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ライトハルト・フォン・リサ

「遅くなりまして申し訳ありません」


 丁寧に頭を下げる姿に俺は見惚れてしまい思わず言葉を失ってしまう。


「そんな堅苦しい挨拶はいいよ、リサちゃん」


「そうよ、いつもの感じで気軽に接してくれればいいわ」


 何だ、何だ⁉︎どうやらこの美少女と父さんと母さんとは知り合いのようだぞ?


「いえ、今日の私はライトハルト家の者として来ていますから先生の前といえども、気楽に接する訳には……」


 先生?父さんの事か、それとも母さん?訳がわからない早く説明してくれ。


「紹介するわね。これが私の息子、あなたのお相手の東野正樹よ、よろしくね」


 母さんが俺を紹介してくれたのだが相手の女性が誰なのかを知りたい。


というより、この状況は何なのか?を早く説明して欲しい。


何が何だかわからないが紹介されたので俺はとりあえず軽く頭を下げた。


すると向こうも俺に合わせて頭を下げると自己紹介を始めた。


「初めまして。私はライトハルト伯爵家が息女、ライトハルト・フォン・リサと申します、よろしく」


 上品に頭を下げるその姿はまさに優雅という言葉がぴったりくる。


だが伯爵家の令嬢?見た目はどう見ても日本人だがどこかの外国の貴族の人なのだろうか?


「何だ、正樹その挨拶は、それでも武道を志す者の態度か?礼に始まり礼に終わる、武道の基本だろうが」


 たしなめるように言い放った父の言葉に俺は心の中で激しく反論した。


何を偉そうに、武道の精神を語る前に父さんにはまずは世間の常識を学んでくれと言いたい。


「まあまあ、あなた、そのくらいで……じゃあここは若い者同士で、ウフフ」


 何が〈じゃあ〉なのか全く理解できない、母さんが空気を読まないのはいつもの事だが意味不明にも程があるだろう‼


そんな俺の思いとは裏腹に母さんは笑みを浮かべながら父さんを引き連れて部屋を出て行こうとした。


おい、ちょっと待て、この状況で二人きりにするつもりか⁉︎冗談じゃないぞ、せめて説明をしていってくれ‼︎


 俺が慌てて椅子から立ち上がり現状説明を求めようとした時、父さんが先に俺に近づき耳元でささやいた。


「リサちゃんはなかなか手強いぞ。頑張れよ、正樹」


「な、何を言って……」


 困惑する俺を尻目に今度は母さんがささやく。


「リサちゃんは私の教え子の中でもとびきり優秀なの。でも少しだけ気難しいから頑張ってね、ファイトよ、正樹ちゃん‼︎」


 それは何のアドバイスだ⁉︎俺は頭が混乱して呆然と立ちすくんでしまう。


横を通り過ぎていく両親の姿を見てハッと我に帰り、慌てて振り向くと父さんは右手の親指を立てて軽く頷き


母さんはこちらに向かってウインクしてきた、〈この人達はもうダメだ……〉


そんな言葉が頭に浮かび、俺の心は絶望感に苛まれる。


もうこうなったら直接相手に聞くしかない、しかし何と言えばいいのだろうか?


 いきなり見知らぬ美少女と二人きりにされ、この訳のわからない状況で何をどう話せばいいのか皆目見当がつかない


そんな状況を見かねてなのか、彼女の方が口を開いた。


「ねえ、黙っていないで何か言いなさいよ」


「何かって、何を言えばいいのだよ?正直俺は今の状況がまるで飲み込めていない


そもそも君はどこの国のどんな立場の人間なのだ?」


「そんなことも知らずにここに来たの?じゃあ改めて自己紹介するわ


私はバレント王国、ライトハルト伯爵家が娘、ライトハルト・フォン・リサよ、一応魔法使いを目指しているわ」


 バレント王国ってどこだ?聞いたこともない国だが……


しかも魔法使いを目指しているって、どこの厨二病か電波女だよ⁉︎


コイツもうちの両親と一緒で俺にドッキリでも仕掛けて来ているのか?


でもそんな雰囲気でもないし、一体……はっ、もしかして朝に父さんと母さんが言っていた


〈異世界から来た〉とかいう与太話が本当だとか⁉︎いやいやいや、あり得ないだろそんな話、でも……


 頭の中でいろいろな事を考えながら戸惑っていると、再び向こうから話しかけて来た。


「ねえ、またダンマリ?正直、私だって困惑しているのよ


いきなり婚約者とか言われて、こんな所に連れて来られて……


大体マヤ先生に息子がいるなんて聞いたこともなかったわ、あなた本当にマヤ先生の息子なの?」


「ああ、俺は正真正銘あの人の息子だ、逆にこちらからも聞きたいのだが


マヤ先生って、君は母さんに何を学んでいるのだ?」


 俺の素朴な疑問に一瞬呆れるような顔を見せたが、大きくため息をつくとヤレヤレといった感じで話し始めた。


「あなたマヤ先生の息子なのに何でそんなことも知らないのよ⁉


マヤ先生はバレント王国きっての魔法使いよ【氷結の魔女】といえば知らない人はいないわ」


 何だ、その物騒な二つ名は、あの天然ほんわか母さんが、まるでお門違いの様な異名を持つ【氷結の魔女】だと⁉︎


俺は悪い夢でも見ているのだろうか……


「ところで、あなた強いの?凄い剣の使い手と聞いているけれど」


 いきなりの思わぬ質問に戸惑う俺だったが少しはしっかりしたところを見せないと


婚約者がどうこうという話は置いておくとしても、同い年の女子の前で不甲斐ない姿ばかりを見せるのは男としてカッコ悪い。


「凄いかどうかはわからないけれど父さんに憧れて子供の頃から剣道はやっているよ」


「ケンドー?何それ、剣の修行の事?私、剣の道には詳しくないからその辺りは知らないけれど


かの【剣聖】、シュタットハウゼン・フォン・シンゴ殿の息子だものね、父親に憧れて剣に打ち込むという理屈はわかるわ」


「ちょ、ちょっと待てよ、今【剣聖】って……」


 俺は聞き捨てならない程のパワーワードに思わず反応した。


「そうよ、あなたのお父上は世界最強のソードマスター、【剣聖】の称号を持つ最強の剣士じゃない


まさかあなた、お父上が先代の魔王を討伐した【ブリステンの戦い】を知らないの⁉︎」


 何じゃそりゃあーー‼︎魔王を倒したソードマスター⁉︎ゲームとかアニメの話じゃないよな?


あのおとぼけ父さんが【剣聖】とか何の冗談だ?まあ確かに剣道は達人だけれど……


でもこの子が嘘を言っているようには見えない、まさか本当に異世界から?


「なあ一つ聞いていいか、君はどうやってこの世界……というか日本に来たのだい?」


「日本?この国は日本っていうの?よくわからないけれど


王宮の奥にある秘密のゲートとやらをくぐってきたら、ここに着いたのよ


そもそも〈私には婚約者がいてしかもそれがマヤ先生の息子だ〉と聞かされたのは今朝なのよ


何だかわからないうちに爺やに無理矢理ここに連れてこられてあなたに引き合わされたのよ……


もう訳がわからないわよ‼︎」


 彼女は頭を抱えながらややヒステリックに思いの丈を吐き出した


そうか、この子も俺と全く同じ立場なのか……


この子の気持ちは凄く良くわかる、混乱しながらも父さんと母さんの手前、おとなしくしていたという訳だな……


 まだ釈然としないモノの、何とか今俺達が置かれている状況は理解した


しかしまだ最大の疑問が残っている、俺の知らない別世界が存在するという事を仮定したとしても


俺の知っている父さんと母さん、そしてこの子が知っている父さんと母さんがどうして同時に存在するのだろうか?


という謎である、しかしその謎は俺たちには解決できそうにない


不本意ながら父さんと母さんに聞くしかないのだろう、真面目に答えてくれれば……の話だが。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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