表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/44

急接近の予感

「ちょ、リサ、何で⁉」


「みんながあまりしつこいからトイレに行くって逃げて来たのよ。


そうしたらアンタが私の悪口を言っているのが聞こえて来て……どういうつもりよ、正樹‼」


「いやその、違うんだ。これには色々と事情があって……」


 一難去ってまた一難、神様、俺って前世で何か悪い事をしましたか?


そんな俺とリサのやり取りを横で聞いていた学が割り込む様に口を挟んできた。


「おい、正樹……お前田沼さんと知り合いなのか?」


 至極当然の質問だ。姫乃樹さんも呆然とした表情でこちらを見ている。


「いやその、何というか……」


 俺が返答に困っていると、リサが呆れたように大きくため息をつき説明を始めた。


「ハア、実は私と正樹は幼馴染なのよ。外国に行く前はしょっちゅう一緒に遊んでいたの。


弟は未だに正樹と仲がいいしね」


 助かった……ここは素直にリサに感謝だ。


「そ、そうなのだよ。実は俺とリサは昔からの知り合いで家も近所でさ」


 それを聞いた学はようやく納得した表情を見せた。


「何だよ、だったら早くそう言えよ……ところで田沼さん弟さんがいるの?」


「ええ、この学校の一年後輩で、田沼純平っていいます」


 すると姫乃樹さんが突然何かを思い出したかのように〈あっ〉という声をあげた。


「知っているよ、剣道部の一年生で有名なイケメンくんだ。


一年生の女子の間では凄く評判になっているって噂を耳にした事がある。


二年女子にも結構ファンが居るって聞いたよ。田沼さんの弟さんだったんだ⁉」


 さすが純平、姫乃樹さんにまで知られているとか。イケメンっていいなあ……


 こうして俺とリサ、そして学と姫乃樹さんという何かよくわからない組み合わせの四人で取り留めのない事を話した。


少し離れた所でクラスメイトの男子共がこちらを羨望と嫉妬の眼差しで見ていたが


もちろん俺は気づかないフリをした。


俺にしてみれば姫乃樹さんとこんなに話せる機会は滅多にないから邪魔をされたくなかったからである。


「なあ田沼さん、姫乃樹、一度この四人でどこか遊びに行かないか?」


 学がとんでもない事を言い出した。もちろん俺にしてみれば姫乃樹さんと出かける事に何の不満も無い。


だがそこにリサと学が付いてくるのはさすがに気が引けてしまう。


学には元々付き合っている彼女がいるし親同士が決めた事とはいえリサは一応俺の許嫁という事になっている。


そもそも俺と姫乃樹さんの仲も取り持ってくれるという学の彼女を裏切る様な真似はできない。


 まあ昔から学はノリと勢いだけで後先考えないことが多く


それで何度かトラブルを起こしているのだが


持ち前の口の上手さと憎めない性格のせいで何度も危機を切り抜けてきた。


要領がよく起用で世渡り上手、高二だというのに付き合った彼女はすでに三人目というリア充だ。


そんな友人の性格を羨ましいと思った事もあった。見習いたいとは一度も思わなかったが……


「えっ、私?え~っと、どうしようかな……みんなが行くというのなら……」


学からの誘いに少し戸惑う姫乃樹さん。俺の方もチラリと見てきて恥ずかしそうにはしているが


内心まんざらでも無いように見える。おいおい、もしかしてこれって本当に脈アリなんじゃないのか⁉


「正樹はどうする?」


「お、俺は……別にかまわないけれど……」


最初は断るつもりだったが姫乃樹さんの態度を見て方針を180度転換した。所詮男などこんなモノである。


「田沼さんはどう?お近づきのしるしに⁉」


「う~ん、私は止めておくわ。彼氏に怒られるから」


 いかにも慣れていそうな態度でさりげなくかわすリサ。


まあこれだけ美人だとあちらの世界でもモテているだろうからな、誘いを断るのも慣れているんだろう……


でも待てよ?リサに付き合っている男はいないはず。もしかして彼氏って俺の事じゃないよな?


「そっか~、やっぱり彼氏がいるのか。そりゃあそうだよな~」


 本当に残念そうな態度を見せる学。お前完全にリサの事を狙っていただろ?


何にしても彼女との修羅場にならなくて良かったと、ホッと胸をなでおろした。


「じゃあ私、次の授業が始まる前にトイレに行ってくるわ」


 残念がる学を尻目にそそくさと教室を出て行こうとするリサ。


だがその瞬間、リサは俺に〈廊下に来い〉という目配せをしたのである。


「俺もトイレに行っておこうかな……」


 ややワザとらしかったが、怪しまれることは無かろう。学はこういう時の勘は鋭い男だが


俺が姫乃樹さんに惚れている事を知っているのでリサと俺の関係を疑う事はあるまい。


「何よ、あの男?凄く軽薄ね」


 廊下に出た早々、リサがいぶかし気な表情で俺に話しかけて来た。


「悪い奴じゃないのだぜ、確かに少し軽い所があるのは否めないが……それよりリサって彼氏いたのか?」


「いないわよ、でもそれとなく断るならその方がいいかなって」


「なるほど、でも実際には彼氏はいない訳だし不自然に思われて深く追及されたりしたらどうするのだよ?」


「私、外国から来たことになっているのでしょう?だったら外国の彼氏と遠距離恋愛という事にしておくわ。


どんな彼氏?とか聞かれたら〈背が高くてハンサムで金髪のお金持ち〉とか言っておけばそれ以上は追及してこないでしょう」


「まあ確かに、男ならそれ以上ツッコむ勇気はないわな。


逆に女子なら余計に聞いてきそうだけれど……


それにしてもこちらの世界の事をあまり知らない癖によくそんな上手い言い訳考え付いたな?」


「父上が教えてくれたの。〈こういえば男はもう寄ってこないだろう〉って」


 田沼のオジさんもさすがに娘の事は心配なのだな。上手い言い訳を考えたモノである。


 俺が一人で納得していると今度はリサが問いかけてきた。


「ねえ、あの子でしょ?」


「は、何の事だ?」


「正樹が好きな控えめでおとなしい女って、あの姫乃樹って子でしょ?」


「ど、どうしてわかった⁉」


「態度見ていればわかるわよ、というかバレバレ。隠しているつもりになっているのは正樹だけじゃないの?」


 改めてそう言われるととんでもなく恥ずかしい。


いくらリサの勘が鋭いとはいっても、こんな短時間でバレるとは……


余程俺から〈姫乃樹さん大好きオーラ〉が出ていたのであろう。


「じゃあ、姫乃樹さん本人にもバレているのかな?」


「当然じゃない。いくら世界が違うとしても女は女よ、年頃の女の感性を甘く見ないで。


あの子もきっと正樹の気持ちをわかっていて知らないフリをしていると思うわ。


優しいのかカマトトぶっているのかは知らないけれどさ」


「優しいからに決まっているだろう⁉姫乃樹さんを悪く言うな‼」


「わかったわよ。正樹は私の恋も応援してくれると言ってくれたし、私もできる限り応援してあげるわ」


「本当か⁉サンキューなリサ‼」


 俺は思わずリサの手を握った。


「ちょっと、止めてよ。他の人が見ていたらどうするのよ」


「あっ悪い、悪い、つい……でも有難う、お前やっぱりいい奴だな」


「形だけとはいえ許嫁の前でそこまで素直に喜ばれると少し釈然としないわね。私これでも結構モテるのよ⁉」


 何故かリサは少しすねたような態度を見せる。女というのは本当によくわからないな。


「わかっているさ、リサは美人だしな。性格もいいし、きっと良いお嫁さんになるぜ」


「ば、馬鹿じゃないの、適当な事を言うものじゃないわよ」


「いや、本心からそう思っているぜ。俺も姫乃樹さんがいなかったら多分リサに惚れていたし」


「な、何言っているのよ、この女ったらし……もう授業始まるわよ‼」


 今度は顔を赤くして足早に教室に帰って行くリサ。


機嫌が良くなったり悪くなったり全く女の子というのは理解できない。


しかし一年の時からクラスメイトだった姫乃樹さんとはまともに喋れないというのに


昨日知り合ったばかりのリサの前だと何故かペラペラと本心で喋れるというのは何とも不思議な感覚だ。


ここまでの境遇が似ている事もあって親近感がわいているのは事実だろうが。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ