魔力バイク
<ギルバードとクレストル>
2台の魔力バイクが疾走する。
御料車と同じ道を辿るのでは、観客が邪魔になって速度を出す事が出来ない。
だから建物の屋上のルートを選択した。
モトクロスさながらに塀や壁を利用して屋上に駆け登り、サーカスさながらに建物間をジャンプで越えていく。
平坦なラインばかりではないし、極端な段差も多い。
ハードな障害物レースを彷彿とさせる道のりだが、ギルバードとクレストルはトルクフルな魔力バイクの性能を申し分なく発揮して前進する。
クレス「なんで開発者の俺よりギル兄の方が速いんだよ。試作でも散々乗り回してきたのに……」
ギル「カタノの街からこっち、結構な距離を乗ったからな。それにお前は病み上がりのハンデもあるんだから気にするな」
競争でもないのに両者少しも譲る気配が無い。結局ギルバードが先頭を明け渡す事はなかった。
(MB:もうすぐ目視可能な距離まで接近します)
ギル「見えたぞ、クレストル」
クレストルが追い付いてくるのを待ちながら戦況を見極めるギルバード。
観客と騎士が渦巻き、御料車がその中心で停止している。
クレス「なんだ、えらく混沌な状況になってないか?」
ギル「そうみたいだな。御料車と観客が近過ぎる。だがなんとかギリギリ間に合ったようだ」
クレス「ギル兄、行こう!」
3階の屋上から低い建物の屋根へと段階を踏みながら、膝のバネでバランスを絶妙にコントロールする。そして2人同時に一気に下っていく。
その様子にチェロックも気付いたようだ。
「来………!……くな!」
「離れ……ー、爆弾……………」
チェロックは何か叫んでいるようだが、雑音にかき消されて聞き取れない。
魔力バイクが地表に近付いたところで大きくジャンプする。
ギルバード「どいてくれーー!!」
クレス「どけぇーー!!」
上空から突然の来訪者。
ギルバードとクレストルの怒気を含んだ大声によって、蜘蛛の子を散らすようにそこだけ人がいなくなり、魔力バイクは無事着地した。
チェロ「なんで来るんだよ。最悪のタイミングだぞ、ギルバード」
ギル「確かに遅れてしまったが、最悪とはあまりに酷い言い様じゃないか」
ラミオ「クレストル、目覚めたのね!良かったわ。アンもとても心配してたから」
アン・フォーリアはクレストルが意識を失った現場にいて直接の関わりがある。その事でアンが人一倍責任を感じていたのを相棒のラミオ・ガークロスは知っていた。
チェロ「良くはねーよ。クレストルが目覚めたのは俺も嬉しいが、のんびり話している時間はないんだ!」
馭者A「道連れが増えたな。残りは……10秒だ」
再会の喜びは束の間、鳳凰の彫刻が爆発するまでの時間が直ぐそこに迫っている。
そして1度爆発してしまえば約200メートル四方が藻屑と化す。
つまり、ギルバードとクレストルは一生懸命に魔力バイクを飛ばして、わざわざ爆発に巻き込まれる為にやってきた事になる。
「5…、4…、3…、2…、1……」
残り5秒になったところで、馭者Bが指を折りながらカウントダウンを始めた。




