天才ロイドの英雄伝説
「ロ、ロイド先輩、ど、どうしたのですか⁉︎」
廊下に立っているロイドを見て思わず立ち上がるリサ。そんな彼女の態度にロイドはニコリと微笑み口を開いた。
「リサ君に話があって……少しいいかな?」
「わ、わ、わ、私にですか⁉︎」
動揺を隠せないリサだったがロイドの申し出を断るはずもなく弁当を食べている途中だというのにそそくさと席を立つ。
その際にロイドが俺の弁当を見てニヤリと笑ったのを俺は見逃さなかった。
ここはリサお姉様に例の〈人間として……〉という有難い説教をロイドにしてやって欲しいものである。
「どうしたのですか、ロイド先輩?」
「昼食中にごめんね、実は今週末キッペンベルグ侯爵主催のガーデンパーティーに招待されてね
〈できれば女性同伴で〉との事なので、迷惑でなければ僕とどうかと思ってね?」
その瞬間教室の女生徒からは先ほどよりも一層大きなキャーという黄色い声援が上がり
リサは両手を頬に当てながら満面の笑みを浮かべた。事の経緯はどうあれ、これはデートのお誘いである。
「はい、もちろんOKです‼︎」
「良かった、じゃあ今度の日曜日にシャウダンゼ公園で十時待ち合わせという事でいいかな?」
「はい、いいです。何も異論はありません‼︎」
「じゃあ今週末に」
ロイドは軽く手を上げるとそのまま颯爽と去っていった。
その背中をぼーっと見つめているリサ。ロイドの姿が見えなくなるとクラス中の女子が一斉にリサに駆け寄ってきた。
「ちょっとリサ、ロイド先輩と何があったのよ⁉︎」
「何って……別に特には何もないけれど」
「ロイド先輩が特定の女性をデートに誘うのは初めてのはずよ」
「どうして私じゃないのよ、ロイド先輩に誘われたなら例え親が危篤でも駆けつけるのに‼︎」
「リサは美人だからなあ、いいなあリサ……」
女生徒達に祝福と羨望と嫉妬が入り混じった目を向けられ、リサはだらしなく口元を緩めている。
「そ、そうかな?でへへへへ」
やや釈然としないがリサは自分の恋に向かって順調に突き進んでいるようだ、良かったな。
しかしどうやらエミリと純平は面白くないようで不機嫌な顔を浮かべている。ヤレヤレこいつらにも困ったものだ。
だが俺にも少しだけ引っかかる事があった、それはロイドが去り際に俺の方をチラリと見た気がしたのだ。
おそらく気のせいだとは思うし、それが本当だとしてもどうということはないだろう。
だが何か妙な胸騒ぎがして胸がモヤモヤしていたのである。
「ねえ、ちょっと聞きなさいよ、正樹」
「聞いているよ、でもどうせロイドの自慢話だろ?」
その後、リサ先生による〈ロイドがいかに凄いか⁉︎〉というノロケ話に近いものを延々と聞かされ続けている。
「ちゃんと聞きなさいよ、ロイド先輩は一年の時にはもう最上級生より強くて天才の名をほしいままにしたのよ、それでね……」
聞きたくもないロイドの話を延々と、そして嬉々として語るリサ。
せっかくの貴重な昼休みが台無しである。これならば母さんの話を聞いていた方が百倍マシだ。
「で、その高貴でお強いロイド先輩の話はいつまで続くのだ?」
「何よその言い方は⁉︎今の話は〈ロイド先輩一年生、立志編〉よ
これから〈二年生、激動編〉〈三年生、躍進編〉、〈最上級生、昇竜編〉へと続くの。
あっ、その途中で〈運命の生徒会選挙編〉という番外編もあるわ。
ロイド先輩が一年生の時に前生徒会長を見事に打ち破った伝説の選挙よ‼︎すごかったのだから‼︎」
まるで見てきたような口ぶりで話すリサお嬢様。しかし考えてみればロイドが一年生ということは
リサはまだこの学園に入学すらしていないはずだ。それなのにどうしてこんなに熱く語れるのだろうか?
恋は盲目とはよく言ったものである。
「しかしそんな話、良く知っているな?」
皮肉で行ったつもりだが今のリサにはまるで通じない。恋する乙女は無敵である。
「そりゃあ私はこの学園に入る前からロイド先輩の事を知ってファンになったもの。
それから家を見に行ったり、何気に後を付けたりした事もあったのよ」
「おいおい、それじゃあストーカーじゃないか?」
「ストーカーって何よ?」
そうか、この世界にはストーカーという言葉は無いのか……
しかし下手な事を言うとまたリサの機嫌が悪くなるかもしれないし、ここはお茶を濁しておこう。
「まあ、何だ……ストーカーというのは愛に殉じる心を持つ者というか
熱い情熱の持ち主というか……そんな感じかな?」
「ふ~ん、そうなの?ならそうかもね。じゃあ私は愛のストーカーよ‼」
胸を張って堂々とストーカー宣言をしたリサ。知らないとは怖い事である。
後日談だが俺はストーカーの本当の意味を知ったリサから滅茶苦茶怒られた。
恐らくあの調子で誰かの前で堂々とストーカー宣言をしたのだろう。
想像しただけで笑いが込み上げて来るがここで笑うと更に怒られるので必死に耐えた。
それと同時に【反面教師】という言葉を思い出した。
俺が姫乃樹に接している時の態度がこんな感じであったら……とか想像しただけでゾッとした。
ふと気がつくとエミリと純平はすでにそばにいなかった。
さてはあいつらロイド話を聞きたくなくてリサを俺に押し付けて逃げやがったな?よし、そっちがその気ならば……
「なあリサ、今の話を純平にも聞かせてやったらどうだ?あいつそういう話が好きみたいだし」
「本当⁉︎じゃあ家に帰ったらたっぷりと聞かせてあげようかしら」
リサは明るく言った。この話はもちろん大嘘である。俺を見捨てて逃げた罰だ、せいぜい姉君の有難いご高説を承るがいい。
まあエミリは許そう、純平と同罪にするにはあまりに忍びないし。
それからリサによるロイド一大スペクタクル長編は昼休み中続いた。
昼休みが早く終わって欲しいと思ったのは人生で初めての経験である。
頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。




