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バラカーンの報告

魔力バイクで、アコーダ、カレンが入城を果たすと、殆ど休憩する間も無く、即位戴冠の儀の準備に入る。

最初に領内の岩清水を沸かして湯浴みし、身を清める。

その後は、この日のためにサイズ調整した儀典服に着替え。

御付の従者が全てやってくれるので、アコーダとカレンはされるがまま。


忙しいアコーダだったが、無理やり時間を作ってバラカーンと会った。

大っぴらに話せる内容ではないため、2人だけの面談である。


限られた時間でバラカーンは手短にアクロムの計画を報告。そのうえで裁きをアコーダに求めた。

元々はフロンテ・ネガスが先代皇国王の殺害と国家転覆を画策していたが、アクロム・グランディエルはその失敗に乗じる形でカレンとアコーダの暗殺を計画。

罪のない一般国民を巻き込む大量殺戮の凶行をも目論んだ。

結果的にはアクロムの悪事は全て未遂に終わっているが、決して軽い罪ではない。


まともに考えれば極刑が妥当なのだが、1つ問題があった。

若年故に著しく威厳というものに乏しいアコーダが新皇国王となって、国を運営していくうえでバラキューダスとハイウエは欠かせない。将棋で言うなら金銀にも相当する人材。

もし息子のアクロムが重罪犯罪人として裁かれる事態に陥れば、父親であるハイウエは責任を感じて国政の座から去るに違いない。


アコー(責任感が強すぎても弊害があるもんだな)

ぶっちゃけた話をすればアコーダにアクロムの事は犯した罪も含めてどうでも良かった。幸いな事にバラカーンが上手く立ち回ったおかげで実害も出ていない。

しかし、ハイウエがいなくなる事はアコーダにとって大損害であり、どうしても避けたい事だった。


アコーダとバラカーン、性格は全く異なる2人だが共通点が1つある。実利に重きを置く性格という点である。

決して仁義礼智信を(ないがし)ろにする訳ではないのだが、実を無視しても世の中は廻らない、という考え方をする。

今回のアコーダにとっての実利は、ハイウエ・グランディエルという人材である。

そんなアコーダの意を汲んだバラカーンは奇策を提示する。


アコー「アクロムの処刑を猶予するだと……」

バラカ「はい」

アコー「ありえんだろう。罪を犯した事はアクロム本人も認めているんだよな?」

バラカ「はい」

アコー「……理由を聞こう」

批判を全て承知の上で話をしているバラカーンの様子をみて、アコーダはとりあえず理由を聞いてみる事にした。


バラカ「簡単な話です。嫡子のアクロム卿が重犯罪人となった事を重く受け止めて、ハイウエ卿は辞任しようとするわけですよね?」

アコー「そうだ」

バラカ「であれば、その理由を無くしてしまえば良いのです」

アコー「これだけの事を仕出(しで)かした奴を無罪放免にするのか?」


バラカ「幸いな事にアクロム卿の企みは全て未遂に終わっており、実害は出ていません。事件として表面化もしていませんので、私を含む関係者が口を開かなければ、話が拡がる事もありません」

アコー「ハイウエは納得するのか?あやつは良い意味でも悪い意味でも堅物なので有名だぞ」

バラカ「家族思いとしても有名です。アクロム卿の処刑を見合わせるのなら、何とかなるかと。なんでしたら私がハイウエ卿を説得する任を承ります」

 

アコー「うーむ、アクロムは罰しない。ハイウエも辞任させない。そこまでは許容したとして、アクロムは野放しにする事は出来ない。再犯の可能性もある」

バラカ「……そうですね。では、こうするのは如何(いかが)でしょうか」

用意周到なバラカーンは腹案を持って面談に臨んでいた。


バラカ「アクロム卿は、御尊父であるハイウエ卿に引けを取らない優れた能力を有しています。これが個人の資質だけであれば良かったのです。ここにグランディエル家という名声と財力まで加わる事で野心に歯止めが掛からなくなった。そして力を用いる方向性を誤った結果、今回の問題に発展しました」

アコー「それで?」


バラカ「まず名を変えさせて、グランディエル家から切り離します。その上で配置換えをして、どなたかの監督下に置きます」

アコー「名を変えると言うのは、アクロム・グランディエルという存在を消すという事だろう。それをハイウエと本人は受け入れるのか?」

バラカ「本当に極刑に処されるよりは余程マシでしょう。それだけの重罪を犯したのです。家名にも傷をつけずに済みます」


少しの間、アコーダは黙って思案を巡らせてから決断を下した。

アコー「分かった。その案を許可する。それから誰かに監督させる話だが、バラカーン、其方(そなた)がやってくれ」


バラカ「私がですか?」

アコー「なんだ、嫌なのか。だが、他に誰がアクロムを(ぎょ)せるというのだ?下手な奴に預けると逆に手玉に取られかねんと思うのだが……」

バラカ「……そう、ですね。案を出した者の責として、お引き受け致します」


アコー「後は本人たちへの申し渡しか。……アクロムは其方に任せるが、全て押し付けるのはあれだ、ハイウエ卿はこちらで引き受ける」

バラカ「ご配慮ありがとうございます。アクロム卿の件、承知致しました」


<面会後、バラカーンの独り言>


「ハイウエ卿への説得が面倒だと思っていたが、アコーダ様にお引き受け頂けるとは、手間が省けたな」

アクロムへの内諾を取ったうえで、バラカーンはアコーダとの面会に臨んでいた。

アクロムを自身の幕下(ばくか)に加える事も想定していた通りだった。

角が立たぬように誰かの監督下に置く事を提案したが、ああ言えば、アコーダは自分に監督させる事を言い出すと思っていた。


もし最初から「アクロムを自分の部下にする」と言っていたら、余計な勘繰(かんぐ)りを受けて、話がすんなり纏まる事は無かったかもしれない。

因みにアクロムに特に思い入れはなく、使える駒は多く持っておいた方が良い、というのがバラカーンの考え方。

やや極論となるが、実利に重きを置く性格のバラカーンは善悪をあまり気にしない。


「仕事は終わったな」

その後、バラカーンは即位戴冠の儀に参列する事もなく、城から立ち去った。


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