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即位戴冠の儀

カレンとアコーダのしばらく後にバラキューダスとハイウエも御料車で入城した。


こちらも急いで即位戴冠の儀の準備に取り掛かる。但し、ハイウエは即位戴冠の儀への出席どころか、咎人(とがにん)として裁かれるのを待っていた。

ハイウ(どうして何も言ってこない……)


ハイウエ・グランディエルは自他ともに認める忠臣であり、重臣として世間の認知度も高い。

故に周囲への影響を考慮して断罪はパレードを終えてからと思っていた。が、入城を果たした後しばらく経っても誰もアクロムの件について、言及してこない。

オーライン皇国に連座制はない。だが、さすがに嫡子が謀反(むほん)を企てたとなれば、関係が近過ぎるし、重犯が過ぎる。

自ら鳳凰の彫刻に近付いて爆発に巻き込まれようとしたように、ハイウエは死すら覚悟したうえで贖罪(しょくざい)を欲していた。


そんなハイウエにアコーダが人払いのうえ、声を掛けてきた。

アクロムの起こした事件の処理に関する話をする為である。

(やっと裁きを受ける事が出来る…)

ハイウエにとっては待望といって良かった。


アコーダは「お互い儀式の準備で多忙な為、手短に言う」と前置いたうえで話しを始めた。

内容は先にバラカーンと打ち合わせをした通りの内容をハイウエに伝えた。


それを聞いたハイウエの反応は「しかしそれでは……、……ですが、そうは仰いますが……、……とはいえ」という具合に逆接のオンパレードで、決してうんとは言わない。

不服の理由は、アクロムに対する罰が不十分である事と自身(ハイウエ)への罰が無い事だった。

なかなか首を縦に振らなかったハイウエだが、最終的にはアコーダの「辞任を認めない事が(おれ)其方(そなた)に与える制裁である」という言葉が決め手となって受け入れた。


紆余曲折はあったが、アクロムが名を変えてグランディエル家との関係を絶つという処置は、親の情で我が子を死なせたくないと思うと同時に、贖罪を求めていたハイウエにとって、結果的に丁度良い落とし所となった。


<即位戴冠の儀>


即位戴冠の儀は文官と武官合わせて、100人以上の面前で執り行われる。

出席者にはバラキューダス、ハイウエ・グランディエルは勿論のこと、リオン・クラウン、ニセンジ・シロといった高位の武官も含まれている。

それに異例の事ながら、冒険者パーティーグリフォンの7名とアルジョンの6名、カーク、カローラン、そしてギルバードも出席している。


一悶着(ひともんちゃく)二悶着(ふたもんちゃく)もあったアコーダ救出作戦やパレードが嘘のように、式はスムーズに進行していく。


先代皇国王が存命であれば、新しく皇国王となるアコーダに対して、最初に祝辞を述べるところ。

しかしながら、今回は皇国王と皇后は既に逝去(せいきょ)しているため、今回は姉皇女であるカレンが後見人として代役を務める。

祝辞の内容は、国の成り立ちから始まって国位継承の心構えを長ったらしく語ったうえで、最後に祝いの言葉で締める。


バラカーンがやってきて即位戴冠の儀を執り行う事が決まってからの3日間、カレンはこの祝辞の練習にも時間を費やして、従者に「素晴らしいです」と言わしめるほど、完璧に暗記した。

さて、いざ本番はというと心構えなど、ざくっとカットした。結果、祝辞の長さは本来の半分以下となる。


練習に付き添った従者(うわー、やりやがった。練習が無駄じゃねーか)

カレン(こんな誰でも知っているような事をだらだら聞いてても眠くなるだけでしょー)

バラキ&ハイウ(カレン様なら、そうでしょうな)

アコー(さすが姉様)

なお、ギルバードやグリフォン、アルジョンのメンバーたちは、本来の祝辞の長さを知らない為、そういうものだと黙って聞いているだけ。


誰1人として口には出さないが、祝辞を聞いた出席者の心情は様々だった。

 

<冠と杖と外套>


祝辞以外にも外套(がいとう)と杖、冠が贈られる。

カレンからアコーダに直接手渡されるのだが、その際に戒めの言葉も添えられる。

「外套は護るものの象徴。強風、即ち外敵に晒される事もある。その時は剣を持つ事も(いと)わず、民を守る為の盾となれ」

「杖は優しさの象徴。老人に杖を差し出すように、困っている民があれば助ける事の出来る存在となれ。杖は丈夫であれ」

「冠は権威権力の象徴。常に民に見られている事を意識せよ。


カレン「ここまでは伝統のしきたり通り、後は私個人のコメント。先人を敬うのもいいけど、辛気臭いのはやめてよね。アコーダらしく、いっぱい笑える国を目指しなさいよね」

アコー「承知しました。ご期待に応えるよう努めてまいります」


この後にアコーダの脇を固める閣僚を発表がなされる。

選定はアコーダ、バラキューダス、ハイウエの3人が行い、本人には事前の通知等は一切無く、即位戴冠の儀の最後にぶっつけ本番で発表される。

そのため、中堅の文官武官が最も緊張する瞬間である。

逆に、ギルバードたち冒険者にとっては最も興味のない話となる。


「いてっ!」「いたっ!」

我慢しきれずあくびをしていたコンパスの脚にチェロックが蹴りを入れた。

同じくあくびを我慢できなかったベレルの臀部(でんぶ)をアスカが強く握って捻った。

「ゴホン、ンンッ」

一瞬ザワついたが、バラキューダスの咳払いで静寂を取り戻した。


次はアコーダの宣誓(決意表明)となる。


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