実は天才……かも?
「おっす、俺はスタディっていう。よろしくな」
教室に着くといきなり一人の男子生徒が話しかけてきた。
「ああ、おはよう……」
とりあえずあいさつで返したが、初対面の人間に対しても随分フレンドリーな男の様だ。
「お前だろ、今日入って来た転入生って奴は?
昨日から〈二代目の剣聖が来る〉とかで学校中話題になっていたからな。何はともあれシクヨロ‼」
「ああ、こちらこそよろしく、マサキと呼んでくれ。こっちは純平だ」
自分と純平の簡単な挨拶を済ませ席に着いた。
しかし俺達がこの学校に来ることを聞いていただと⁉どこから情報が漏れたのだろうか?
それとこのスタディとかいう男子生徒はどことなく学に似ているな。
俺達のクラスはエリート校であるこの学院の中でもえりすぐりの特別クラスらしい。
この学校は学年ではなく成績によってクラスが別れている為に俺と純平
リサとエミリも同じクラスなのだ。異世界の初心者である俺や純平にとっては有り難い話だが。
俺はクラスメイトを確認する様に教室内を一通り見まわしてみるとある事に気が付いた。
「あれ?ここは優秀な生徒のクラスなのにロイドの奴はいないのか?」
素朴な疑問を口にしただけだったのだが、そんな俺の言葉に不快感をあらわにするリサ。
「何で呼び捨てなのよ、ロイド先輩って呼びなさいよ‼」
怒るリサに変わりエミリが説明してくれた。
「ロイド先輩はここにはいないわ、兄貴」
「どうしてだ?」
するとリサが腕組みしながら得意気に語り始めた。
「ふふん、ロイド先輩はね全科目の修業課程を終えたのでもう授業に出なくてもいいのよ。
今では生徒会長として学園の運営や王宮との交渉事にかかわっているわ」
ほう、この学校にはそんな制度があるのか……
しかし学園運営とか王宮との交渉とか生徒会長の役目を遥かに越えていないか?
それとなぜリサがドヤ顔をしている?
そんな事を考えている内に校舎に設置されている大型の鐘が大きな音を立てて鳴り響き生徒たちに始業を伝える。
いよいよ異世界の授業とやらの始まりである。さて、どんな先生がどんな授業をするのか少し興味がある。
「は~い、授業を始めますよ~」
教室の扉が開き、中に入って来た人物を見て俺は思わず立ちあがった。
「母さん⁉」
「こらこら、正樹ちゃん。ここでは先生と呼びなさい、ね」
教師として現れたのは何と母さんだった。
つば広のトンガリ帽子に黒マント。いかにも魔法使いといった格好だが
母さんが着ると教師というよりコスプレ好きのおばさんにしか見えない。
またもや訪れた急展開に頭が付いて行けず俺は呆然と立ちすくんだ。
そんな俺を見かねたのかリサがこっそりと説明してくれた。
「私達特別クラスの魔法の授業の担任はマヤ先生よ。知らなかったの?」
説明を受けてもまだ頭が混乱している。ここまで来てまだこれ程驚かされるとは……
「ちなみにこの学校の理事長兼創立者もママよ」
今度はエミリが補足情報をくれた。母さんが学校の教師であり、理事長で創立者……もう何が何だかという感じである。
ただそれによって一つだけ謎が解けた。
この少女趣味の建物とシュナイダーという学校名、そしてこの厨二臭い制服のデザインは
母さんが好きな少女漫画【迷宮の花園】に出て来る王子様の名前と主人公達が通う学校がモデルになっているのだ。
どうりで聞き覚えのある名前のはずだ……
「今日は新しい転入生を紹介します。正樹ちゃんと純平くんで~す‼皆さんの新しいお友達を拍手で迎えてあげてね~」
紹介された俺達は立ち上がるとパラパラとした拍手が巻き起こる。何だ、この羞恥プレイは?
母さん、もう少しまともな紹介は出来なかったのか?
「さて、転入してきた二人は魔法に関して素人ですので今日は魔法基礎のおさらいをします」
俺と純平の為に魔法とは何か?という事を教えてくれるらしい。
「まず魔法とは、人類が生み出した英知の結晶と言っても過言ではありません。
まず魔法の原動力はいうまでも無く魔力です。では魔力とはどうやって生み出すのかわかりますか?
はい、純平君答えてみて?」
母さんは突然純平に問題を振った。もちろん純平は答えられずアタフタしている。
「えっ、そんな事を急に言われても……魔法の杖を振ったら自然に生み出されるとか」
「ぶっぶー、不正解です。ちなみに魔法の杖はあくまで術式を効率よく掃射する為の補助器具に過ぎません。
わかりやすく言うならば楽団の指揮者の持っている指揮棒みたいなものだと思ってください」
予備知識すらない俺達にとんでもない質問を投げかけてきた母さん。
こういうのも無茶ぶりというのだろうか?この様な仕打ちは下手をすれば虐待行為だぞ。
「魔力の源は、空気や水などの自然界から発生する自然力。
精霊達が生み出す精霊力。人の感情から生み出される感情力。
魔剣や魔道具まどから発せられる神聖力。そういったモノの総称を我々魔導士はマナといいます。
魔力とはこのマナを収束させ魔法に使用する為のエネルギーに変換したモノの事を言います。
その魔力を用いて緻密で膨大な計算式を組み重ねる事によって炎や氷を発生させるといった
特殊な現象を引き起こす為の構築式を形成したモノ、これを術式といいます。
構築された術式を高速演算し頭の中で呪文として詠唱する事によって始めて魔法が発動するのです。
それが魔法という魔術が生み出した神秘の結晶よ」
母さんの説明を何となく聞いていた俺と純平だが、一つ気になった点があり質問してみた。
「魔法を使う事はもの凄く頭を使うって事なのだよね?」
「そうよ。つまり魔法使いとは膨大な知識。凄まじい集中力。高速演算を行う頭の回転が必要不可欠なの。
平たく言えば馬鹿ではできない職業、それが魔法使いよ。
特に高度な魔法を使いこなすトップクラスの魔法使いは例外なく理系の天才といっても過言じゃないわ」
「えええええーーー‼」
その言葉を聞いた途端、俺と純平は驚きの声をあげながら立ちあがると思わずリサを凝視してしまった。
「な、何よ、アンタ達。まさか私の事を馬鹿だと思っていたのではないでしょうね⁉」
「いや、その……思っていました」
「姉貴の事は馬鹿だとは思っていないけれど、少し頭は弱いのかな?くらいに思っていた」
俺と順平が素直に白状すると、リサは怒って席を立ちあがるとムキになって反論してきた。
「失礼ね、私はこう見えても常に成績上位なの。ロイド先輩が抜けた今なら私がこの学園で一番の成績優秀者よ‼」
とても信じられないが人は見かけによらないという事だろう。
「リサちゃんは凄く頭がいいのよ。正樹ちゃんや純平君にもわかりやすく言うなら……
そうね、東大や京大に簡単に入れるぐらいの成績よ」
それが事実ならば俺より遥かに頭がいいという事になる。少しリサを見る目を改めよう。
「このリサが……おみそれしました」
「馬鹿だと思っていた姉貴が……悪かった」
「アンタ達本当に失礼ね、後で勉強教えてくれって言っても教えてあげないのだから‼」
頬を膨らませながらプイっと横を向いてしまったリサ。
でも俺は知っている。口ではこんな事を言ってはいても頼まれればおそらく嫌とは言わないだろう、それがリサという女だ。
だが待てよ。高度な魔法を使うトップレベルの魔法使いは例外なく頭がいいというのならば
母さんも相当頭がいいという事になる。
だが俺は息子として十七年近くこの人の近くにいるが母さんから知性とか教養とか一度も感じた事がない。
少女漫画と恋愛ドラマが大好きな天然オバサンというイメージしかないが……
困惑する俺の事を気にする様子もなく、母さんはパンパンと両手を叩いて授業を再開した。
「はいは~い、おしゃべりはここまでよ。じゃあ授業を続けますね~
魔力とは細胞内に含まれるヴァガドリアという物質の……」
それから長々と母さんによる魔法講義が始まったが残念ながらあまり頭には入って来なかった。
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