薔薇の様なご令嬢に出会った話
今回はとある日の出来事です。どうぞ最後までお読みください。
「ユーラン伯爵からお茶会の招待状が来ているよ。リアナに行かせるかい?」
晩餐の時にお父様が思い出したように話した。
「いいですね。リアナにとっていい経験になりますわ。」
お母様が相づちを打った。私は別に行っても構わない、むしろ行ってみたかった。実はまだ私は社交の場に行ったことがなかった、お母様の言う通りいい経験になるはずだ、きっと今回は行く方がいいだろう。
「ぜひ行かせてください、お父様。」
私もねだってみる。お父様も承認してくれた。そうして私はユーラン伯爵のお茶会へ行くこととなった。
当日
「本日はこのような場所にお越し下さりありがとうございます。グローレンス様」
「いえ、こちらこそお招きくださりありがとうございます。ユーラン様」
こんなあいさつを交わした後、早速会場へ向かった。会場には美しい花が飾られており、全てうっとりする匂いをまとっている。そうそう、お父様が、一人じゃ心配だからと付き添いでお兄様もついて来てくれた。
「リアナ、くれぐれも失礼のないように。」
そうお兄様は私に伝えると、あいさつ回りに行ってしまった。後にお兄様はあらゆるご令嬢に囲まれて数時間は動けなかったそうだ。
私も、公爵令嬢という立場なのであいさつへ行かないとならない。………
…………なんだかお腹が空いてきたので食べてからあいさつ回りに行くとしよう。用意された料理を、一口サイズにして口に運ぶ。どれもおいしくてつい食べることに夢中になってしまう。
最後に飲み物を一気に飲み干す。よし、挨拶回りに行ってきます!
「こんにちは。お久しぶりです。」
何とか会場にいる全員とあいさつ回りを終えた後
私はトイレに行きたくなり、こっそりと会場を抜けた。
お手洗いに行った後、私は気分転換にとユーラン家の庭へ出た。庭には美しい花がいくつも咲いており、中には珍しい花も咲いていた。
(あ!どこかで見たことあるなと思ったら、会場に飾られていた花だわ!こんなに咲き誇るなんて、いったい誰が育てたのかしら?)
気になりつつ奥へ進む、やがて少し開けた場所に着いた。そこにいたのは金髪で緑の瞳を持つ美形の少女がいた。
あまりにも美しいのでしばらく見つめあってしまう。数秒後、私は我に返った。一番最初に口を開けたのは少女の方だった。
「す、すみません、勝手にジロジロ見てしまって……」
少女は頭を下げた。私はあわてて首を横に振った。
「いいえ!私の方もじろじろ見てしまってすみません!それよりあなた様はなぜこちらに?」
今は茶会が開かれており、ほとんどのご令嬢は参加しているはずだ。なのに参加していないのは何か訳でもあるのだろうか。
「いえ、私は人が多いところが苦手で…それで庭へ出れば誰もいないので落ち着けるかなと思ったのです。」
どうやら人が多いところが苦手なようだ、私も前世は人混みが苦手で込み合っているところへは行かずに、その場所を避けていた。でもリアナに生まれ変わってから人混みに慣れることができた。だからこの子の言うこと、すごく分かる!私がうんうんとうなずいていると
「でも、こうして花に囲まれると、人が多い場所が安心できる気がするんです。やっぱり花の香りは素敵ですよね、いつも安心できるのですもの。」
なんていう彼女の微笑んだ横顔はものすごい美人だった。確かに、花の香りは落ち着くことができる香りだと思う。この子は花の事に詳しそうね。私は、思い切って聞いてみる。
「もしかしてこの庭の花を育てているのは貴方ですか?」
「自慢ではないのですが、庭の一部の花は私が育てています……」
照れくさそうに話す少女。この広い庭の一部の花を育てるとは……こ、この子凄いわ!!私も、花を育てる事はあるのだけれど、ここまで広い範囲に咲いている花を育てるとは相当大変なことだろう!
「もしかして花のことについてもお詳しいのですか?」
「そんなに詳しくはないのですが、一通りなら…」
……あ!そうだ!この子とお友達になって、もっと花の事を教えてもらえばいいのではないか?もちろんこの子とも仲良くしたい意味もあってだけどね。あ、でもまだ名前を聞いていなかったわ。ひとまず名前を聞くのが先ね。
「そういえばあなたのお名前は?」
「す、すみません!私ったら名前を言いそびれていましたわ。改めまして、私は、ローズ・ユーランと申します。どうぞ、ローズと御呼びください。」
「はい。私は、リアナ・グローレンスと申します。私のことはリアナと呼んでね。」
お友達になりましょう!そう伝えて握手を交わす私たち。
なんだか少し寒いかも。そろそろ戻ろうかと提案する私。ローズはうなずいてくれた。
一緒に会場に戻ると、お兄様の周りに大勢のご令嬢がわんさかいるのが目に留まった。
「えぇっ!お兄様っっ!?!?!?」
「と、とりあえず助けましょう!リアナさまっ!」
「エイル様はまだご婚約されていないのですよね?良ければわたくしを…」
「いいえ、彼女よりわたくしの事を…」
「そこどきなさいよ!私の方が資産おおいわ!」
「なによ!私の方がエイル様に似合っているわよ」
「…そろそろ俺を開放してくれませんか?…………」
なんてお兄様の周りで言い争っている御令嬢をかき分け、お兄様を救出する私とローズ。あらゆるご令嬢に言い寄られているお兄様を、別の場所へ移動させるのにどの位かかったものやら…………。美形は大変だなぁ~………はぁ~
END
今回もお読みくださりありがとうございました。