表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/44

衝撃の告白

それはいつも通りの朝だった、学校に行く為に制服に着替え二階の部屋から降りてきて


朝食をとる為にダイニングテーブルに座る。昨夜新作ゲームをしていたせいで少し寝不足気味だ。


テーブルの向かいには既に父が座っており朝から妙にニコニコしている、そういえば今日は俺の誕生日だったな


もしかしたら何かプレゼントでも用意してくれているのだろうか?


まだ完全起きていない頭でそんなことを考えていたのだが父が放った一言で俺の頭は一気に目覚めた。


父の言葉は俺の想像を遥かに越えたモノだったからである。


「実は正樹に紹介したい女性がいる。秘密にしていたがお前には婚約者がいるのだ、可愛いぞ」


 突然父親からの衝撃発言。ドッキリじゃあるまいし、コレは一体なんの冗談だ?


「父さん、な、何を言って……」


父さんの意味不明な言動に只々困惑している俺にとどめを刺したのは母親である。


「ジャーン、今日四月二十一日は正樹ちゃんの十七歳の誕生日、それを祝ってのサプライズで〜す‼︎」


 隠し持っていたクラッカーを取り出し〈パーン〉という乾いた音と共に嬉しそうに微笑んでいるのが俺の母親だ


お察しの通り俺の母さんは少し天然が入っている。


「どうした、リアクション薄いな?」


「そうよ、正樹ちゃんにはもっと驚いて欲しかったのに」


 当然だが十分驚いている、だが人間驚きが過ぎる逆にとノーリアクションになってしまうものだと初めて知った。


 俺の名は東野正樹、今日十七歳の誕生日を迎えたごく普通の高校二年生だ。


そして目の前にいる世間の常識から少々ズレている人物が俺の両親、東野慎吾と東野摩耶である。


「婚約者とか全然意味がわからない。大体俺はまだ高校生だぜ⁉


そもそも婚約者とかは誕生日プレゼントみたいに発表するものじゃないだろ、ちゃんとわかるように説明してくれよ」


 そんな息子の魂の訴えとも言える言葉を聞いてもウチの両親は何故かキョトンとしている。


「何を言っているのだ、正樹。昔の日本男子は遅くとも十六歳には元服を迎えて成人扱いされたものだ十七歳でなんて遅いぐらいだぞ」


「そうよ、正樹ちゃん。素敵な人と巡り会うのは早い方がいいじゃない、そうは思わない?」


 ダメだ、この人達には常識どころか日本語が通じないのか?


我が親ながらこの人達とは永遠に分かり合えない様な気がしてきた。


〈血は水よりも濃し〉という言葉があるが濃いだけで心の繋がりとは無縁な事柄もあるのだろう。


「いつの時代の話をしているのだよ、今は奈良時代でも戦国時代でもない令和だぜ


会った事もない女性と婚約者とか言われても意味がわからない、もっとちゃんと説明してくれよ‼︎」


 苛立ち気味に反論する俺だったが父さんと母さんは顔を見合わせヤレヤレとばかりに苦笑する。


ちょっと待て、何だよ、そのリアクションは、俺の方がおかしいのか?


「じゃあ、説明してやるからよく聞け、実は正樹の婚約者というのはこの世界の人間じゃない」


 またまたぶっ飛んだ事を言い出したぞ、この世界の……という言い方からすると外国人という訳では無いよな。


異世界の婚約者とかどこのファンタジーだ?


「あのね、正樹ちゃん、今まで内緒にしていたけれど実は私もこの世界の人間じゃないのよ、びっくりした?」


 前から少し天然が過ぎるとは思っていた母さんだが、ついにここまできたか……


という感想しかない。カミングアウトというより、もはや精神病の域までいってしまっている様だ。


「ちゃんと話をしてくれ、今日は俺の誕生日であってエイプリルフールじゃないぞ‼︎」


強い口調で言ったせいか両親の表情が少し強張った。ようやく真面目に話をしてくれそうだ。


「そうだな、どこから話せばいいのやら……」


 父さんは腕組みをしながら何やら真剣に考え込んでいた、とはいえこちらにしてみれば


〈誕生日だというのに朝っぱらからこんな与太話に付き合わされて堪ったモノじゃない〉というのが偽らざる本音である。


そんな事を考えながら俺はすでにげんなりし始めていた。


「もう学校に行く時間だから帰ってきたら話を聞くよ、じゃあ行ってくる」


 俺は両親の話を断ち切るように言い放つと朝食もソコソコに食卓を立った。


時間も無いので慌てて玄関に向かっている時、後ろから母さんも何か言っていた様だが聞く気もおきなかった


こうして俺の波乱の一日は始まったのである。



「おはよう、今日なんか寒いね〜」


「おっす、そういえば昨日のテレビ見たか?」


「やっば、宿題やってきてないわ……」


 朝の教室ではクラスメイト達の間で色々な日常会話が飛び交い盛り上がっていて嫌でも耳に入ってくる。


しかし当然の事ながら〈ウチの母親が異世界人でさ〉とか〈異世界に婚約者がいる〉などという荒唐無稽な話は聞こえてこない。


「おっす、正樹、何か朝からしけたツラしているな⁉︎」


 俺に話しかけてきたのは広瀬学。クラス替えをしても何故か同じクラスになるという中学からの腐れ縁とでもいえる友達である。


「おう学か、実は今日は俺の誕生日で……」


「そりゃあめでたいな、いやこの歳になるとそんなにめでたくもないのか?


まあよくわからんが、とにかくおめでとう。何なら購買の焼きそばパンでもおごろうか?」


 この日常を感じさせる何気ない会話が凄く嬉しく感じてしまい思わずホッとする。


そして俺はそんな学の肩にそっと手を乗せるとお礼を兼ねて一言返した。


「ありがとう学、お前のおかげで少し救われたぜ……」


「なあにいいって事よ、焼きそばパンぐらいで感謝されるなら安いものだぜ。


ちなみに俺の誕生日は六月六日だからな、その時は少なくとも学食のA定食ぐらいはおごってくれよ」


 両手を腰に当て、何故か得意げに胸を張る我が友人。


「焼きそばパンの対価がA定食か?随分と釣り合いが取れないと思うが」


「俺は人生の〈わらしべ長者〉を目指しているんだ、昔話というのはいわば人生の教訓となっている事も多いからな


何事も先人に学ぶというのは大事だぜ」


「名前が学だけにか?朝から寒いなお前」


「今日の朝が肌寒いのは俺のせいじゃないぜ、そういえば今日は進路表の提出日だったな


俺にとっては正樹の誕生日よりそっちの方が大事だぜ」


「じゃあお前は進路表に〈将来の目標はわらしべ長者です〉って書けよ


それで先生がどんな態度になるのか学ばせてくれ」


 そんな他愛のない、いつもの会話を交わしていた時である。


「お、おはよう、東野くん、広瀬くん」


 声をかけてきたのはクラスの女子である姫乃樹美穂。小柄で冷え目な女子であり一年生の時から同じクラスなのだが


あるきっかけが元で最近少し話をするようになった。


「お、おはよう姫乃樹さん」


「おっす、姫乃樹。実は今日は正樹の誕生日なんだとさ、何か言ってやってくれ」


 学の言葉を聞いた姫乃樹さんは少し驚いたような顔を見せた後、ニコリと微笑んだ。


「そうなんだ、おめでとう東野くん、私より先に十七歳になってしまったんだね。あっ、でもプレゼントとか何もない……」


 少し申し訳なさそうに俯く仕草にどこか心癒される、やっぱ姫乃樹さん可愛いな……


「そんなのいいよ、知らなかったのならば仕方がないし。


それにクラスメイトの誕生日にいちいちプレゼントを送っていたらお小遣いなくなっちゃうだろ?」


「そう言ってくれると、助かるわ。でもおめでとう東野くん」


「ああ、ありがとう姫乃樹さん」


 姫乃樹さんは軽く頭を下げた後、自分の席へと移動して行った。


こんな些細な会話だけでも朝の馬鹿馬鹿しい出来事を忘れさせてくれそうだ。


そんな事を思いながら立ち去る彼女の背中をボーッと見つめていると、突然学が肩を組んでくると俺の耳元でささやいた。


「なあ正樹。最近姫乃樹、可愛くなったと思わないか?」


「そ、そうかな……」


「隠すな、隠すな、正樹。お前姫乃樹に惚れているのだろう?」


 いきなり核心を突くようなことを指摘され、俺は動揺のあまりドギマギしてしまった。


「な、なななな、何を言い出すんだ。そんな訳ないだろ⁉︎」


 俺は慌てて否定するが学はニヤニヤとこちらを見ながら再び口を開く。


「それで隠しているつもりか?バレバレだよ。何なら俺がお前と姫乃樹の仲を取り持ってやってもいいぜ」


「えっ⁉︎それってどういう事だよ?」


 まさかとも思える突然の提案に俺は思わず聞き返す。


「俺の彼女は姫乃樹と同じ吹奏楽部で結構仲がいいらしい。


だからお前が望むなら何とかしてやるって言っているんだ


梨花の奴もこの手の恋バナは大好きだしな。話をもっていけば多分ノリノリで協力してくれるぜ


お前が姫乃樹に惚れていると認めるだけでこんな美味しい話が待っているんだ、悪くないだろ、さあどうするよ?」


 学は隣のクラスの浅田梨花という女性と付き合っているリア充男子だ。


確かに浅田梨花と姫乃樹美穂は同じ吹奏楽部だし二人が話しているところも何度も見ている


だから学の言っている事は嘘ではないだろう。コイツに俺の気持ちを知られるのは釈然としないが


俺が姫乃樹さんに好意を持っているのはもはやバレバレの様だし、どう考えても選択肢は一つしかない。


「わかった、認める……だから、頼む」


学は一瞬サディスティックな笑みを浮かべると嬉しそうに小さく頷いた。


「お礼はA定食な、忘れるなよ」


「ああ、何ならジュースも付けるぜ」


こうして俺と学は重大な契約を交わす事となった、何という素晴らしい誕生日だろう


基本無神論者のこの俺だがこの時ばかりは神に感謝したい気分である。


そんな事もあってか、この時点で朝の両親の発言は俺の頭の中からすっかり抜けてしまっていた。


今回の作品は異世界転移モノで現代世界と異世界を行き来するモノです。相変わらずの私の大好きな剣と魔法と恋愛がかかわって来る話ですのでどうか懲りずにお付き合いください。では。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ