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理解と納得の異世界移動

「急げ、時間が無いぞ‼」


 朝と同じ展開だが今度は少し意味合いが違う。


 部活が終わった後、リサとエミリの入部歓迎会が開かれた。


とはいえ学校近くのファミレスのドリンクバーで集まっただけのささやかなモノだったのだが。


そのおかげで時間がギリギリになってしまったのだ。


「このまま、別の世界へ行くとか。マジで言っているのか?」


 純平が半信半疑で口そうにした。信じられないのも無理はない。


昨日行ったことがある俺でさえ未だに実感がわかないのだから。


「四の五の言っていないで急ぎなさいよ‼」


 不満げな弟に姉の檄が飛ぶ。


「アンタは見ていただけだから体力有り余っているのかもしれないけれど


こっちは部活の後でクタクタなのだよ」


「お姉ちゃんに向かってアンタとは何よ、これから私の事はお姉さまと呼びなさい‼」


「何じゃそりゃ、死んでも言わねーよ、そんな事」


 ウチの兄弟と違って田沼家、もしくはライトハルト伯爵家の方は兄弟仲があまり上手くいっていない様である。


「じゃあ……姉貴でいいわ」


「まあ、それなら……いいけど」


 そんなぎこちないやり取りを見てエミリがクスクスと笑っていた。


「何かおかしいのか?」


 俺の問いかけにエミリは笑いをこらえながら答えてくれた。


「リサ姉は私達が羨ましいのよ、だからあんな言い方しているの。昔からそう」


 エミリの言葉は妙に説得力があった。確かにリサはそういう女だ。


 しばらく走ると、前方にお迎えの車が見えてくる。


父さん、母さん、そして田沼のオジさんが手を振っている。


「お~い、もう時間が無いぞ‼」


「急いで、正樹ちゃん‼」


 俺達は息も絶え絶えに迎えの車に乗り込むと、車は昨日の場所まで走り始めた。


「ハアハア、どうしてここまで急がなければいけないのだよ、少しぐらい遅れても問題は無いのだろう?」


 俺は息を整えながら疑問に思っていたことを父さんに投げかけた。


「アナザーゲートが開くのは夜の十時から約三分間だけなのだ。


どうしてなのかは調査中だがとにかくその時間にしか移動できない。だから遅刻は厳禁だ、いいな‼」


 わかったな‼とでも言わんばかりに強く念を押されたがその直後。


父さんはリサとエミリに対して優しく質問する。


「初登校はどうだった?リサちゃん、エミリ?」


 だらしない笑顔で二人に問いかける剣聖様。何だ、この扱いの差は?


「色々あったけれど、まあ何とかやっていけそうかな」


「本当に色々あったよ、パパ。ここにいる純平君にも挑んで負けたし……」


「ほう、初日でいきなり純平君に挑んだのか⁉で、エミリはどうだった純平君?」


 いきなり話を振られた純平は少し戸惑う素振りを見せたが、照れ臭そうに小声で答える。


「その……強かったっス。同い年でこんなに強い女がいるとか、少しショックでした」


 それを聞いた父さんは何度もうなずき、エミリは少し嬉しそうだった。


「それで父さん、エミリはウチの剣道部に入る事になった。


ちなみにリサはマネージャーとして入部する事になったのだけれど、いいかな?」


「ああ、別にかまわないよ。そうか、エミリが剣道を……」


 娘が剣道をやる事になったと聞いて、どこか嬉しそうな父さん。


しかしそれを聞いたリサが突然アッという声をあげた。


「そういえば思い出した。どうして私がケンドーブとかいう団体のマネージャーをやらなければいけないのよ、正樹‼」


 ヤバい、すっかりその事を忘れていた。


「まあ、それは成り行きで……」


「何が成り行きよ、私はケンドーとかこれっぽっちも興味ないの。明日にでも辞めてやるわ‼」


 リサはどうやら激おこの様子である。コレは俺が何を言っても火に油だろう、さてどうしたモノか……


 俺は咄嗟にエミリに〈何とかしてくれ〉と視線を投げかけるとエミリは小さく頷いた。


「ねえリサ姉、あそこに女は私しかいないのよ。リサ姉がいてくれたら嬉しいのだけれど……」


 エミリはそう言ってリサの腕に抱き着き、上目遣いで彼女を見つめる。


「い、いくらエミリちゃんが言ってもダメよ……ていうか、アンタ正樹に甘すぎない?」


「そんな事ないよ、私自身がリサ姉と居たいだけだよ。


私がリサ姉の弟をぶちのめす日まででいいから一緒にいて……ね、リサ姉」


 甘えた声でリサにねだるエミリ。これがさっきまで凄まじい殺気を放っていた女と同一人物か?


と疑いたくなる。我が妹ながら女って怖い……


「しょ、しょうがないわね、純平をぶちのめす日までよ……」


 簡単に折れるリサ。コイツいい奴だけれど本当にチョロいな。


「俺、負けねーし」


 ややムキになって純平が再び口走る、ヤレヤレこのやり取りはしばらく続きそうだな……


「そういえば純平、あなた疲れているって言っていたわね?

じゃあお姉ちゃんが魔法で疲労回復しておいてあげるわ」


 そう言ってリサは純平に掌をかざす。


「魔法とか、何を言っているのだよ?いい年をして……」


 純平が何かを言いかけた時、リサの掌が青白く光ると純平が驚愕の表情を浮かべた。


「嘘だろ……疲れがいっぺんに吹き飛んだ。一体何をやったのだよ、アンタ?」


「アンタじゃなくて、姉貴でしょ⁉いい加減ちゃんと覚えなさいよ。全く親の顔が見たいわ」


 実の弟に向かって〈親の顔が見たい〉とは何のブーメランだろうか?


 ちなみに田沼のオジさんがニヤニヤしながら自分の存在を必死にアピールしていたがリサは当然のようにガン無視していた。


 事態を把握できずに困惑している純平が可哀想になって来たので俺がわかりやすく説明する。


リサとエミリは異世界のバレント王国という所から来た事。


リサは魔法使いで日本政府の要請でファントムという正体不明の敵と戦う役目になった事。


今向かっているのはアナザーゲートという異世界への門で


これから毎日そこを使ってこの世界と異世界を行き来する事などである。


純平はイマイチ納得できていない様子だったが


そもそもこんな荒唐無稽の話をすぐに理解、納得しろという方が無茶な話である。


「百聞は一見に如かずと言うだろう?まあ自分の目で見て考えるのだな」


 俺はそれっぽいアドバイス的な言い回しをしてその場は終わる。


正直事細かに説明できるほど俺も理解していないというのが本当の所なのだが。



頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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