちらの世界での変化はもう一つ。ロイド先輩が卒業して以来


俺と純平は実技研修の名の下に魔族との実戦を経験することになった。


あのロイド先輩との戦いの後、完全にこちらでの戦い方を覚えた俺は今日も魔族との戦いを繰り広げていた。


「でありゃああーーー‼︎」


 俺の振り下ろした剣が魔族の体を真っ二つに切り裂く


どす黒い体液を吹き出し一刀両断された魔族は甲高い断末魔を残して息絶えた。


「おおーー、さすがは次期剣聖の名を継ぐ者。あのアークデーモンを一刀両断とは⁉︎」


検分の為に同行していた聖騎士団の人が簡単の声を漏らした。


周りの人達も歓喜の声を上げ、まるでお祭り騒ぎのような様子である


だが当人の俺はどこか喜ぶ気にはなれなかった。


「どうしたのよ。あのアークデーモンを倒した割には冴えない顔ね?」


 そんな俺の態度を不思議に思ったのか、リサが声をかけてきた。


「いや、その……ちょっとな」


「何よ、それ?何か煮え切らないわね。私の支援魔法も回復魔法も無しに快勝したというのに、何が不満なの?」


「いや、不満というわけではないのだけれど……」


 俺は強力な魔族を倒した時はっきりと聞こえた事があった


いや感じたと言った方が適切だろうか?しかしこの雰囲気の中で喋るのは躊躇われたのだ。


「何かあったのね、一体何があったのよ?」


 俺の態度を見て何かを察したのか、リサが真剣な表情で問いかけてきたが


今は真剣な話をするような雰囲気ではなくこの場での発言は躊躇したのだ。


「いや、今ここでは……後で話すよ」


「わかった、後で聞かせて」


 リサはそれ以上は聞かないでくれた、こうして魔族との戦いは終わりその日は終わった。


 戦いを終え夜になるといつもの様にアナザーゲートをくぐって向こうの世界から東京へと戻ってきた。


 政府の用意してくれた高級車で家路へと帰る俺達。


東野家四人と田沼家三人の計七人が高級車の中で無言で座席に座っている。


そんな空気の中でリサより先に父さんが問いかけてきた。


「正樹、何かあったのか?」


 俺の様子を見て何かを感じたのだろう、母さんも珍しく真剣な表情でこちらを見ている。


「うん、実は今日アークデーモンとかいう魔族を斬った時、声が聞こえたんだ」


 俺がそう打ち明けると真っ先にリサが食いついてきた。


「声?そんなの全然聞こえなかったけれど、気のせいじゃないの?」


「そうだな、俺もその場にいたけれど声なんか聞こえなかったぜ。


甲高い断末魔の叫びは聞こえたが……正樹兄の聞き間違いじゃないのか?」


 純平もリサの意見に同意するが俺はそれを否定する様に話を続けた。


「聞こえたというのは表現として間違いかもしれない、何と言えばいいのか……


頭の中に直接流れ込んできたというか、感じたというか」


「何よ、それ。何だかオカルトじみてきたわね」


 リサが半信半疑の目でこちらを見ている。


まあ言っている自分自身でさえ現実味がなくて説得力に欠けていると感じているのだから仕方のないことだろうが……


「それで、どんな声が聞こえたの、正樹ちゃん?」


「えっ⁉︎ああ、何か叫ぶような、訴えるような感じで〈マリア‼︎〉って一言だけ……」


「マリア、人の名前か?」


「女性の名前っぽいわね、よくある名前だけれど兄貴の知り合い?」


「いや、俺にそんな名前の知り合いは……って、どうしたんですか、おじさん?」


 俺が父さんとエミリから質問をされていた時、田沼のおじさんが急に俺の両肩を掴み真剣な表情で顔を近づけてきたのだ。


「正樹くん、その魔族は確かにマリアと言ったのだね?」


「ええ、まあ……それがどうかしたのですか?」


 皆の注目が集まる中、田沼のおじさんは俺の質問に応えることなく腕組みしながら何やら考え込んでいた。


「何か心当たりがあるのですか、田沼さん?」


「ええ、もしかしたらですが魔族が大量発生している原因がわかるかもしれません」


 おじさんの言葉に皆の表情が変わった。


「田沼さん、それは本当ですか⁉︎」


「何がわかったのですか⁉︎」


 食い気味に質問したのは父さんと母さんだった。


何せ二人は長い間魔族やファントムと戦い続けてきたのにも関わらずその正体や発生原因はまるで掴めず。


両国の研究機関による懸命な努力も虚しく手がかりすら掴めていない状態だったのだ。


「ええ、まだ私の仮説の段階ですから今の時点では明言できませんが、二、三日中には報告書として提出したします」


 おじさんの力強い言葉に一筋の光明が見えた瞬間だった。


田沼のおじさんは魔族とファントムの事を調べている研究機関の長であり


何年もその正体どころか手掛かりすら掴めなかったことに忸怩たる思いがあったのだろう。


目をぎらつかせ口元には笑みを浮かべていた。そう、この人もずっと戦ってきたのだ。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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