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衝撃の真実

 父さんは静かに語り始めた。


「先日、向こうの世界でファントムが原因の爆発騒ぎがあっただろう?」


「一般的報道ではガス管の破裂と発表されたけれど実は母さんのミスで一旦ファントムに逃げられたとかいう……」


「実は、あれは母さんのミスではないのだ」


 その言い方は父さんは母さんを庇っている様には見えなかった。


「どういう事だよ?」


「相手のファントムが強力で最初の攻撃では仕留めきれなかったというのが真相だ。


実は向こうの世界でのファントムやこちらの世界での魔族の数や強さがどんどん増してきていて


俺や母さんだけでは手に余る状況になってきたのだ」


「だから急遽俺達が呼ばれたのか⁉︎」


「ああ、そういう事だ。せめてお前達が高校を卒業するまでは俺と母さんで頑張るつもりだったのだが……すまない」


 父さんは悲痛な面持ちで頭を下げた。


「いや、そういう状況ならば仕方がないよ。俺達で役に立つというのならば協力させてもらうけど。


でもエミリの件はまた別の話だろう?」


「わかっている、しかしエミリの意思をねじ曲げてでもあの子には剣士の夢を諦めてもらうしかないのだ」


「どうしてだよ⁉︎」


 俺は納得いかないと食い下がった。


「それはエミリにはリサ君と同等の魔法使いとしての素質があるからだ」


 エミリにそんな魔法の才能があるという事に少し驚いたが


本人の希望より適正を優先するという父さんの方針はどうにも納得できなかった。


「素質⁉︎魔法使いに向いているから剣士の夢は諦めろ、って事かよ⁉︎」


「有り体に言えば、そうだ」


「そんな無茶苦茶な、じゃあ本人の意思はガン無視かよ‼︎」


 そんな大人の事情で夢を諦めさせられるとか、どう考えても納得できなかった俺は激しく食い下がった。


「俺だってエミリの夢は叶えてやりたい、だが今はそんな事を言っていられる状況ではなくなったのだ」


「魔法使いなら母さんとリサがいるだろう⁉︎それにこの世界には何人もの魔法使いがいるのだろうし


学園には魔法使い希望の生徒はいくらでも……」


「それはできないのだ」


「どうしてだよ⁉︎」

 

 残念そうに首を振る父さんに俺は再び問いかけた。


「ある一定レベルを超えたものでしか高レベルのファントムの相手はできないのだ。


そして何より問題なのはこれ以上ファントムの数や強さが増したらどうなるか?という事だ。


 最初の頃は二、三ヶ月に一体ほどしか出現しなかったファントムだが今では毎週のように出現している


先週などは二日連続で出現したのだ。もし同時多発的にファントムが各所に現れたらどうする?


母さんやリサ君では手に負えない強さのファントムが現れたら?


あの正体不明の化け物が街に出て暴れたりしたらどうなるか。おそらく想像もつかない程の被害が出るだろう。


高レベルの魔法使いの育成は急務なのだ」


「だからってそれをエミリに押し付けていいことにはならないだろう⁉︎


頑張っている人間の夢を踏みにじって日本の為に戦えとか……


もっと何か他に方法があるだろう?例えば国民に注意喚起を呼びかけて警察とか自衛隊とかに任せるとか……」


「前にも言っただろう、ファントムには通常兵器は効かない。


警察や自衛隊が出動したところで被害が増えるだけだ。


奴らに対抗できるのは魔法使いの使う高レベルの魔法だけなのだ。


そしてもしそんな事を国民に発表したらどうなると思う?


国内はパニックで大混乱を起こすだろう。だから日本政府は情報統制をして秘密裏にファントムを撃退しているのだ」


 俺は思わず唇を噛み締めた。父さんの言っていることも理屈ではわかる


しかしまだ十六歳の女の子に自分の夢を諦めて日本のために戦えとか、いくら何でも……


 そんな俺の気持ちを察したのか父さんも気を強い表情を浮かべ語り始めた。


「お前達にそんな重い十字架を背負わせてしまい親として情けないばかりだ。本当にすまない」


「じゃあ俺や純平がこの世界に呼ばれたのは……」


「ああ、こちらの世界でも日に日に魔族の勢いが増しているからな


先日お前と純平君の実戦研修を強行したのもそういう事情があるからだ、流石に早すぎたと反省しているが」


「じゃあロイド先輩が聖騎士団の式典に急遽呼ばれたのも⁉︎」


「聖騎士団も今は人材の補強が急務だからな。


一刻も早くロイド君を聖騎士団に入団させ部隊長を任せたいというのが父親である団長殿の意向のようだ」


 真剣な面持ちでしみじみと語る父さん。まさか事態がそこまで切迫しているとは思いもよらなかった。


「でもどうして俺達なのだ?そこまでの緊急事態ならば


こちらでもあちらでも全国から強い奴を募って剣士や魔法使いの適正を調べればいいじゃないか⁉︎」


 俺はごく当然の質問をぶつけた。すると父さんは目を閉じしばらく黙っていたが、意を決したかのように口を開いた。


「正樹、アナザーゲートが出現した時、なぜ俺が日本代表の剣士として選ばれたと思う?」


 突然の質問に少し戸惑うが、俺は特に考えることもなく素直に答えた。


「そりゃあ父さんが全日本剣道選手権で優勝した日本一の剣士だったからだろう?」


 しかし父さんは俺の回答に対し、ゆっくりと首を振る。


「いや、違うのだ……正樹、お前はヴァガドリアというものを知っているな?」


「ああ、母さんの授業で受けたからね。細胞内に含まれるマナを魔力に変換する為の因子……だっけ?」


「ああ、このヴァガドリアが細胞内に多く含まれるほどマナを効率よく魔力に変換できる。


これは生まれ持った才能であり訓練や学習でどうにかなるものではないのだ」


 父さんはそう言うとおもむろに立ち上がり奥の部屋へと戻っていった。


そしてしばらくして帰って来るとその手に懐中時計のような物を持っていた。


「父さん、それは?」


「これはヴァガドリア測定器だ。俺はこちらに来る剣士候補の一人として選出され


その全員がこの測定器で細胞内のヴァガドリア量を測り


その中で俺が最も高いヴァガドリア値を叩きだしていたので選ばれたのだ」


 説明を終えると父さんは手にしていた 測定器を強く握りしめた。


「何をしているのだよ、父さん?」


「今、この測定器で測定している。ほれ、これが俺のヴァガドリア量だ、まあ約8700といったところか」


 父さんは手にしている 測定器を俺に向け見せつけるように掲げた。


「正樹、お前もやってみろ」


 父さんは測定器を俺の顔の前に差し出した。


「えっ、いきなり言われても……どうやってやるのだよ?」


「握力計と同じだ、それを強く握りしめればいいだけだ」


「わ、わかったよ。握ればいいのだな……」


 俺は父さんに言われるがまま測定器を握りしめた。


論より証拠というか百聞は一見にしかずというか、ゴタゴタと説明するより見せた方が早いと思ったのだろう。実に父さんらしい。


「計ったぜ、この測定で一体何がわかるって……えっ⁉︎」


 俺は自分が握りしめた測定器の数値を見て愕然とした。


「何だよ、これ……28000って⁉︎」


 その数字を見て一瞬何が起こったのかわからなかった。俺の測定値は父さんの三倍以上を記録したのだ。


「これでわかっただろう?正樹、お前は日本の代表として最高値を出したこの俺の三倍以上の数値を叩き出したのだ。


ちなみにエミリもリサ君も純平君もこれとほぼ同じ数値を出している」


「いつの間に……そんなのいつ測定したのだよ⁉︎」


「お前達が子供の頃な。言っただろう?このヴァガドリア保有量は生まれ持った才能だって。


ちなみに他の子供達も計測してみたがどの子も並の数値しか出なかった。


つまりお前ら四人だけが異常なまでのヴァガドリア保有量を持っているということだ」


「どういうことだよ、訳がわかんねえ、どうして俺達四人だけそんな数値が……まさか⁉︎」


 俺はその瞬間あることに気がついた。俺達兄弟とリサと純平の兄弟のみ高い数値が出るということはもしかして……


そしてその考えが事実ならばその裏にあるとんでもない思惑に気がついたのだ。


 俺が頭の中で色々な可能性を考え困惑していると父さんが再び説明を始める。


「科学的に立証されたわけではないしサンプル数も少ないのであくまで仮説の段階だが


この世界の人間と向こうの世界の人間との間に生まれた子供。


つまり日本人とバレント国民の混血児にのみ異常なまでの数値が見られるということだ。


ヴァガドリア数値の高い者が強い者とされる世界において


お前達だけが世界を守れる選ばれた人間と言っても過言ではないだろう」


 随分と持って回った言い方ではあるが、俺達にしか世界を守れないと言われれば


例えそれが重すぎる十字架だとしても背負っていくしかないのだろう。


 だが俺が引っかかったのは全く別の事だった。


「父さん、正直に答えてくれ。俺とリサ、そしてエミリと純平を婚約者としてくっつけようとしたのは


数値の高い者同士を結びつけてより高い数値を出す子供を産ませるためか⁉」


 父さんは俺の質問には何も答えなかった。視線を逸らすとかバツの悪そうな顔を浮かべた訳でもない


 しかし何も言わないということは俺の言った事が概ね当たっているということなのだろう。


それを知った時、俺は腹の底から言いようのない怒りが込み上げてきたのである。


「ふざけるなよ、俺達は競走馬でもなければ牛や豚の品種改良でもないぞ‼︎人を何だと思っているんだ⁉︎」


 思わず立ち上がり興奮気味に抗議すると、父さんは目を閉じて静かに呟いた。


「お前達にはすまないと思っている」


「すまないで済むかよ‼︎それが人の親のやることか⁉︎」


「だからその事は言わなかっただろう。あくまで本人同士が気に入って結ばれればいいと思ってやった事だ。


それにお前と純平君、リサ君とエミリは小さい頃から実の兄弟のように育ってきたし


性格的な相性もいいと判断しての事だ」


 あくまで結果的にそうなればいいと思っただけだと主張する父さんだったが


もはや何を言われても素直に受け取る事はできなかった。


俺と純平やリサとエミリが小さい頃から兄弟のように育ってきたことすら大人達の思惑ではなかったのではないか?


という疑惑が頭をよぎる。今の俺には何を信じて何を疑えばいいのかもわからなくなっていた。


「そんなの後付けの言い訳にしか聞こえないよ。エミリやリサや純平にこの事は伝えるの?」


「いや、そんなつもりはない。正樹、本当ならばお前にも伝える気はなかった。


あくまで自然な流れで上手くいけばいいと思っていたからな……」


 俺は思わず唇を噛み締めた。言いたいことはまだ一杯あったが、それらを無理やり飲み込み絞り出すように伝えた。


「それ、みんなには絶対に言わないでくれよ」


「ああ、そのつもりだ……」


 俺と父さんはその後何も言葉を交わさずその日は終わった。


知りたくもない事も含めて色々な事を知った長い、長い夜だった。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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