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第2章最終話:新たな旅

約束の時間から約3時間遅れでカレン・オーライトとソアラ・シャロンはいつもの隠し通路を歩いていた。

蛇足ながら、城内の書庫から城下町チハヤの郊外まで続いているこの隠し通路は、その所在が多く知られるところとなった為、今回のカレンとソアラの使用後に封鎖される予定だ。


カレン「別にソアラまで付いてくる必要はなかったのよ。城に居た方が快適で安全なのに……」

ソアラ「カレン様を放ってはおけません。それに本当ならプレセア姉さんも一緒に行きたいって言ってたんですよー。ただ、宮廷序列1位が抜けるのは困るって話になって、泣く泣く諦めたんですよ」

カレン、「泣く泣くは大げさでしょ、ってか嘘でしょ。まあいいわ、ソアラが一緒だと私は凄く助かるから」

ソアラ「そうでしょう、そうでしょう。カレン様、ちょっと素直になられましたね」

カレン「そういう貴方はちょっと明るくなったわね。キャラもちょっと変わった気がするけど」


雑談をしながら2人は進む。カレンにとっては勝手知ったる道だ。

そうしているうちに枯れ井戸が近くにある出入り口に到達した。


ソアラ「外から話し声が聞こえますね」

カレン「この近くには封印の池があるから近隣住人は殆ど近寄らないはず、警戒して」

2人が警戒モードに入る。

確かに近くに人影がある。それも4人。

通常であれば護衛を担うソアラが先陣を切るのだが、魔導士で特性が後衛のため、カレンが先に動いた。

抜刀して4人のうち、リーダーらしき人物に斬り掛かった。


「よぉー、遅かったな」

緊張した面持ちで剣を振りかざすカレンに相手が声を掛けてきた。

「ギルバード!!どうしてここに?」

カレンが驚きの声を上げ、剣を(さや)に収める。


カレン「カーク、カローラン、クレストルも!? 待ち合わせ場所はここじゃないし、そもそも約束の時間から3時間も過ぎてるじゃない!」

ギル「アコーダから聞いてないのか?」

カレン「いいえ、全く。私の脚ならすぐ追いつくだろう、とは言ってたけど」

ギル「もし、約束の時間までカレンが踏ん切り付かない様であれば、自分が説得するってな」


カーク「そう。僕とカローランもその場にいたけど、3時間出発をずらして隠し通路の出入り口で待っててくれ、って言われたから、こうして待ってたんだよ」

カロ「もしそれで来なかったら、説得に失敗した事になるとも言っておったが、ここにカレンとソアラ殿が現れたという事は上手くいったんじゃな」

カレン「つまり、私はギルバードに付いて行く判断だけでなく、約束時間についてもアコーダに1本取られたワケね。ソアラは知ってた?」

ソアラ「はい、大体の事はアコーダ様から」


カレン「がーん、ソアラまで。……なんというか敗北感が半端ないわね」

ギル「イラついてるのか?」

カレン「うーん、最初は腹立たしいと思ったけど、ここまで見事にしてやられると感心に変わってきたみたい。考えてみたらアコーダとは、まともに喧嘩をした事が無かったのよね。その弟からの餞別(せんべつ)だと思えば、愉快に感じている自分もいるわね」


カーク「今度会った時にやり返す。その楽しみにすれば良いんだよ」

カレン「なるほど。見かけに寄らず頭いいわね、カークのくせに」

カーク「見かけに寄らず、とカークのくせに、ってのは余計だよ。カレン、君は口が悪くなったね」

カレン「そうかしら。私もこの短い間に色々有ったから、成長したって事なのかもね」

 

ギル「さあ、漫才はそれくらいにして、そろそろ出発しよう。クレストル、準備はいいか?」

クレス「問題ない。整備はばっちりだ」

クレストルは晩餐会後の空き時間を使って、魔力バイク2台を使った魔力馬車を組み立て整備を済ませていた。

人を乗せるキャビンは馬車そのもので、引いているのが馬ではなく魔力バイクという構成。スピードを出す必要がないので、ギア比はトルク重視。

 ※ スピードを出すと強い振動でキャビンの乗客が酔ってしまう


ギル「OK。目的地はフシミカク、龍騎族の里。皆行こう!」

カロ「龍騎族という事はアイシス・トーマじゃな?」

ギル「その通り!」

カレン「らら~♪」

新たな出発で気分が高揚したのか、カレンが唄い出す。

高い声に調和してリズムが弾む。落ち着いた曲かと思わせておいて途中から転調を繰り返して曲を盛り上げていく。

自然とソアラ、カーク、カローランがコーラスを担当する。


ギル(マリスが想い出される。よくダンジョン帰りに唄っていたっけな)

  「舌を噛むなよ」

クレストルは皆が舌を噛まない様に配慮して魔力馬車の速度を落とした。

ギルバード、カレン、ソアラ、カーク、カローラン、クレストルの6人の新たな旅が始まる。



<【第2章】ワケあり(勇者と師匠の)冒険譚 了>

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